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カリスマ社長伝授「正しい飲み会の作法」

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■ド直球の質問が小山社長を襲う

19年3月9日午後5時半。「かに道楽」新宿本店。この日の夜、武蔵野の社長質問会が行われると聞いて、同席した。会場には様々な部門から選ばれた、部長、課長、平社員まで、肩書もバラバラの10名が会場に集まっている。

幹事の「乾杯!」のひと声で小山社長を囲む社長質問会がスタートすると、さっそく社長の左手の女性社員が質問を開始。いきなり「私のライバルは佐々木さんなんですけど、勝つにはどうしたらいいですか?」と言う。ド直球の質問だ。小山社長は「え? 佐々木さんに勝つの? だったら絞め殺しちゃったら?」と返して会場はいきなり笑いの渦だ。「数字を見ていくこと。そうじゃないと勝てないよ。はい次」と、順に質問が繰り出されていく。それに小山社長が瞬時にアドバイスをしていくという流れだ。店長になって3カ月の若手の男性が「新人店長が最優先でやることは?」と質問すると、「みんな歓迎してくれただろう?」「はい、袋叩きにあってます(笑)」「それ、武蔵野ではまともなことだから。もうすぐ1人入るから、その人が来たら“いじめて”あげなさい。はい次」。

仕事上の悩みに関するド直球なものから、極めてプライベートなものまで、社員たちは遠慮なく小山社長に質問を投げかける。

横で聞いているだけではよくわからないのだが、当の本人は安心した顔に変わる。社長が答えるたびに、質問者だけでなくメンバー全員がメモを取る。目の前のカニ鍋をつつく暇などない。

■極めてプライベートな質問まで飛び出した

そうしてひと回り、ふた回りと1人ずつ、質問を社長に投げかけていくのだが、驚くのはその質問の中に「部下が3年後に部長になりたがっています。何をしてあげたらいいでしょうか」「男性の部下に結婚を勧めたいが彼にその気がありません」「マンションを買いたいがどんな物件がいいでしょうか」といった、部下に関するかなり立ち入った質問から、極めてプライベートな質問まで飛び出したことだ。だが小山社長は平然とアドバイスをし続ける。

30分間、最初のグループの質問に答えた後、小山社長は席を移動してもう1つのグループの真ん中に座る。新たなメンバーを相手に質問タイムがスタート。社内結婚をした夫に関する相談をした女性には、「あなたの旦那さんは、あなたにイライラするでしょう?」「そうなんです!」「あなたと正反対の性格なんだよ」といった人間学にも発展していった。そうして約1時間の間に60~70の質問に矢継ぎ早に答えた後、小山社長は数万円のお金を隣の女性社員に預けて、「お疲れ様。ゆっくりやってね」と退散した。

「社長にズバッと答えていただいて気持ちよかったです」(女性社員)、「社内でもお会いすることはあるのですが、この場でしか聞けないこともあるので、貴重な時間でした」(女性部長)と、質問した社員たちはすがすがしい顔だ。

これは飲み会なのか。それとも会議なのか。不思議な気持ちに包まれてしまったが、社員の人たちが本音で話していたことは確かだ。社長と社員の関係がここまで近いことに、驚きを隠せなかった。この距離の近さが、離職率の低さの秘密なのだろう。

▼酒を飲んで一流になる人、二流に落ちる人

■酔った若手の「衝撃のひと言」

平成に入って間もなくの頃でした。社員教育をしようと試みても、みんな勉強するのが嫌だから逃げちゃうんですね。それで夜に懇親会でお酒を飲みながら勉強会をするようになったんですが、その懇親会にはアルバイトも入っていたんです。ある日のこと懇親会でお酒を飲んで、そのまま荻窪のサウナに行ったとき、1人のアルバイトがこう言ったんです。「実はこの会社、入るのやめようと思ってたんです」と。理由を聞いたら、「ここで働いてお金をもらえるか不安だったんですよ」。実はその頃、当社は家賃を抑えるために安い物件を借りていました。その建物がみすぼらしいから、お金をもらえないのではと不安になったというのです。

小山 昇氏

私はそれをきっかけに、全営業所を見栄えのいい場所に移しました。するとそれをきっかけに業績がぐんと上がったんです。それがターニングポイントでした。結局、人は酔って裸の付き合いほどに近くならないと、本音を語らないんです。

最初はデタラメに懇親会をしていたのですが、会社が大きくなると、私1人では全部やっていられなくなったので、各部署にやり方を伝えて、社内で横展開していきました。そしてたくさん失敗を重ねて、ノウハウを蓄積してきました。

たとえば人数は自分を入れて6人までにするとか、毎回同じ店にするというルールも、数々の失敗を重ねながらノウハウにしてきたことです。

私はもう70歳を超えましたが、65歳になるまでは、社内の公式事業として年間66回の懇親会すべてに出ていました。そのおかげで非常にコミュニケーションがいいですよ。コミュニケーションの基本は飲みニケーションです。お酒を飲めばバカなことも言えるし、部下と上司が本音で話せます。

うちは会社説明会で、事前に「お酒が飲めない、あるいは、お酒を飲みに行くのが好きじゃない男性は、採用しません」と明言しています。

■一流は飲み会でしゃべらない

飲み会で話題にしてはいけないことはありません。誰だって仕事のことも大切だけど、家庭のことも大切です。それをうちは全部オープンにして話しています。ウソで固めた人生は楽しくないでしょう。楽しくないと会社じゃないし、楽しくないと人生じゃないと私は思っています。年間の飲み会の経費だけで3000万円を超えていますが、惜しくないです。ふつうの会社は飲み会を福利厚生費と見るのですが、私は経理上の扱いは別として、「教育研修費」だと思っています。そう考えれば、高くないですよ。結果、離職率が激減して社員が定着し、社内結婚の数も激増しました。

一流の人は飲み会を教育と考えます。だから自分がしゃべるより、相手にしゃべらせるよう細心の気づかいをします。二流は自分がしゃべりたいことをべらべらしゃべるだけ。時々酒乱がいるんですが、これは三流以下です。会社によってはお酒を飲む人やギャンブルをする人を敬遠するところもあります。しかし経営も仕事もある意味ギャンブルだし、結婚だってギャンブルですよ。だから社員もギャンブルの発想ができないとダメですね(笑)。

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小山 昇(こやま・のぼる)

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒。85年武蔵野入社、89年から現職。700社以上の経営指導を手がける。国内で初めて日本経営品質賞を2度受賞(2000年、10年)する優良企業に育てる。

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(ジャーナリスト 大島 七々三 撮影=榊 智朗)

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