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日本人の読解力は崩壊する!?


おおた スマホとかネットについて、麻布はどういうスタンスですか?

 禁止はしてないので持ち込みはできますけど、さすがに授業中は使ったりすると没収します。教員の立場から言えば、やっぱり友達関係が見えづらくなる。特に中学校の低学年だと、ある1人の子を叩いちゃったりとか、ネットの中で。それはリアルタイムにはわからないので、ちょっとタチが悪い。

おおた 学校としてはそこが問題ですよね。

 禁止している学校はあるけれども、将来は必ず使うことになるツールだから、やっぱり使いこなすことは大事なのかなと思います。ナイフを与えてるのと同じ。ナイフは、鉛筆を削ったり果実の皮を剥いたりとか、そういう便利な反面、ひとを殺すこともできる。スマホだってコミュニケーションのツールとして便利だけど、使い方を誤まれば人間を社会的に抹殺することもできるわけですよね。ナイフを渡すのと同じくらいの気持ちで渡してくれないと困るということです。

おおた ナイフを与えるというのは、麻布の教育そのものじゃないですか。危険だからといって触らせないのではなくて、そこを乗り越える人間になってもらわないと困ると。

 いま、ナイフ自体を使える子は少ないけどね。中1の生活科学でリンゴの皮むきからやらせてる(笑)。ちょっと危惧するのは、いまの子供たちはフロー情報に慣れてしまっていて、終わったら何も残らないのが当たり前になっている。ネットの影響だと思います。断片的な情報だけが止めどなく流れていくからいちいちそれを自分の中に取り込もうというモチベーションが働かない。テレビを見るならバラエティばかりでなくニュースや特集を見てほしいし、やっぱり印刷された活字は読んでほしい。麻布の国語の先生は「漫画でもいい」と言いますよ。漫画の中に活字があって、ストーリーや世界観が練り込まれていますから。

おおた この仕事をしていてそこは痛切に感じるところです。1つのまとまった思想が練り込まれた文章を読む機会が、大人でも極端に減っているのではないでしょうか。ネット上で、ただ事実を切り取っただけのその場限りの文章を読むことに慣れてしまっている。それでいうと気になっているのは、大学入試改革でいま議論されている「共通テスト」の国語です。あれって本当に「読解力」なんでしょうかね。思想が練り込まれた文章ではなくて、電化製品の取扱説明書を読むときみたいに、どこにどんな情報があるかを探す能力を見ているだけのような気がします。あれが読解力だとされてしまったら、日本人の読解力は崩壊するのではないでしょうか。

 たしかにそうなってますよね。文学作品を味わうという意味合いではなくなっている。

おおた 論述文でも、思想家がすごく抽象度の高いことを、たとえ話を多用しながら論理展開していくとか、なんかそういう立体的な文章の読み方ができなくなるんじゃないかってことに危機感を覚えます。

 いま新聞を取ってない理由として「ネットのニュースを読めばわかるから」ということもあります。でも、新聞にはやはり社説とか論壇みたいなものがあって、そこには主張があって、それに従えというわけではなく、自分の考えと照らしながら読むということに意味があったのに。そこが忘れられていますよね。

おおた 情報をこの視点で見るのと、あの視点で見るのというのではたぶん見え方が違うわけです。ところが、ファクトの情報だけが流れていて、視点を変えるチャンスがすごく減っちゃっている気がします。

 高校教育の到達点というのは、いわゆる朝日とか毎日とか読売とか、そういう全国紙の1面から、政治面、社会面、文化面、スポーツ面、経済面、全部をそれなりに読解できて、つまるところ自分なりの批判ができるようになること。原子力の問題だって、科学の視点からも経済の視点からも環境の視点からも感情的な観点からも理解できなきゃいけない。そういうような読み方ができれば、高校の教育としては1つの成果といえるかなと思うんです。

おおた 新聞を一通り読解できるというのは、おそらく多くの大人が「そうあってほしいな」と考えていると思うんですけど、そこから先に、自分なりの批判ができるというところって、わりと意識されてない。与えられた情報を読み取ることばかりが求められていて、そこから先にあるべき「批判」の重要性が社会的な意味で軽視されているように感じるんです。「批判=足を引っ張ること」みたいに思われかねない。でも本来「批判」って、弱点を補強するプロセスですからね。その点でいうと、新聞を読むだけでなくて、そこから批判的な意見をもつ力までを、麻布生には期待したい。

 読解力以前の知識の部分で唖然とすることも多いですけれどね。

おおた 中学生の3分の1が教科書レベルの文章を読解できないという話もありますしね。それで言ったら大人だって怪しいですよ。3分の1ではすまないかもしれない(笑)。

 

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