- 2019年05月29日 21:20
川崎19人殺傷事件で浮かび上がった「8050問題」の深刻さ
2/2清川記者は「8050問題」を自分の記事の中で以下のように定義している。
出典:朝日新聞デジタル(2017年12月30日)ひきこもり29年目 親子の孤立「このままでは共倒れ」「老老」でも「独居」でもない親子の深い孤立。80代の親と50代の子の世帯の困難という意味で、「8050(はちまるごーまる)問題」と呼ばれる。
清川記者が書いた「困難」は、生活苦などもあるだろうが、その他に場合によって「暴力」「病気」「介護」「認知症」など、様々なケースが考えられる。
清川記者は「8050問題」を平成という時代との関連で以下のように書いている。
「8050問題の背景には、明らかな社会構造の変化がある。その深刻化は、家族と雇用の標準形が崩れていった平成という時代を投影している。自己責任と切り捨てられる課題ではない」
「ポスト平成に向けて、8050問題の実態をまずは正確につかむこと。そして家族問題という私的領域から社会で対応する公的な課題に引き上げていく議論が求められる」
(朝日新聞社「Journalism」2018年4月号「『8050問題』という危機 家族の『標準』崩れた平成」)
8050問題は、「親子」の問題に限らない。今回の岩崎容疑者の場合に、どのようなケースでおじ夫婦の家に同居するようになったのか今後明らかになってくるだろうが、必ずしも「親子の同居」というパターンだけでもないのではないか。
さらにいえば介護や生活困窮の問題が深刻になってきて、「引きこもり」の後ろめたさもあって周囲から孤立してますます支援を求めにくくなってしまうという負の連鎖が進んでしまうのではないのか。
今回、事件を起こした岩崎容疑者に対して川崎市が間接的に接触しようとしたところ、「引きこもり」という言葉に本人が反発したため断念したという報道もある。川崎の事件については、容疑者の住んでいた家に対して、福祉や医療などの観点からの「支援」がどの程度行われていたのか、何が可能だったのか、今後検証する必要がある。
もちろん、容疑者の生活の背景に日本で広がる「8050問題」が横たわっていると言ったからといっても、それだけで今回の無慈悲な犯行の説明にはならないし今回の犯罪を正当化することになるわけでも同様の問題の解決や防止につながるわけでもないことは明らかだ。
とはいえ、こうした残虐事件が起きるたびに犯人憎しだけだとともすれば軽視されがちなこうした「社会問題」についても私たちは目を背けることなく正視していく必要がある。
全国にいる「引きこもり」の数は、全国で54万人(2016年内閣府調査)いるとされるが、これは39歳までの数で40歳以上はカウントされていない。上記に引用したNHKハートネットによると、自治体の調査では「40代以上の引きこもり」が半数以上、あるいは7割に及んでいる自治体もあるという。専門家は全国的な傾向だと断言する。
出典:NHKハートネット 「8050問題」とは? 求められる多様な支援長期高年齢化というのは全国的な傾向にあるのではないかと思います。
そうだとすれば、少なく見積もっても40代以上の引きこもりは54万人の倍以上、おそらく100万人以上の引きこもりが日本国内に存在することになる。
こうした人々の社会的な孤立にどうやって対処するのか。
清川記者が指摘するように、この問題は「平成」という時代に顕在化した。そして「令和」という時代に入ってますます深刻化しているのである。だとすれば、いったい全国に何人の「長期化した引きこもりの人」が存在するのか。その人たちは今、どのような環境で生活しているのか。その実態を把握することが急務ではないか。
「8050問題」への対応が必要性を増していることを今回の事件は物語っている。
「令和」という時代に入って、間もないタイミングで「8050問題」を背景として事件が起きてしまったことを、メディアも行政も政治も真剣に向き合っていく必要がある。
岩崎容疑者の生活状況がどのようなものだったのかはこれから次第に明らかになっていくはずだが、彼と同じように40代、50代になっても高齢者の家にパラサイトするしかなくて、孤立している「引きこもり」の人たちが大勢いるのだから。
テレビで報道される岩崎容疑者の顔写真は、中学時代のままだ。同じように家に閉じこもったままの人たちについて、緊急に調査をすべきだ。
※Yahoo!ニュースからの転載



