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特集
十人十色のはたらく論
私たちは、人生の少なくない時間を仕事に費やしています。昔から、おそらくはこれからも。ただ、昔と比べると「仕事」の持つ意味が広がり、人の数だけ「はたらき方」があるのが今の時代ではないでしょうか。私たちは今後どうはたらくか=どう生きるか、今月のBLOGOSでは、そんなことを考える特集をお届けします。

「退職なんかに人生賭けるな!」退職代行サービスEXIT創業者が語る、すぐに始められる “仕事の辞め方”

  • 2019年05月30日 09:10
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BLOGOS編集部

人手不足から来る長時間労働が問題視され、終身雇用制度が当たり前でなくなっている現代は、多くの人にとって「仕事を辞める」ということが身近なライフイベントになっている。

しかし、自分で退職の意思を伝えてスムーズに会社を辞められればいいが、様々な手口を駆使して社員を辞めさせないように仕向けるブラック企業も存在する。そんな時代にあって近年注目を集めているのが「退職代行サービス」だ。

こうしたサービスを扱う業者が流行するきっかけになったのが、「明日から会社に行かなくてもOK!」というコピーを掲げる「EXIT株式会社」。創業者の1人・新野俊幸氏が自身の経験をもとに、最も早い時期にサービスをスタートさせた。

今回は同社の新野氏と、もう1人の代表である岡崎雄一郎氏を取材し、多くの人が仕事を辞めにくいと感じる理由やサービスの利用実態について聞いた。【取材:島村優】

社員を辞めさせない会社は「無駄が多い」

—今日はよろしくお願いします。意外だなと思ったんですけど、かなりオフィスが静かなんですね。

新野:普段、出社するのは僕と彼(岡崎氏)の2人だけなんです。社員は基本リモート作業で、会社に集まるのは週に1回だけで。

—週1回。それはすごいですね。

岡崎:パソコンとネット環境が整っていれば、実際の作業はできます。

—そうなんですね。例えば、私が明日会社を辞めようと思ったら、どのように退職代行を進めるのでしょうか。

岡崎:例えば「明日から会社に行きたくない」と、なった場合は、今日中に支払いを済ませて、必要情報をもらえれば手続きを始められます。実際の流れとしては、退職届は依頼者本人に送ってもらって、こちらは会社に電話して退職に関する具体的なやり取りをします。

新野:勘違いされがちなんですけど、我々がやっていることは退職に関する交渉や退職意思の伝達ではありません。退職する意思は本人が退職届で伝えているので、実際には「退職に関する連絡の仲介」ということになると思います。

退職代行サービスEXIT公式サイト

岡崎:書類のやりとりは本人と会社でやってもらうので、その後の退職をスムーズにするための連絡ですね。必要な書類の送付や備品の返却をお願いするようなイメージです。

その日に電話しても翌日の退職になるわけではなく、会社の手続き上2週間後が退職日となる場合が多いですが、そのようなやり取りを通じて明日から会社に行かない、という状況になります。

—間に第三者である退職代行サービスが入ることで、スムーズに進むんですね。

新野:依頼者本人が伝えると、いつも高圧的に対応されている上司に押さえつけられる、というケースが非常に多いです。でも、僕らみたいな第三者に対してはそんなに強気に出られない。本人に対しては「退職とかありえねーから。ふざけんな!」って退職届を突き返すくらいのことをやる人でも、僕らが入ればそういう事態は起こらないようになります。

自身の経験から大手企業の辞めにくさを感じ、退職代行サービスのヒントを得た新野氏

—面倒なことが起きたり、揉めたりするケースはありませんか?

岡崎:やっぱり、うるさく言う担当者はいますよね。「ふざけんな、お前こんなの絶対認めないぞ」とか。ただ、退職届は本人が郵送して、辞める意思が固まっていれば、会社側としてはどうにもできないですよね。

本人を説教したいけど、その相手はもう出社しないし電話も出ないから、僕らに説教するしかない、みたいな。お客さんのことだから言い返すこともできず、ひたすら謝り続けています。

新野:「アイツは使えないから、いらないんだよ」や「なんだよアイツ、このやり方はよ」といったように社員の悪口を言う人もいます。僕らが言われても困るんですけど、第三者である僕らにそれだけ文句を言うってことは、本人にはどれくらいのことを言うんだろうかとは思いますよね。

—確かに、日頃から本人には厳しく当たっていそうですね。

新野:ただ、そういう人がいる会社って、本当にやってることが非効率な気がします。なかには、どうにかして利用者と連絡を取ろうとして毎日電話したり、家まで上司が行ったりとかしている。かなり無駄な仕事をしているんですよ。いや、その間に仕事しろよ、と。

岡崎:「人が足りないから辞めさせられない」と話している一方で、利用者を追いかけ回している。すごく不思議ではありますね。それは辞めたくなるよな、と思います。

「退職=悪いこと」と考えて体が動かなくなる

—ひと月にどれくらいの件数を扱っているんですか?

新野:今はだいたい300件前後です。

岡崎:この数字は大きい連休の後といったタイミングでは増えます。GWや年末年始の休み明け。休み明けはみんな仕事に行きたくない気持ちが強くなるのかな、という印象です。

—そういう要因の増減もあると。サイトに掲載されていた「退職成功率100%」というコピーが目を引きます。

岡崎:本人が心変わりしない限りは成功率100%です。ただ、これは退職が法律で認められているというだけで、退職代行を使おうが使うまいが仕事を辞められないということは本来ありえないんです。

「開成卒の刺青社長」というTwitterアカウントでも知られる岡崎氏。

新野:僕はこれまでに退職を3回経験していますが、なぜ辞められないかを考えると、それは罪悪感に襲われるからなんです。自分では「呪い」と呼んでいるんですけど、まさに呪われてるかのごとく、仕事を辞めようと思うと体が動かなくなってしまう。

岡崎:依頼者を見ていても、優しい方とか真面目な方ほど「自分が悪いんじゃないか」と考えてしまって、なかなか言い出せない方が多いかもしれません。

新野:「仕事を辞めること=すごく悪いこと」という考えが染み付いちゃってるんです。でも、なぜ仕事を辞めるのが悪いのかは自分では説明できないんです。というか、そもそも悪いことではないので。それなのに、強い罪悪感で身動きが取れなくなるような現象があって、それは自分だけじゃなくて多くの人が感じているのかな、と。

—そういう意味では、必ずしもブラックな会社でなくても辞めにくい状況は生まれそうですね。

岡崎:多くの会社は何かしらブラックな要素があると思うんですけど、クリーンな会社でも人間関係に詰んで辞めたくなっちゃう、というケースも結構あります。

新野:自分も3社目がそうだったんですけど、すごい信頼されて、任されている仕事も多かったんです。ただ、それはそれで仕事を辞めづらいな。と。これだけ頼られているなかで辞めるとなると、「裏切り感」が強くなる。

辞めるって伝えた後の2週間の出社とかも、多くの人の感覚だとかなり気まずいと思います。ちょっと見せしめ的な感じもありますし。

岡崎:まあ、行かなければいいだけなんですけどね。

社会や会社の変化を待ってはいけない

—もともとEXITのアイデアは新野さんが自身の体験からインスピレーションを得て、そのアイデアを幼なじみの岡崎さんに相談したところからサービスがスタートしたと聞きました。退職に対する温度感も少し違うんですね。

岡崎:そうですね、僕は個人的には最悪行かなきゃいいじゃん、って思っています。この日で辞めますって言ったら、それまで通り仕事して「お疲れ様でした」って、それで終わり。ただ、彼から話を聞いた時に、仕事を辞めにくい人がいることについては理解できました。

—新野さんは、EXITのサービスを始める時に解決したいと思った課題はどんなものでしたか?

新野:自分の経験から「辞めるということが悪い」という空気感があって、なかなか退職を言い出せないことを感じていました。普段から上司と腹を割って話せる関係があったら、直接相談することもできると思うんですけど、多くの人はそんな関係が作れていないと思います。

もう一つは退職を相談した後の、上司からの無駄な引き留めですね。「後任が決まってないから、あと3か月だけ続けてほしい」と言われて、そのまま2、3年というよくあるパターンなんですけど、よっぽど意思が強くないと辞められない。自分以外にもこうしたニーズはあるはずだと思い、退職を代行するサービスを作って「退職で悩んでいる人をこの世からなくそう」と決めました。

—岡崎さんは最初このサービスのアイデアを相談された時はどう思いましたか?

岡崎:アホなんじゃないかな、と(笑)。

彼は「自分だったら20万円は出す」って言っていて、何を言ってるんだろう、と。僕は仕事なんて自分で辞めればいいじゃん、と思うタイプなので。ただ、周りを見たら確かにそういう人たちはいるし、まあ需要はあるかもしれないから始めてみようか、という感じでした。

課題っていう意味では、社会、そして会社が作り出す「辞めにくい空気」を変えよう、と言ったところで、それは絶対にすぐに変わらないんです。だから、それだったら個人が変わろう、という思いがあって。ただそうは言っても、自分で仕事を辞めると伝えにくいのであれば、「辞める」決断だけしてもらって、僕らのような代行サービスを使って退職して、変わるきっかけみたいなものを掴んでもらえればいいかな、と。

電話した会社の反応にも変化

—立ち上げを決めてからは順調にスタートしたんでしょうか?

岡崎:じゃあやろうか、って動き出そうとした時に突然、新野が「やっぱり俺はいいや」って言い出して。

—え!

新野:自分自身が仕事を辞められなかったんです。だから、一回立ち上げを止めようと。

—まさに、自分が退職代行サービスを必要としている状況だったんですね。

岡崎:だから僕は、「マジかよ、知らねえぞ。(始めなかったことを)後悔するなよ」と自分一人で退職代行サービスを勝手に始めました。勢いでサイトを立ち上げて、かなりしょぼい出来栄えだったんですけど、それでもすぐに問い合わせが来て。

とにかくすぐに立ち上げたので会社も設立せず、振込先は僕の名義になっていて、会社と退職の連絡をとる時も「岡崎ですけど、御社の〇〇さんの件で…」「はい、どちらの岡崎さんですか?」「いや、そういうのはないんですけど、岡崎です」って感じでした。

—謎の岡崎さんから電話が来て、社員の退職を伝えられる、ってのは驚きますね。

岡崎:ヤバいですよね。それから2週間後くらいに彼が「やっぱりやろう」って戻ってきた時には、すでに依頼を数件こなしていました。

新野:僕は、サービスを作ろうと思った自分自身が辞められない、ということから改めてニーズを確認して、もう一度岡崎に連絡したら、すでにサービスを勝手に始めてるっていう。「何をしてんねん!」と思いましたね(笑)。

新野:その後しばらくは、僕も「岡崎」で電話をかけざるを得なかったですね。

—謎の「岡崎」が2人に(笑)。

岡崎:最近でこそメディアに退職代行サービスが取り上げられるようになって、ある程度理解を示してくれる方も増えたことを感じますけど、昔は本当に「なんじゃそりゃ」って反応ばかりでした。

—それから少し経ってからEXITとして体制を整えて、改めて出発したような感じなんですね。

岡崎:会社の名前は「やめてもいいんだよ株式会社」になりそうな時があったんですけど。

新野:今思うと、その名前にしたかったけど、やらなくて良かったと思っています。会社名の話し合いをするMTGに家入一真さん(※)も出ていたんですけど、家入さんは「いいね、いいね」「素晴らしいよ、その名前」ってずっと言ってましたね(笑)。

※起業家・投資家、GMOペパボ創業者。

岡崎:他の人は「絶対に止めたほうがいい」って言ってたんですけど、家入さんだけは「素晴らしいよ。最高だね」って。

新野:EXITのクリエイティブ全般を任せていた信頼できる方がいて、その人から「社会に認めてもらいたいなら、止めたほうがいい」「ギャグテイストは人事に喧嘩を売ることになるし、サービスの未来を考えた時に違うのでは」という至極真っ当な話をされて、今の名前になりました。

岡崎:2人ともギャグテイストが好きなんで、そっちに走りがちなんです。

退職代行は「ギャグ」、退職に人生を賭けてはいけない

—岡崎さんはよくTwitterで「退職代行はギャグ」と発信しています。今もその考えは変わっていませんか?

ギャグだと思いますね。このサービスに社会的な意義はあると思うんですけど、行かなきゃいいじゃん、カッコ笑い、みたいな。とはいえ、もちろんそれができずに必要としている人がいることは理解しています。そういう人に対しては手を差し伸べたいんですけど、ただ、やっぱりギャグですね。僕の人生で最大のギャグです。

新野:僕は全くギャグとは思ってないです。自分自身がそのニーズを感じている立場だったので。まだサービスが全然流行っていない頃、彼から「ギャグだよな」という話をされた時に「いや、これは絶対必要なサービスで、NHKの『クローズアップ現代+』とかに出るレベルだぞ」っていう話をしていました。

その時は「出るわけないだろ(笑)」って彼は笑っていましたけど、結果実際に出ましたしね。

NHK クローズアップ現代+

岡崎:僕はこれからも変わらずギャグ発信をしていきます。最近はオランダの学者から連絡があったり、マルタ島に住む人から依頼があったり、ギャグも世界レベルのスケールになってきています。

新野:その辺りはバランス取りながらやっていきたいですね。でも中には快く思わない人もいると思うんですよ。「自分の人生がかかった退職をギャグって言われるのか…」って。

岡崎:でも、本当はそれが大きな間違いで、人生なんてかかっていないんですよ。退職一回ぐらいで。

新野:「人生なんてかかってない」というのはキーワードかもしれませんね。なんで辞められないか、という理由のひとつに「ここでミスったら人生終わる」みたいな心理もあると思うんですよね。ただ、一回仕事を辞めたくらいでは人生は大きく変わらない。

岡崎:普通に生きていたら、人生がかかることなんて滅多にないです。失敗は良くない、っていう考え方があって、「退職はひとつの失敗」だと考えちゃうのかもしれないですね。「仕事が続けられなかった根性がない自分」っていう風に思ってしまうんですかね。

新野:特別、責任感がある人だけではなく多くの人がそう思ってるので、社会に刷り込まれた思い込みですよね。自分で根性論を持ち出してきちゃう。

自分に合った職場との出会いは「奇跡」

岡崎:仕事を辞めることを相談する相手がいない人もいるんでしょうね。多くの人が仕事はある程度の期間続けることが正解だと思ってるから、相談する相手がいない。「辞めることは何の問題もないよ」って思っている人も一定数いるはずなんですけど、そういう相手はなかなか見つからない。

我々の親世代も終身雇用でずっと働いてきたので、相談しても「3年は頑張ってみよう」と言う人が多いだろうし。

新野:僕も2社目の会社を辞めたことをずっと親には言えていなかったんですけど、親が辞めたい気持ちを潰してしまっているパターンはあると思います。親世代は「どんな状況でも頑張りなさい」っていう人が多いので。

—会社を辞めることで気持ちが楽になったり、と何かが変わったり、ということはありそうですね。

岡崎:会社に入ってみて、合わなかったらすぐに辞める、くらいのスタンスでいく方がいいのかもしれないですね。

新野:これは入社したばかりで「今辞めると自分は人間としてどうなのか」と考えてしまっている人に特に言いたいんですけど、世の中に数え切れないほど会社がある中で、ひとつ目に選んだ最初の会社が自分と合うということ自体が奇跡なんです。合わないのは当たり前。だから全然辞めていいし、もう一度自分に合う職場見つけようよ、って。

岡崎:職業柄、「ブラック企業を見分けるコツはありますか?」と聞かれることが多いんですけど、正直それは入ってみないとわからないんですよね。イメージとか労働条件とか全て良くても、上司が一人とんでもない人間だったら、それで職場が地獄になってしまう。

新野:僕自身も経験がありますが、そういうケースは非常に多いですね。結局は部署と上司次第なんです。残念だけれども、会社として全員が同じ方向を向いているなんてことはまずない。

—必ずしも超ブラックでなくても自分に合わないことはあるし、ポジティブに仕事を辞めてもいい、ということですね。さらに言うと、ホワイトな会社でも社員は辞めるということを表すかのように、この間はEXITでも退職代行を使う人がいたと聞きました。

新野:僕らとしては、こういう仕事をやっていることもあって「日本一ホワイトな環境を作ろう」と日頃から考えています。意見を言いやすい雰囲気を作って、フラットな関係を心がけて、出社日は週1。それでも退職代行サービスを使った人間がいて、うちの会社で退職が言いにくいなら、退職を伝えやすい環境を作るなんて不可能なんじゃないかなと。

岡崎:会社の人が良い人すぎて申し訳ない、という依頼もあるので、どんなに気をつけても言い出しにくければ代行サービスを使う人はいますよ。

新野:よくTwitterとかで「こういう大事なことを自分で言えないやつは今後も言えない」みたいなことを言われるんですけど、言える言えないというのは、あくまで状況で。たまたまそういう状況だったから、言えなかっただけ。

—今後、EXITのサービスを通して、世の中をどのように変えていきたいですか?

新野:利用者をどんどん増やして、退職の苦しみを味わう人が世の中からいなくなってほしいですね。「退職代行EXIT」が当たり前の世界になれば、そういう人はいなくなるし、最終的にはブラック企業の根絶にもつながると思っています。

岡崎:その先には「EXITなんて使わなくても良い」「自分で辞められるから、お金払う必要なんてないよね」といったように、いつかは世の中の空気が変わって欲しいですね。

ただ、すぐにはならないと思うので、まずは辞めるのは悪いことじゃないし、小さな理由で辞めることをためらうのはバカバカしいってことに、多くの人に気づいてもらいたいです。その上で、うちのサービスがそのきっかけになればいいなと思います。

退職代行EXIT サービスサイト
https://www.taishokudaikou.com/

会社公式サイト:https://exitinc.jp/
オウンドメディア「REBOOT」:https://reb00t.jp/

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