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闇市から観光スポットへ 沖縄の食文化伝えた牧志公設市場69年の歴史に幕

青や緑、黄色とカラフルな魚や、頭から足まで各部位が余すことなく並べられた豚肉――。沖縄県の珍しい食材がその場で味わえ、レトロ感漂う南国情緒を満喫できる場所として、長く親しまれてきた第一牧志公設市場(那覇市松尾)が建て替えのため、6月16日を最後に現在の場所での営業を終える。

市場の始まりは終戦から間もない1950年。「県民の台所」から近年は一大観光スポットへとその役割を変えつつ、本土復帰(72年)など沖縄の戦後とともに歩んできた。市場には連日、国内外から多くの観光客が訪れ、沖縄の独自の食文化に触れている。営業休止まで半月余りと迫る中、沖縄を訪れる機会があれば、立ち寄ってみるのもおすすめだ。【岸慶太】

国際通りから徒歩3分 戦後が凝縮した「沖縄の台所」

那覇のメインストリート・国際通りからほど近い第一牧志公設市場。市場周辺にも土産物店や居酒屋が広がる

地料理店や土産物屋、米軍統治下の名残を感じさせるステーキ店など、約1.6キロにわたり店が軒を連ねる沖縄のメインストリート「国際通り」。その一角から観光客でにぎわう「市場中央通り」を3分ほど歩くと、「那覇市第一牧志公設市場」と書かれた建物が目に入る。

レトロな雰囲気が漂う市場の内部。国内外の観光客が行き交う

四方に13か所設けられた入り口の一つから中に入ると、レトロな雰囲気とともに様々な食材を混ぜ合わせたようなにおいが漂っていた。色とりどりの鮮魚や島らっきょう、南国フルーツなど珍しい品が並ぶ光景は新鮮で、まさに「沖縄の台所」の言葉がふさわしい。スパムの缶詰などアメリカ文化の色濃い商品もあり、戦後の沖縄の歩みが凝縮した印象を受ける。

1階部分には鮮魚店や精肉店など沖縄定番の食材や土産物を扱う90事業者が出店している。フロアは、「肉屋」と「魚屋」、フルーツや漬物などの「加工食品・その他」に大まかに区分され、肉屋は、扱う商品は豚肉がメーンだ。

「ひづめと鳴き声以外は全部食べる」沖縄の豚肉文化を体感


「ラフテー(豚の角煮)」や、豚足を煮込んだ「テビチ」、耳たぶを加工した「ミミガー」などでおなじみの沖縄の豚料理。沖縄では長年、食肉の中でも主に豚肉が消費され、近年は小柄な沖縄固有種の「アグー豚」のブランド化も進んでいる。

「ひづめと鳴き声以外は全部食べつくす」という言葉もあるほど、内臓や血液にいたるまで大切に活用するのが文化だ。市場でも、「チラガー(顔皮)」や「チマグー(豚足先)」など、まさに頭から足の先まで様々な部位が並んでいた。

カラフルな南国の鮮魚は調理してもらえる




鮮魚は市場の目玉商品だ。訪れたのは5月中旬。その日朝に水揚げされた新鮮な魚が並び、カラフルで種類豊富に陳列されている様は圧巻だ。青色の魚「イラブチャー」や、皮をむかれて針が無い「ハリセンボン」、見慣れない形のカニを観光客が次々とカメラに収めていた。

魚屋の中で、「新垣鮮魚店」は市場のオープンから続く老舗だ。おすすめは「ヤクンガイ(夜行貝)」で、大きさは大人の手の平ほどで、重さは1キロを超える。殻は貝細工や螺鈿(らでん)の材料に使われ、奄美諸島以南の温暖な海域に生息するという。

1階で購入した鮮魚は2階の飲食店で調理してもらえる

市場の売りの一つが、1階で購入した食材を2階の飲食店で調理してもらえること。調理のための料金は一人500円。沖縄で3大高級魚にも数えられる「アカマチ(ハマダイ)」も購入し、2階へ向かった。

外国人観光客でにぎわう市場に感じる屋台の雰囲気


2階には10店以上の料理店が入る。テーブルと椅子が雑多に並ぶ様子は、まるで東南アジアの屋台のような雰囲気すらある。そこかしこでインバウンド(訪日外国人)の人たちがオリオンビールを手に舟盛りを珍しそうに味わっていた。

刺身にしたヤクンガイはコリコリとした食感が心地よい。ガーリックバター炒めにしても、噛めば噛むほど甘みを感じられ、ビールが進む。アカマチの刺身も味にクセが無く、「沖縄の魚は脂がのっていない」という下馬評は覆された。

戦後の闇市がルーツ 「新しくなっても煩雑とした雰囲気を」

大人の手の平ほどの大きさのヤクンガイ

ヤクンガイはコリコリした食感に、甘みも感じられた

20万人超が犠牲となった沖縄戦。その後の混乱のさなか、現在の市場周辺に焼き物の陶工が住み始めたのをきっかけに、自然発生的にできた闇市が市場のルーツとされる。那覇市が50年に長屋の公設市場を設立、火災による焼失の他、相次いだ衛生面や不法占拠などの問題をクリアしながら、現在の建物が完成したのが72年のことだ。

市場は6月16日に閉鎖された後、7月1日に北西に約100メートル離れた「旧にぎわい広場」で仮設市場として営業を始める。元の市場では新設工事が進められ、2022年4月の再オープンを予定している。


現在の市場での営業は残すところ16日。新垣鮮魚店の3代目店主の新垣百代さん(45)は「今の市場はライブやコンサートなどいろんなイベントも開かれて、多くの人が集まってくれた。食べ物を通じて沖縄に関心を深めてくれる人もいて、独特の雰囲気が自慢だった」とさみしがる。店は3年後に新設の市場に出店する予定で、「施設が新しくなっても、今の市場のごちゃごちゃとした雰囲気が残ってほしい」と願っている。

那覇市第一牧志公設市場
住所:沖縄県那覇市松尾2丁目10-1
営業時間:午前8時~午後9時(店舗によって異なる)
休日:毎月第4日曜だが、6月16日まで無休
問い合わせ:管理事務所(098-867-6560)

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