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居眠り運転の恐怖

今回の高速夜行バスの居眠り運転事故は、起こるべくして起きたものだと思う。人間の能力は、その程度だと思った方がいい。長く自動車を運転している人で、眠気を感じて危ないと思った経験がない人は、ほとんどいないだろう。自分の判断で車を止めて仮眠することのできないバスの運転士だけが例外ということは、ありえない。

私は運転歴60年になるが、居眠りで危なかったことが少なくとも2回はある。一度は徹夜明けの早朝に、気がついたら国道の右側を走っていた。まだ対向車もない時間だったおかげで事なきを得たのだが、本当にぞっとしたものだ。もう一度は高速道で、やはり車線を外れて区分ペイントをタイヤが踏んだ音で気がついた。だから無理せずに眠くなったら路肩に停車してでも仮眠するよう心がけてきた。しかし仕事として客を乗せたら、それができない。

タクシーでも危ない運転手に乗り合わせたことがあり、別な乗車のときベテランらしい運転手にその話をしたら、「そういうとき黙ってちゃ命をとられますよ。声をかけて車を止めて、運転手に外を一回りさせたらいいんです。」と言われたことがある。自分の経験からの助言だったのだろう。

今回も、運転席に近い乗客は、運転士の状態に気づいていたということだ。運転士に話しかけるのは禁制ではあるが、この場合は「運転士さん、眠いんですか」と声をかけていたら、相手はハッとして気を取り直したに違いない。ただしその乗客に責任があるということでは、全くないけれど。

電車や機関車の運転士も、今は一人乗務が当り前になってしまった。時々停車すべき駅を通過してしまったトラブルなどが起きるが、たぶん居眠りが絶無ということはないだろう。ただし信号無視にはATSによる緊急停止などの安全策があるから、バスよりは安心とは言える。しかし「湘南電車」が走り始めたころ、電車の運転席にも助士が乗っていて、二人で信号の指差し呼称をしていた時代が懐かしい。

長時間運転すれば疲れて眠くなることがある。人は眠りに落ちるときはそれを意識しないものだ。より安全にするための方法が、これからいろいろ議論されるだろうが、人間に無理な仕事をさせれば破綻するということを、共通の認識にするしかない。

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