- 2019年05月28日 11:15
人事が語る「社内不祥事」情状酌量ライン
2/2情状酌量してもらえるケース
――犯罪を揉み消す場合もありますか?
【サービス】就業規則の「会社の信用を著しく傷つける行為」とは、要するに犯罪が「外部に漏れて会社の名前が出た場合」という意味だ。たとえばセクハラでも「私、お尻を触られました」と、労働局に訴えたり、裁判沙汰になれば会社の名前が出るのでアウト。懲戒解雇もありうる。表に出なければ異動させるなどの処分で終わる場合が多い。要するに外部に漏れなければ甘い処分もある。
【食品】たとえばグループ企業の社員が痴漢行為をしたとか、暴力行為で警察沙汰になった場合、一般社員と幹部社員とで対応が違う。部長クラスが私的時間内で痴漢行為や児童買春で新聞に名前が出れば「会社の信用を著しく傷つける行為」として懲戒解雇にする。だが平社員が痴漢の容疑者になり、本人が否認している場合は事実が確定するまで処分は下さない。揉み消すわけではないが、会社として公表することもない。
【IT】うちでは人事部が懲罰委員会の資料をつくる。そのときに「情状酌量の余地があるか」を記載する欄がある。たとえば会社のためにやった、会社のお偉いさんの指示を受けてやったことがわかれば酌量の余地がある。その場合に懲戒解雇ではなく、出勤停止、あるいは減給にしようということはあるね。そうではなく私利私欲のために片棒を担いだとなれば酌量の余地がない。これは過去の犯罪事実に即した罰則を科すことになる。
【サービス】たとえば組織ぐるみで会社の金を使い込むなどの業務上横領をした場合、間違いなく懲戒解雇になる。だが、下っ端の社員が言われるまま帳簿の操作をした場合、諭旨解雇にとどめるケースもある。懲戒解雇になると退職金は出ないが、諭旨解雇は出る。恩情というより外に情報を漏らさないための口止めの意味もある。本人にも「おまえは悪いことをしたが、退職金を払っているからやったことを辞めてから言うなよ」と念押ししている。
【IT】ゼネコンの談合ではないが、明らかに会社のためにやった違法行為は最も軽いけん責程度にとどめ、ほとんど許される。社内的にも「彼はちょっとやりすぎたな」という程度。世間とのギャップはあるだろうね。
【サービス】揉み消しは会社の大きさと強さによってはやるだろうね。たとえば現場の作業中に死亡事故が発生しても表に出ないケースもある。マスコミも抑えられるぐらいの力を持っている企業もある。
【IT】他の大手企業では警察署、消防署、税務署など署のつくところのOBを天下りで入社させているところもある。情報を収集したり、問題が起こったときは、OBが一本電話をかけてお目こぼしをお願いしたり、マスコミに出ないようにすることもあるらしい。
社内不倫の噂が!そのとき人事部は
――社内不倫など異性関係の不祥事の処罰はどうしていますか。
【食品】これまで社内不倫で処分したことはない。妻子持ちの男性社員が社外で不倫をしている場合はそれほど問題にしない。つまり私的時間内の非違行為なのか、社内の秩序を乱す行為なのかに分けて考えている。仮に某部署の部長と秘書役の女性が不倫をしているのを見たという通報があった場合、そのことを職場の誰もが知っていて、嫌な思いをしていれば調査に入る。不倫の事実が判明し、部長の信頼が職場で失われていれば役職の剥奪や降格の処分をすることになるだろう。
【サービス】噂になっている程度だったら何もできない。職場内の不倫が周囲に知られていても問題にすることはない。ただし、業務に支障を来すようなことがあれば別だ。痴話ゲンカ状態になっているとか、奥さんから電話がかかってきてから、初めて動き出す。
【製薬】役員に昇進させる場合は、特に異性がらみの“身体検査”はチェックするようにしている。素行調査をするのはなかなか難しいが、外部の調査機関に依頼している。

――処罰を受けたら出世にも影響しますか?
【IT】昇進に影響するかどうかは会社のルールによって違う。たとえば罰則によって禊の期間を2年、あるいは5年に設定し、その期間は昇進させないという会社もある。うちは明確なルールはないが、昇進の可能性があっても、昇進候補者から1回は外すことにしている。
【食品】いったん処罰を受けても敗者復活も認めている。部下の不祥事の管理責任を取って降格されても、その後に実績を積み上げれば昇進も可能だ。だが罪によっては人事上ゼロになるわけではない。得意先と契約上のトラブルを引き起こし、降格になった社員もいる。2回、3回と繰り返せば処罰も重くなる。
【製薬】処罰されたら本来は昇進にも歯止めをかけるべきだ。だが、人事のデータベースにどれだけ賞罰が記録されているかは企業によって異なる。うちの場合は各事業本部付の人事担当がいて、事業本部の人事で昇格・昇進させるときに本部長に対し「この人は10年前にこういう処罰を受けた人です」と、過去の処分歴について具申することにしている。
【食品】じつは役員に昇進する場合は社外役員で構成する指名委員会の審査を受ける。その際に「過去の処分歴」の資料も提出する。たとえばけん責や出勤停止、減給など3つも4つもある人は「この人は大丈夫か」となるだろうね。
【サービス】役員の要件に「能力、実績。品格・人格が優れている」とある。もし女性関係が乱れている人であれば、とても品格があるとはいえない。もし、将来の役員候補と言われている管理職がいれば、人事から「身辺整理ぐらいちゃんとやっておけ」と言うだろうね。
(ジャーナリスト 溝上 憲文 写真=iStock.com)
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