- 2019年05月30日 17:45
どんな車も一瞬でコネクテッドカーに変貌。MaaS、自動運転時代に向け「移動の進化」が始まる
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「MaaS」という言葉が世界的に大きな注目を集めています。「Mobility as a Service」の略で、車、バス、タクシー、鉄道など、さまざまな交通手段による移動を1つのサービスとして捉える、新しい交通システムです。「交通手段が馬車から車に変わった100年前の再来」という声まであり、日本でもセミナーが満員になるなど、AIやIoTのような熱量でブーム化しています。
本稿で紹介する株式会社SmartDrive(スマートドライブ)は、車に設置するデバイスから走行データを取得し、AIで解析する、MaaSの実現に欠かせない技術を持っています。その技術的な背景やビジネスモデルについて、同社の取締役、元垣内 広毅氏に話を聞きました。
元垣内 広毅
大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程にて統計解析を専攻。博士号(工学)取得。有限責任あずさ監査法人にて、会計監査及び内部統制監査等に従事した後、グリー株式会社に入社し、各種データ分析業務を担当。2015年1月にスマートドライブに入社し、執行役員を経て、2018年12月より現職。現在は、データプラットフォーム事業を中心に、データ解析領域の技術開発及び事業開発を担当。
センサー搭載デバイスで車の挙動をビッグデータ化
――MaaSや自動運転など、交通関連の技術革新に注目が集まっています。SmartDriveはどのようなビジネスを展開しているのでしょうか?

――元垣内
「MaaSの要素技術として、CASE(※)という言葉がよく使われます。最初のCがConnected。当社は工事不要で、どんな車でもコネクテッドカーに変えるデバイスをキー技術とした事業を構築しています」
※Connected(繋ぐ)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェア)、Electric(電動化)の頭文字を取った用語
これまではコネクテッドカーを実現するには、特別な組み込み工事や改造工事が必要でした。しかし、同社は、デバイスをシガーソケットに挿すだけで済むといいます。
――元垣内
「2013年の設立から1年ほどで総務省のICTイノベーション創出チャレンジプログラム『I-Challenge!』の第1号案件に採択されるなど、プロトタイプ開発段階から引き合いがありました。我々のプロダクトは、たった数秒でデバイス自身が傾きや進行方向を認識できるのが大きな特徴です。シガーソケットの穴が縦向きでも斜めでも後ろ向きでも問題なくて、ただソケットに挿せばいいんです」

車をスマートフォンやインターネットに繋ぐことで、さまざまなデータが取得、活用できるといいます。
――元垣内
「最新のデバイスであるLTEモデルには、
・GPS
・加速度
・ジャイロ
3つのセンサーが搭載され、内蔵されたSIMカードが直接サーバーに走行データを送信しています。データの計測粒度は細かく、0.1秒刻みで、3次元加速度および3次元ジャイロのセンサー値を計測できます」
――データ分析はサーバーで行うのでしょうか?
――元垣内
「すべてをサーバーで行うと処理負荷とコストが上がります。なので、エッジ(※)でも解析やデータ変数を統合する処理などを行っています」
※モノ側(エッジ)でAIを動かすエッジAIコンピューティング
データによって車の挙動を細かく認識でき、ドライバーの運転の特性がひと目でわかるそうです。
――元垣内
「どこで急発進、急ブレーキをしたかだけでなく、水平面上の360度のどの向きにどれくらいのGがかかったかなど、すべてがデータとして表れます。荒い運転をするとGの動きが散漫になるなど、独自のアルゴリズムを使ったAIで解析しています」
毎秒レベルでデータを取得し、さまざまな軸で運転の特性を表現するこのデータ解析基盤技術。SmartDriveが独自に開発し、特許も取得しています。
データの取得、活用するスマートドライブのビジネスモデル
ビッグデータやAIで解析した結果を活用し、スマートドライブでは3つの領域を組み合わせて、さまざまなサービスを展開しています。

スタートアップ企業には珍しく、スマートドライブは早くからマネタイズに取り組んできました。
――元垣内
「我々は早い時期から、世界最大級の保険グループに属するアクサ損害保険と業務提携しています。当社のデバイスとデータ解析により、たとえば安全運転度によってコーヒーなどに交換できる特典が提供されるなどのサービスを実施中です。また、保険加入者の方の運転傾向や事故のリスクに応じて保険料を変動させる『テレマティクス保険』を共同開発しています」
スマートドライブのデバイスとデータ分析システムを法人向けに提供する「SmartDrive Fleet」も好評です。デバイスを挿した車両の現在地や走行距離、走行時間といった車両の動態をリアルタイムに把握できます。加えて、ドライバーの運転特性もわかるとのこと。
――元垣内
「現在、物流や介護をはじめ、さまざまな業界からご契約をいただき、数台から数千台まで、台数規模もさまざまなお客様にご活用いただいております。たとえば物流の場合、それぞれの車がどこを走っているかがわかれば、荷主に精度の高い到着時間を提示でき、近い車に集荷指示できますので、ご好評をいただいています」
また、データによる安全運転の指導も行えるうえ、記録に残るという抑止力もあって、事故が減ったという企業が多いそうです。年間で20~30%も減少したケースまであると、元垣内氏は言います。

――元垣内
「サービスをご利用いただいてる電気工事の企業は、工事手配の効率が上がり、スタッフが1日に対応できる件数が増えたことによって、結果的に売上が上がったそうです。さらに事故が減り、保険料も下がり、早く帰れるようにもなったと喜んでおられました」
ほかにも介護や営業車でのセールスを行う会社からは、日報を自動化できるメリットも挙がっているといいます。たしかに精度と信頼性の高い日報が作成できそうです。
個人向けには、コネクテッドカーをリースする「SmartDrive Cars」、家族の運転を見守る「SmartDrive Families」が続けてリリースされました。
――元垣内
「走行データが集積されるSmartDrive Platform上のAPIを利用して、走行データを活用したコネクテッドカーサービスをBtoB、BtoBtoC、BtoCにて展開しています」
データと分析システムを他社に開放するプラットフォーム事業も
自社のサービスで活用しているSmartDrive PlatformのAPIを3rd partyに提供することも開始し、既に3rd Partyのサービスとしてローンチしているものもあります。
事故リスク分析や最適ルート提案など、AIや数理モデルを活用した機能もSmartDrive Platform上に揃えていきます。
さらに、パートナー企業の保有データや、別途センサー等で取得したデータを加えることも可能です。
――元垣内
「プラットフォームには、ドライブレコーダーやカメラの画像データ解析、温度センサーや湿度センサー、重量計などから取得できるさまざまなタイプのデータをインプットできます。AIは汎用性の高さを考えてアルゴリズムを開発しましたので、データの異種混合を柔軟に行って分析できます」
サービス開発の容易さにもこだわったといいます。
――元垣内
「SmartDrive Platformのデータとシステムを使うことで、どれほど簡単にサービスが立ち上げられるかというテスト的な意味合い含め、まずは内部で運転見守りサービスの『SmartDrive Families』開発しました。合宿という形でしたが、主な部分は3日で完成しています」
2019年4月には物流大手、日本GLPのグループ会社であるモノフルがSmartDrive Platformを利用して新サービス「トラック簿」を立ち上げています。トラック簿は、物流施設や工場などで大きな問題となっているトラックの長時間待機問題解消に向けたサービスです。
SmartDrive Platformが車両の最新の位置情報や走行経路、ジオフェンス(仮想境界)に出入りした場合の通知機能などを提供しているそうです。





