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落とし所としてこれしかなかった判決とますます進行するメディアのビョーキ

本や雑誌を読んでいて、時々、「うまいなあ」と思う原稿がある。
もちろん「うまい」にもいろいろな種類があるわけだが、私が反応するのは、きわどい内容をギリギリの線で書きながら、しかしなおかつ、どこから突っつかれても大丈夫という書きようをしているライターの原稿を読んだ時だ(ちょっとわかりにくいけど)。

さて、陸山会の小沢判決。
私はこれまでの経緯を考えると、ひょっとして有罪もあるかも、、、と思っていたが、蓋を開けてみれば無罪という至極真っ当な判決が下った。
2009年3月以来の小沢vs.検察の流れをきちんと捉えていれば、この結論は誰にでも腑に落ちるものだが、その当りまえの結論が当たり前に出るかどうかが不透明だったところに、この国が抱える本質的な問題点が潜む。

私は今回の裁判長がどのような人物かは知る由もないが、おそらく無罪判決を書くには相当なプレッシャーがあっただろう。
一人のまともな法律家としてみればどう考えても無罪。
しかし、自らが身を置く世界をぐるりと見回した時、その当たり前の帰結そのまま文字にするのはためられわれたはずで、そこらへんを郷原信郎氏は、以下のようにツイッターでつぶやいている。

@nobuogohara
小沢氏無罪。あまりに当然の判決だが、その「当然の判決」をすることが、大善裁判長ら3人の裁判官にとっては、とてつもなく大変なことだったのだろうと思う。主文を2回読んだ裁判長の気持ちもよくわかる。裁判官としての矜持に敬意を表したい。

@nobuogohara
今日の「八方美人的判決」の評価は難しいが、おそらく、まず無罪という結論を決め、それをどのように社会的に受け入れ可能なものにするか苦心惨憺した末に、あのような内容になったのだと思う。「小沢排除」の政治的、社会的圧力が高まる中、刑事裁判の最後の良識を守ったと評価すべきだ。

無罪判決以後、マスメディアは鬼の首を取ったように「判決は、小沢氏の政治団体の政治資金収支報告書の内容はうそだったと認めた。」と横一列で書き立て、限りなく黒に近いグレーなのだから「説明責任を果たせ」とわめきたてている(カッコ内はいずれも朝日新聞社説)。

やれやれという他はない。
そもそも、ここに至る発端は、政権交代が確実とされた2009年の衆議院選挙直前、次期総理大臣の最有力候補だった小沢一郎の秘書である大久保隆規氏を検察が政治資金規正法違反で逮捕したことだった。
これが「西松事件」なわけだが、当時、検察側の代弁者としてメディアに出演していた宗像紀夫(元東京地検特捜部長)でさえ、これは入口であって、その先に大きな疑惑があるはずと言っていたものだった。
ところが検察は結局、大久保氏を政治資金規正法違反でしか起訴することができず、しかもその公判は検察側の証人が検察の主張と真逆の証言をして吹っ飛んでしまった。
そうして浮上してきたのが、「陸山会事件」なのである。
まあ、これ以上、私がクドクドと書いても仕方がないので、以下の田中良紹氏のエントリーを読んでいただきたいが、田中氏も書いているがごとく、公判の中では「会計学の専門家である筑波大学の弥永真生教授は石川議員の作成した政治資金収支報告書は虚偽記載に当らないと証言」しているのだ。

・田中良紹の「国会探検」
政治的事件の政治的判決

話を戻すと、今回の判決というのは、郷原氏がつぶやいているように、無罪という後世の評価に耐えうる結論を出しつつ、田中氏が言うところの政治的な部分にも十分に配慮したもので、苦し紛れといれば苦し紛れだが、落とし所としてはこれしかなかったのだろう(ちなみに、この「限りなく黒っぽい無罪」判決が出ることを事前に予想していたのが、八木啓代さんだった)。
であれば私はそれはそれで、うまい判決だと思う。

もっとも、この判決でマスメディアのビョーキはいよいよもって進行している。私はすべてを見ているわけではないが、偶然見た天声人語は以下のごとくであった。


 政治を動かした判決といえばやはりロッキード事件だろう。1983年秋、東京地裁は田中角栄元首相に有罪を言い渡し、闇将軍が表舞台に戻る日は遠のいた。約1年後、田中派の重鎮竹下登らは、分派行動ともいえる創政(そうせい)会の旗揚げへと動く▼だれの時事漫画だったか、元首相が「ああせいこうせいとは言ったが、そうせいとは言っとらん」と嘆く傑作があった。田中は心痛と深酒で脳梗塞(のうこうそく)に倒れ、失意のうちに影響力をなくしていく▼さて、この判決は政治をどう動かすのか。資金問題で強制起訴された小沢一郎氏の、無罪である。大まかな経理処理の方針は承知していたが、うその記載を巡る秘書との共謀までは認められないと▼小沢氏は折にふれ、「今後は一兵卒で」と殊勝な言を重ねてきた。くびきを解かれた兵卒が見すえるのは、秋の代表選か、集団離党や新党か。消費増税の前途多難といい、野田首相は頭が痛かろう▼民主党は、各自の当選を目的とした非自民の選挙互助会でもある。にわか作りの公約が破れ、政策や手法が敵方に似てくるほど、小沢流の原点回帰は説得力を増す。首相の使い捨てが続く中、「なれたのにならない」政治家の凄(すご)みも無視できまい。だが顧みるに、この人が回す政治に実りは乏しかった▼若き小沢氏は心ならずもオヤジに弓を引き、創政会に名を連ねた。以来、創っては壊しの「ミスター政局」も近々70歳。「最後のご奉公」で何をしたいのか、その本心を、蓄財術とともに聞いてみたい。

この原稿を書いているのは、本当にプロの記者なのだろうか?
「この人が回す政治に実りは乏しかった」そうだが、ニセメール事件でボロボロだった民主党を見事に立て直して政権交代を実現したのは、圧倒的な実りではないのか?(でなければ、この筆者にとって政権交代は実りとは真逆のものだったのだろう)
無罪判決後も、その本質を見ようとせず、すべてを政局に結びつけて報道する朝日新聞社こそが「ミスター政局」集団ではないのか?
小沢一郎が「最後のご奉公」で何をしたいのかがこの筆者にはわからないらしいが、それは「国民の生活が第一」という政権交代の本義に戻すことであって、そんなことは私にでもわかる。
そして「蓄財術とともに」という形容。
何の工夫も伏線もなく、ただ思考停止した人間が、感情のままに書きなぐった原稿など、ただのクズ原稿でしかない。

私は最近、愛聴している「久米宏ラジオなんですけど」で唯一不満なのは、一部のコーナーで朝日新聞が
スポンサーになり、天声人語がどうしたこうしたというCMが入ることだ。

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