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旧優生保護法は違憲、しかし賠償は認めず…強制不妊手術の被害者救済は叶うのか

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 旧優生保護法のもと不妊手術を強制され、人権を侵害されたなどとして、宮城県内の60代と70代の女性2人が国に対し合わせて7150万円の損害賠償を求めていた裁判。仙台地裁は29日、「人が幸福を追求しようとする権利の重みは、たとえその者が心身にいかなる障害を背負う場合であっても何ら変わるものではない」として、旧優生保護法が幸福追求権を保障する憲法13条に違反すると、初めての判断を下した。その一方、手術からは20年が経過していることから、請求権が消滅する民法の「除斥期間」の規定が適用されるとして、請求については原告の訴えを退けた。

 原告側弁護団の新里宏二弁護士は「初めて憲法判断が下ったという意味で"そこまできた"とは思うけれども、救済につながらないと十分な意味がないのではないか。まったく予期しない判決だった」とコメント、控訴する意向を示した。また、16歳の時、何も知らされないまま不妊手術を受けたという原告の女性(70代)は「国には誠意をもって謝罪してもらいたいと思う。被害者はみんな高齢化している。一刻も早い解決ができるよう、誠意ある対応を求める」と訴えた。

 菅官房長官は会見で「今回の判決は国家賠償法上の責任の有無に関する国の主張が認められたものと聞いている」「政府としては法律(救済法)の趣旨を踏まえて着実な一時金の支給に向けて全力で取り組んでいきたい」と述べている。

 29日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、旧優生保護法訴訟の弁護団の一人でもある佐々木信夫弁護士に話を聞いた。

■旧優生保護法とその思想

 今回の判決で"違憲で無効"とされた旧優生保護法は1948年に施行された法律で、条文には「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」と明記されている。反対運動も盛んに行われたが、この法律の下、知的障害、身体障害、遺伝性疾患などを有する人たちの強制的な不妊手術や人工中絶が認められ、1950年~70年代に使われた教科書には「明るい社会を作る上で大切なもの」とまで書かれていた。

 同法の根底には、身体的・精神的に秀でた能力を有する者の遺伝子を保護するとともに、そうではない者の遺伝子を排除することで優秀な人類を後世に遺そうという「優生思想」があった。この思想に則り、ナチスが障害者への組織的殺害を行った負の歴史もある。

 他方、1973年には厚生省公衆衛生局長(当時)が日本医師会での講演の席上「精神病、躁うつ病、てんかんについて遺伝性かどうかという臨床的な認定は非常に困難」と発言、1988年には医療関連の法律の専門家である田中圭二氏が「人権侵害が甚だしい」と指摘している。最終的に同法は1996年に「母体保護法」として改正されるに至ったが、その時点で不妊手術を受けさせられた人は約2万5000人に上るとされている。

 そして先月、被害者に対する謝罪と反省も明記された救済法が全会一致で成立。一時金320万円を支払うことも決まっているが、「責任の所在があいまい」「一時金の額が少ない」と、法律の内容を問題視する声も上がっている。

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