- 2019年05月29日 08:51
ファーウェイ問題と米中貿易戦争、米国が圧倒的に優位に
2/2中国は25%関税➡対米輸出急減には耐えられないだろう
これに対して中国の影響は甚大である。トランプ氏が主張するように中国経済は25%関税に耐えられないのではないか。中国の対米輸出は20%と少ないが、中国の対米経常黒字は4011億ドル(米国GDP比2%)と巨額。中国の2018年経常黒字は491億ドル(貿易黒字は3952億ドル、内対中黒字は4193億ドル)なので、中国の外貨源泉はもっぱら米国輸出によって稼がれていると言ってよい。よって対米輸出の急減は直ちに中国に外貨不足を引き起こす。

危険すぎる中国の二つの外貨プレー
中国は世界最大の外貨準備を誇っているが、実はそのほぼ半分を海外資本に頼っており、外貨事情は驚くほど脆弱である。それまで巨額であった対中資本流入は2015年以降激減しており、中国は潜在的外貨不安下にある。その中国において、対米貿易黒字大幅減を許容する余地はない。関税引き上げが実体経済に影響を及ぼさないうちに、譲歩せざるを得ないだろう。対米貿易黒字急減➡外貨準備の急低下・中国企業のドル調達不安、は中国が何としても避けねばならないアキレス腱であり、放置できるわけはない。
またドル調達に根源的リスクを抱える中国は、二つの外貨プレーは危険すぎて手を出せないだろう。第一は米国の制裁への対抗としての米国国債の売却である。それは国内貯蓄潤沢で米国債投資需要が強く、長期金利が低下している米国に対してはほとんど響かない。他方で中国企業のドル資金調達などにマイナスの影響が出てくる可能性が高く危険すぎる。第二は人民元の切り下げである。中国人民銀行が人民元安容認をちらつかせれば、投機家の人民元売り投機の火をつけかねない。
中国はメンツを保ちつつ譲歩を余儀なくされよう
つまり、中国は米国の要求を受け入れ、不公正是正を制度的に定めたうえで米国に対して制裁関税の引き下げ、撤廃を求める、ということになる可能性が大きい。中国の巨額の対米貿易黒字はいずれ大きく減少せざるを得ないが、それが直ちに起きれば深刻な危機を招く。それを回避するためには、譲歩せざるを得ない、ということである。
中国政府がどう反応するか、市場の懸念は大きく高まっている。ファーウェイに対する制裁が出された段階で、レアメタルの供給抑制を示唆したり、反米キャンペーンを展開させたりしている。トランプと習近平は折り合えるのか、不透明感が増している。しかしトランプ氏はディールメーカーなので落としどころは考えているかもしれない。中国の景気見通しは米中双方の出方によって大きく変わってくる。
米国の狙いはフリーライドによる中国の台頭抑制であり、中国経済の崩壊ではない。中国の譲歩のあとには大きな景気の山が待っているのではないか。米中通商協議が合意されれば、需要の押上げ効果も起こり得る。貿易戦争による見通し難により、昨年末に中国での設備投資が一旦ストップしたが、懸念された米国・中国の最終需要減少の可能性はほぼなくなった。となると、投資の一旦停止はこれからの供給力の鈍化をもたらすわけで、将来的には需給ひっ迫の可能性を高める。昨年クリスマスのボトム比40%上昇した米国半導体株価(SOX指数)が昨年最高値水準で高止まりしているのは、そうした可能性を織り込んでいるとも考えられる。米中の経済が浮揚感を強めれば、それに輸出している日本やドイツ、韓国などの景気も押し上げる。

ほぼ最悪シナリオは織り込まれた
米国も中国も貿易戦争と覇権争いが激しくなればなるほど、自国の株価を引き上げ、それによって信用創造と需要拡大を行い、その結果として世界経済におけるプレゼンスをより高めるという方向に向かわざるを得ない。米中通商協議の合意を前提に、米国と中国の株価が1~4月に突出して大きく上昇した。その趨勢は一旦遮断されたものの合意の形成がなされれば、再度復活するのではないか。このように米中貿易戦争がもたらす帰結は、最終的には世界経済の悪化や資産価格の下落ではなく、逆にむしろ株価と経済を押し上げることに結びつく可能性が高いだろう。
制裁関税とファーウェイ問題で米国の最大限の強硬対応は一旦出尽くしただろう。この二つの問題に関して最悪の展開もほぼ見え、世界の株式市場もそれを織り込んできた。となれば株式市場は、大底圏に到達したといえるのではないだろうか。



