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「死ぬなら一人で」論争をめぐって 中川淳一郎と会って考えたこと


学期中はそれなりにバタバタしており。ネットでの炎上事件などにも気づかないことが多く。登戸の事件のあと、「一人で死ね」論などが盛り上がっており。藤田孝典・中川淳一郎論争が起きていた。全部は追えていない。

イベントなどで挨拶したり、ネットでやりとりする他はあまり会っていないことに気づき。彼が亡くなった婚約者のことをツイートしていたりしたこともあり。金曜日の昼に電話。土曜の夕方に会う。ちょうど彼は嶋浩一郎さんと打ち合わせ中だった。

正月に、音喜多駿さん(維新で出馬、なの?地方で首長→国政というビジョンを聞いていたので、だとしたら色々がっかりなんだけど)と3人で新年会した際も、中川とは論争になったが・・・。中川と私は信じられないくらいに考えが逆である。彼はコテコテの自己責任論者、新自由主義者であり、私はそもそもの社会のシステムを問い直す派だ。これは、自分の立場や、出自とも、20代後半に出会ったトヨタ生産方式とも実は関係があるのだが、話すと長くなるのでここでは割愛する(勘のいい人ならわかると思う)。

この日も、藤田論か、中川論かというと、前者だよという話をした。ただ、あたかも藤田論に反論する奴は偽善者という空気も間違いで。まずは、悲しい事件を直視すること。人の命に貴賤はない。加害者のプロフィールがどのようなものであれ、被害者がどのような人であれ、そして、仮に正当防衛としての殺人だったとしても、人が人を殺すということの重みに変わりはないということを認識したい。

秋葉原の事件のときは犯人が派遣社員であり、相模原の事件のときは差別的な視点の人であり、今回はひきこもり男性だった。正規と非正規の格差の是正、なぜ差別が生まれるか、なぜひきこもり男性が生まれるかと、どう対策するか、そもそもひきこもることは悪なのかなど、論点は尽きない。この事件も、ひきこもりに対するレッテル貼りにならないかという点も見逃してはならない。

よく「誰でもよかった」という話があるが、実際は弱い人が道連れにされている点も直視したい。このあたりはデータを見たわけではないので、あくまで推測であるが。

加害者が誰であっても、いかに報われない人生を送っていたとしても、罪は罪である。中長期で社会をよくする視点は大事だが、個別の事件は、事件である。

今回の事件は究極的な状況である。事件は起きてしまったし、加害者は死んでしまった。犯行の動機などは証明できない。

事件が起こった学校に勤務している友人がいるし、友人のお子さんも通っているし。OGも多数知っている。何人かと連絡がとる機会があったが、彼ら彼女たちの胸中もまた複雑だった。

中川は、昨日の「東京新聞」で極めて優れた論考を寄稿している。簡単にまとめると、犯人の部屋に◎◎があった→だからこの人は凶悪だと推測するような安易な報道をやめろということだ。アニメやゲームが人を凶暴にするというが、『進撃の巨人』や『ジョジョの奇妙な冒険』がヒットしようとも、それを参考にして殺人や暴行をする人はあまりお目にかかったことがないし、出現率も低いことは明々白々だ。『北斗の拳』を読んだあと、秘孔をつくのが流行ったが、内臓が爆発し「ヒデブ」「アベシ」と叫んで死んだ人を見たことはない。やや話は横道にそれたが、ネットでの炎上キャラと違い、昨日の中川の論考は実に的確であり、安易な報道に警鐘を乱打していた。

さらに、中川は大事な人が亡くなった当事者である。彼もツイッターで書いているが、彼は12年前に婚約者を亡くしている。自殺だった。しかも、夏の暑い日に死後、数日経った遺体を彼が発見するという辛い状況を経験している。彼女はその頃。鬱だった。

あれは亡くなる5年前くらいだったか。その彼女を中川に紹介したのは、他ならぬ私で。勘の悪い私はしばらく付き合っていることに気づかず。二人が付き合っていると聞いて涙し、彼女が死んで、もちろん泣いた。やや感情的に(としか見えないが)中川が藤田氏や周りの人に絡んだのは、そういう背景もあることをご理解頂きたい。

例によって、左も右もわからない時代なのに、左右の対立に矮小化され。議論にはならなくなる。別にこの手のことは、ツイッターのやり取りでどちらが勝った、賛同を得たという話で終わらせてはならず。ましてや、◎◎さんの言うことが正しいという同調圧力にも注意で。世の中には、許しがたい、解決し難い問題がある。それに人として向き合うことが大切である。一方、こういう事件が起こると、ドサクサにまぎれて規制を強化しようとする権力者もおり。全世界的にテクノロジーなどを駆使して事件を未然に防ぐことが議論されている。企業でも、やめそうな社員をAIで診断し未然に防ぐ取り組みなどが行われており。ただ、これらが悪用されるリスクはどこまでも議論しなくてはならない。

というわけで、この日の訪問でも、嶋浩一郎さんを前に「俺たち2人、考えが、まるで合わないですよね」と確認し合った。私たちは、価値観も行動特性もまるで違う。でも、嶋さんに「君たち二人は、いいね」と言われて胸がいっぱいになった。

ありがとう。


たまたまだが、この店は11年くらい前に、食事をした店だった。私たち二人がまだ何者でもないというか、お互い、著者デビューはしていたが、模索中の時期だった。中川は『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社)を出す1年くらい前だったし、私は『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)の構想すらなかった。中川は婚約者の死を乗り越えていなかったし、私は鬱病と闘っていた。この店で、ウェブバカの構想を聞いた。

あれから互いにそれぞれ代表作のようなものが出た。意見が対立することもあった。でも、私たちは一緒だし、まだまだこれからなんだぜ。考えも価値観もまるで違うが、互いに会いに行けること、真面目な白熱した議論から、くだらない話までできることを大切にしたい。

・・・汗を書いていて、髪型が藤岡弘みたいであれだな。

ここまで読んでくれてありがとう。

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