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「永田町絵画館」など

 石破 茂 です。

 川崎市登戸で起きた理不尽かつ悲惨極まる殺傷事件のような惨事はどのようにすれば防ぐことが出来るのか、思案に暮れてしまいます。

 自殺した犯人の家庭環境が複雑であったことや、就労せず引きこもり状態にあったことなどが報道され、「疎外感が高まり、歪んだ自己顕示欲があのような形で発現された」と指摘する論者も見られますが、ではどうすればよいのか。学生時代に刑事政策学で習ったロンブローゾやフェリー(19世紀末から20世紀初頭にかけてのイタリアの刑法学者・犯罪学者)の「生来的犯罪人説」や「犯罪者類型論」はすでに過去のものとなりつつありますが、どなたか知見をご教示いただけますと助かります。亡くなられた小山智史さん、栗林華子さんに心より哀悼の誠を捧げます。

 社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」のメンバーである福本ヒデさんの新著「永田町絵画館」がワニブックスより発売されました。有名な西洋画・日本画を題材として永田町の話題人物を風刺化した、近年稀にみる(私見)面白く愉快な作品と思います。中でも、ゴーギャンの「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこに行くのか」をベースに旧民主党の主要メンバーを描いた作品は秀逸の一語に尽きます。私を描いた作品も多く載せられており、光栄なことと思うと共に苦笑を禁じ得ませんでした。風刺画の題材となるのは有り難いことなのでしょう。自分では決してそうは思わないのですが、絵にしやすいキャラクターなのかもしれませんね。

 小学生の頃、親に買ってもらった「スタディ百科事典」(旺文社刊・昭和40年発売。コンパクトな良書でしたが、覚えておられる方は居られますか?)の巻頭にあった世界の名画特集を何度も見て以来、絵画には強い関心を持っており、いつかゆっくりと美術館巡りが出来ることを願っています。

 政府の中にいないので報道でしかわかりませんが、日米首脳間で中台関係や沖縄基地問題、日米地位協定等は話題になったのでしょうか。29日水曜日に日米台関係研究所主催の「日米台安全保障協力の方向性」をテーマとする国際シンポジウムに出席して、改めてこの地域の安全保障について考えさせられたことでした。

 中国が軍拡を続ける意図については諸説ありますが、阿南友亮・東北大学教授の説によれば

 ① 国内の共産党一党支配体制に対する批判を武力で封じ込めるとともに「中華民族の偉大な復興」に取り組む姿を国民にアピールすることに大きく資する。
 ② 米国やその同盟国に対抗する力はないが、周辺国に対する恫喝・牽制・威嚇の手段としては十分有効である。
 ③ 上海を中心とする軍事関連国有企業は共産党の有力な資金源である。
 ④ 米国や日本などの同盟国が中国との強い経済関係を維持しているが故に軍拡は可能となるのであり、経済的共通利益がかえって民主化阻止の大きな力となっている。
ということになり、概ねその通りかと思います(「中国はなぜ軍拡を続けるのか」新潮選書)。

 中国の「経済は資本主義、政治は一党独裁」という体制は構造的矛盾を内包しており、国家運営は困難を極めるものと容易に推測されます。

資本主義は放置すれば富の偏在、格差の拡大、権力と資本の癒着という宿痾を抱え、プロレタリアート独裁の共産主義でこのようなことが起これば、民主主義国のような主権者の手による政権交代という手段がない以上、国民の不満は鬱積するはずです。民衆の不満を抑えるためには、人民解放軍や武装警察による圧力を強化し、言論を統制するだけでは不十分で、国民の経済的利益を実現せねばなりません。

 鄧小平の「先富論」(市場経済の導入により出現する富裕層の存在を容認しつつ、その税負担を重くすることで再配分を図り、社会全体の生活水準の向上と格差是正を実現する)はその目論見とは異なって独裁体制によって裨益する層をブルジョア化させる結果となり、胡耀邦、趙紫陽などの改革派は失脚、矛盾を抱えたまま保守派の江沢民から胡錦涛を経て現在の習近平体制に至っているように思われます。

 民主化し、国民が豊かになった台湾が独立志向を強めることは中国共産党支配の否定に直結するのであって、正邪や勝敗を度外視してでもこれを阻止せねばならないのは、彼らの立場からすれば当然、ということになります。

 等々、論評するのみならず、統計、軍事力の内容、「共産党の軍隊」という他国とは全く異なる性格を持つ人民解放軍の行動原理、運用構想などを可能な限り分析しなくては、この地域における安全保障を確立することは出来ません。

 30日木曜日に開催された自民党憲法改正推進本部の会合では、井上武史関西学院大学教授による講演と質疑が行われました。

 同教授は最近の論説で、
 「自衛隊を国家組織として憲法に登場させれば、憲法にその権限も書かねばならないし、内閣や国会、司法との関係も書き込まねばならなくなる。それは安倍首相が言ってきた『現状を追認する』という範囲を明らかに超えることになり、もはや『現状の自衛隊』ではない」
 「(従来の『必要最小限』ではなく)『(必要な)自衛のための措置』という言葉を用いることは、日本の自衛権や戦力の拡大につながるのではないかという新たな懸念を生む可能性がある」
とされた上で、
 「『今ある自衛隊を書き込むだけです』という為政者の説明が、多くの国民や国会議員にとってとても分かりやすいという点には注意が必要であるが、それが法理論的にいいかどうかは別の問題である」
と述べておられます(2018年4月13日・神奈川新聞他)。

 まさしくその通りで、この点についての議論が全く低調なまま、改憲を掲げて国政選挙に臨むことは責任ある政治の姿勢として極めて問題であると考えます。

 井上教授は7条解散についても「条文上の根拠があやふやなままで解散が行われているのはそれこそ立憲主義に反している」(同)とも述べておられます。衆参同時選挙の可能性について今週もあれこれ取り沙汰されましたが、二重の意味で考えさせられたことでした。

 週末は、1日土曜日に富山県砺波市と滋賀県高島市で講演、2日日曜日は大分県竹田市でクアパーク長湯グランドオープン記念式典と地方創生講演会で講演(午後1時・竹田市総合文化ホール)、という日程です。

 早いもので明日からもう6月となるのですね。

 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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