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十人十色のはたらく論
私たちは、人生の少なくない時間を仕事に費やしています。昔から、おそらくはこれからも。ただ、昔と比べると「仕事」の持つ意味が広がり、人の数だけ「はたらき方」があるのが今の時代ではないでしょうか。私たちは今後どうはたらくか=どう生きるか、今月のBLOGOSでは、そんなことを考える特集をお届けします。

スポーツタイプの電動アシスト自転車「e-bike」が急増中 メーカーの狙いは通勤需要にあり?

  • 2019年05月31日 11:17
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「電動アシスト自転車」と聞くと、多くの人は自転車の前後に子供用のシートを備えた、子乗せ用のものを思い浮かべるのではないだろうか。しかし近年、自転車メーカー各社から「e-bike」とも呼ばれる、スポーツ性の高いデザインの製品が次々に発売されている。

背景には、これまでにロードバイクやマウンテンバイクなど、本格的な自転車に乗っていた男性からの需要がある。すでに海外ではスポーツタイプの電動アシスト自転車で長距離ツーリングを楽しむということもあるそうだが、ここ日本での自転車には、通勤や通学など「日常の足」としてのイメージが強い。

新たな需要にメーカーはどのように応えようとしているのだろうか。幅広い電動アシスト自転車のラインナップを持つパナソニック サイクルテック株式会社 スポーツバイク推進課の吉田哲也氏に話を聞いた。

販売台数は前年比約2倍 スポーツタイプの製品に手応え

—— 最近の電動アシスト自転車の動向について教えてください

長い間、電動アシスト自転車の主流は子乗せ用や買い物用のものでしたが、ここ数年、通勤・通学に合わせて作られたモデルの販売台数が増加してきました。

そこに新たな流れとして、スポーツタイプの製品を投入しています。2年前、マウンテンバイク(以下、MTB)タイプの製品を発売したところ反応もよく、多くの方から注目していただいています。

本格的なオフロード走行も念頭に設計されたe-bike「XM-D2」

—— スポーツタイプへの需要はどのような用途で増えているのでしょうか

本格的なオフロードを走破できるMTBタイプの電動アシスト自転車に加え、パナソニックサイクルテックでは街乗りや通勤にも使えるクロスバイクタイプの電動アシスト自転車のラインナップも拡充しています。実数は出せないのですが、これらスポーツタイプのものの販売台数は2017年と比較して、2018年は約2倍にまで伸びていて、非常に手応えを感じているところです。

ライフスタイルの変化で、電動アシスト自転車での通勤を提案

—— クロスバイクタイプについては、通勤需要を狙ったプロモーションもされていますね

最近、昔からあるような仕事カバンを持たず、リュックサックを背負って通勤する方が増えています。そのおかげで、カゴのないクロスバイクのような自転車でも通勤できるようになりました。また、服装の面でも、動きやすいカジュアルな格好が許される職場が多くなってきています。このような通勤スタイルの多様化によって、自転車のデザインの自由度が上がっているという側面はあります。

実際、カタログのビジュアルにも、カジュアルな格好でリュックを背負っている男性を採用していて、スポーツタイプの商品でも通勤需要はかなり意識しています。

—— 実際のユーザーにはどのような属性が多いのでしょうか

MTBを出したときに、製品を購入してくれた方に対してアンケートをとったところ、40代以上の方が多く、男女比もほとんどが男性でした。クロスバイクも男性ユーザーが多く、これまでの電動アシスト自転車にはなかった、格好良さみたいなものが男性からは望まれていたんだなと改めて感じています。

通勤需要も狙うクロスバイクモデル「ハリヤ」

最近はフリーランスなど、必ずしも都心まで行かなくていいという働き方をする人も増えてきているので、そういう方は電動アシスト自転車での通勤・移動というのは便利さを感じるものになっていくかもしれません。

—— 自転車通勤のメリットはどのようなものだと考えていますか

自転車で移動すると、時間にも経路にも縛られなくなるので、毎日の通勤ルート以外にも気軽に行けるようになります。すると、流れる風の雰囲気だとか、街並みだとか、季節の移り変わりだとか、そういった新たな発見もありますよね。

また、アシストしてくれるとはいっても、足はペダルを漕いでいるので、適度な運動にもなりますし、なにより都内の通勤ラッシュに揺られることを考えると、圧倒的にストレスが少ないのではないでしょうか。

安全面は装備で対応 将来的にはバッテリー技術を生かしてIoT化も

—— 自転車通勤と切っても切れないのが安全面での課題だと思います。このあたりはどのようにお考えですか

次世代の自転車、という意味で考えるなら、やはり安全技術の搭載は必要になってくると思います。電動アシスト自転車は大型のバッテリーを積んでいるので、将来的にはいま自動車が搭載しているような衝突を防ぐような機能も実現できるかもしれません。IoT自転車への取り組みも始まっていますが、我々としても強みのバッテリーを生かして、新しい自転車を作っていきたいとは思っています。

話を聞いたパナソニックサイクルテック株式会社 スポーツバイク推進課の吉田哲也氏

ただ、すぐにそういった抜本的な対策をするというのは難しいので、今は自転車本体の制動性能の向上や、自動で点灯するライトを明るいものにするなど、地道な対策をしています。たとえばMTBは未舗装路を走るという前提で設計しているので、雨や泥にも強いディスクブレーキを装備しています。

—— 交通インフラなど、環境面にも課題はありますか

自転車の存在を都市社会の中で認めていくなら、自転車専用の走行帯の整備が必要になってくると思います。今も徐々に作られてはいますが、車道の左端に付け加えたようなものが多い。しかも、車道の端にはゴミが多く、自転車で走るとパンクもしやすいんです。街中では路上駐車の車も多く、それらを避けるためには車道の内側に入らなければならないので、やはり危険につながりかねない。

自転車文化の深い海外では行政が主導して自転車が走りやすい環境を整備しているところもあります。背景には環境問題や慢性的な渋滞などもあるとは思いますが、これは日本でも少しずつ進んでいって欲しい部分です。

初代電動自転車のバッテリー(左)と小型化された最新電動アシスト自転車のバッテリー(右)。

自転車は今のところ、車道では弱く、走行可能な歩道では強いという、難しい立場にあります。我々としては車両の安全性を高めながら、様々なシーンで自転車が活躍するような社会になって欲しいと思っています。

***

取材後、都内の家電量販店に足を運ぶと、パナソニック製も含め数多くの「e-bike」が売り場に並んでいた。販売員に話を聞くと、やはり男性の購入者が多いという。実際に試乗してみると、シートが付いていない分、子乗せのものよりも取り回しが楽で、乗り味もスポーツテイストが強い。これなら確かに、通勤にも使えそうだと感じた。

「モビリティ革命」、「MaaS」など、人々の移動手段に関わるキーワードに注目が集まるなか、現時点で一般の支持を得ている自転車が進化するのは当然の流れでもある。すでに都内では千代田区コミュニティサイクル「ちよくる」など、電動アシスト付きシェアサイクルが一部地域で運用されているが、今後の交通のあり方を考えると、自転車メーカー各社の存在感も増してくるだろう。

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