記事

冷戦の終結が2度の政権交代を生んだ 谷垣禎一前自民党総裁が振り返る平成

1/2
BLOGOSでは「レジェンドたちが振り返る平成」と題し、政治ジャーナリストの角谷浩一氏をホストに、日本を支えてきた政治家たちに「平成」という時代を総括してもらい、令和の日本はどうあるべきなのかを考える対談企画をお送りしている。第3回は自民党前総裁、谷垣禎一さんに話を聞いた。【編集:田野幸伸】

ダイジェスト動画



角谷:平成の30年、そして始まった「令和」の時代を繋ぐこの時期に、政界のベテランの皆さんに話を聞いて、平成を振り返っていただくというこの企画。今回は前自由民主党総裁の谷垣禎一さんです。

谷垣:よろしくお願いします。

角谷:今日はご自宅にお邪魔しております。リハビリの最中の合間を縫ってお時間をいただきました。リハビリのお加減はどうですか?

谷垣:いやぁ、やっぱり毎日やらなきゃダメなんですよ。何か目標を見つけて頑張らないといけないですね。のっけから悠長な話をして申し訳ないんですけど、徳川家の八代将軍・吉宗もね、脳卒中を起こして半身不随みたいになったことがあると。

でも、もう一度、タカ狩りをやりたいというんで、一生懸命リハビリをやったという話を落語か講談で聞きましてね。これだ!と思ってリハビリをやっているわけです。

角谷:辛いリハビリも徐々に良くなっていくという変化があれば、だいぶ違いますよね。

谷垣:ところがそこが難しくてですね。すこし良くなってきたかと思うと、リハビリをやり過ぎるとそこが痛くなっちゃって、どうにも動かない。まぁ、そういうことの連続ですから。確実にひとつひとつ歩いていくしかないですね。

元号が変わるということはどういうことか


角谷:谷垣さんの政治生活の大半は平成の中にあったかと思うのですが、まず昭和の後半、昭和天皇が亡くなる前後の頃からお聞かせいただけますでしょうか。

谷垣:私が初当選したのは昭和58年ですが、昭和の間はいわば駆け出しというか、見習い期間みたいなもんですね。昭和天皇がお亡くなりになったのは確か朝6時何分かだったと思うんですよ。ちょうどその時、郵政政務次官というのをしておりましてね。やはり陛下がお亡くなりになると、行政官庁も色々とすぐにやらなきゃならないことがあるんです。

もし陛下に万が一のことがあったら、すぐに役所に出て来いって言われていたんですね。それで陛下がお亡くなりになった日はすぐに家を出まして。そうしますと、世田谷郵便局の上に半旗が掲げてありましてね。あぁ、我が役所はすでに対応してるなぁ、と思ったのが昭和の終わった瞬間ですね。そんなことを思い出します。

角谷:昭和の最後っていうのは、大変景気のいい時代で、世の中が少し浮足立っていました。その中で、陛下のお加減が良くないという話から、社会全体が自粛ムードになりましたね。なんとなくみんなが、気持ちの半分で心配しながら、もう半分で生活をしているっていう時期だったなと思い出します。

谷垣:まさにそういうことですよね。

角谷:そういう中で政治家をやっていて、昭和から平成に移るという時代の変化に、どんな思いがありましたか?

谷垣:今おっしゃったような自粛ムードがあったわけですね。そういう気持ちはもちろん、私にもありましたけど、その反面、昭和天皇が亡くなって新しい天皇がご即位になるわけです。

そこにはやはり、皇位の継承をどうするかって、いろんな問題があったんです。今も語られているように、平成という元号も極秘のうちに決めたりしてたわけですけど。そんな時期に、今でいう内閣府の担当の方から、元号の意味は何かというような本をいただいたりしたんです。「こういうのを読んでおいてください」って。

「なんでこんな本をもらうのかな」と思ったものですが、今から考えると、陛下がお亡くなりになって、新しい陛下が即位されるには、こういう国家的な問題があるっていうことを若い政治家にも自覚させておかなきゃならないっていうのがあったんだろうと思います。

政権交代は冷戦の終結から生まれた

Getty Images

角谷:さて、平成の時代の政治家・谷垣さんの話題に移りましょう。自民党は2度、野党に転落。これは平成で初めて起きたことでした。30年間に2度もあったというのは、自民党を背負って立っていた人にとって大きな出来事だったと思います。まずは細川政権のときから、話を伺いましょう。

谷垣:今になって振り返りますと、細川政権が誕生する前は色々な政治改革というのが言われたわけです。ロッキードとか、リクルートとか。そういう金銭にまつわる問題が起きて。

角谷:政治とカネ。

谷垣:政治とカネですね。そこでもっと清潔な政治を作ろうとか、もっと金のかからない政治にしていかなきゃいけないというのがあった。それもむりからぬことだったと思います。

しかし、今から考えてみると、やっぱり大きかったのは冷戦が終わった、ということだろうと思うんですね。それまでの日本の政治は政権交代がほとんどなかった。自民党はいわゆる55年体制と言われますけど、昭和30年にそれまでの自由党と民主党が一緒になって出来たわけです。

角谷:保守合同が始まった。

谷垣:保守合同、その前に左右に分裂した日本社会党が再結集したんですね。

角谷:右派と左派が一緒になった。

谷垣:そうです。それで社会党に政権を渡せないということで、自由民主党が成立したということであります。しかも敗戦の後、お隣の朝鮮半島では、北と南の熱い戦争がはじまり、台湾海峡を挟んで中国と台湾の戦いも続いた。それからベトナムでもやはり南北の戦争があった。ヨーロッパでは冷戦という言葉が使われたかもしれないけど、日本にとって周辺は熱い戦争だったわけです。

角谷:実態があった、冷戦ではなかった場所だったんですね。

谷垣:自由民主党はそういう中で、西側の世界の中で生きよう、生きるべきだという考え方をもっていた。一方で最大の野党であった社会党は東側で生きろとまで公言したかどうかはわかりませんが、少なくとも完全に西側にコミットするのはいかんと。そういう考え方だったと思いますね。

第一党と第二党がそういう体質の違いを持っていたのでは、政権交代ができるはずもなかったと。しかし、長い目でみれば、健全な与党と野党というものが並び立って、政権交代をしていく姿が望ましいという考えはあったんです。

現実にはなかなかそうはなりませんでしたが、冷戦が終わったら、やっぱりそういった課題に日本が取り組まなければならないという議論が起きてきた。ある意味ではまさに自然なことであって、それは現在までも続いている一種の課題だと思うんですね。

細川政権、それから鳩山政権時代の政権交代の時に我々自民党も下野したわけですけど、ある意味で冷戦終結を受けた、非常に大きな歴史的な変動でした。我々にとっても試練だったわけですけどね。

角谷:我々はどうしても目先の政治改革だとか、中選挙区制が小選挙区制に変わるですとか、極めて内政のところでモノを見ていますけれども、世界情勢が変わっていく中で、政権交代の機運が醸造されていったという意味では、少なくとも昭和から平成に移る間に日本の政治は少し成熟したのでしょうか。

谷垣:まぁそこは、なかなか難しいところだと思います。ただ、今の冷戦ということを抜きにして、カネのかかる政治については、昔のように大きなカネの絡む事件は、油断しちゃいけませんけど無くなってきたんだと思いますね。

小さなと言ったら叱られるかもしれませんけど、カネに関する事件は昔の億単位の話がまかり通るのに比べれば、小さな話になってきてるというのは日本政治の進歩だと思います。

あるいは政治的なスキャンダルと言っても、ちょっと局面が変わってきてですね、例えば最近では、いろいろとセクハラみたいなことが問題になったりする。政治倫理っていうのも、少しフェーズが変わってきたような気がしますね。

政治権力が検察を使うようなことがなくなってきた


角谷:確かに、日本の政治は金権政治というか、政治家という権力を持っている人たちの思惑で金が動くようなことが「政治家とカネ」のイメージとして大変強かった。

谷垣:はい。

角谷:それが変わってきましてですね。

谷垣:そうですね。

角谷:もちろん、政治資金規正法の制約が厳しくなったこともあります。それから、小選挙区制になったことによって中選挙区制時代のようにお金がかからなくなってきたのはあるかもしれない。

谷垣:そうですね。中選挙区制の時代は、同じ党で張り合っていたということもありますし、それから選挙区が広かったということもあると思います。だから選挙にカネをかけないで済むようになったというのは、ひとつの進歩だろうと思うんです。

それからもう一つはですね、カネのかかる、かからないという問題と違って表に現れたわけじゃありませんけれども、政治権力が相手方をやっつけるために、いわば検察権力とか、そういうものを使ってやるやり方がどことは申しませんけど、今だって世界中にありますね。

角谷:ですね。

谷垣:そういったことが、日本の政治の中では表面化することがないわけではありませんが、かなり少なくなってきていると。これは色々な国の政治を見てきても、かなり大きな成果だと思います。法務大臣なんかをやっていますと、そんなことも言いたくなるんですよ(笑)。

あわせて読みたい

「谷垣禎一」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    韓国は歴史観とズレる事実を排除

    舛添要一

  2. 2

    「ネトウヨ」批判に逃げる知識人

    篠田 英朗

  3. 3

    橋下氏 百田氏の方が反日本人的

    橋下徹

  4. 4

    謝罪なく逃走の津田大介氏に呆れ

    やまもといちろう

  5. 5

    日本は韓国に知的な手助けをせよ

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  6. 6

    日韓は報復でなく大人の対応せよ

    小宮山洋子

  7. 7

    天皇燃やした? 映像制作者を直撃

    篠田博之

  8. 8

    田中角栄が頼った「最強ヤクザ」

    NEWSポストセブン

  9. 9

    権力迎合で安泰 NHKの存在に疑問

    ビデオニュース・ドットコム

  10. 10

    よしのり氏 北巡る米発言に怒り

    小林よしのり

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。