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立ち往生したトランプ“ビッグディール”外交 - 斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)

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北朝鮮核問題

「北朝鮮の核の脅威は取り除かれた」―トランプ大統領は昨年6月、シンガポールでの金正恩氏との史上初の首脳会談終了後、その成果を高らかに歌い上げた。そして、北朝鮮の非核化プロセスを加速させるため、今年2月、ベトナム・ハノイでの第2回首脳会談に臨んだ。

ところが、米側がいきなり核施設、科学・生物兵器およびミサイル関連施設の完全廃棄を求める一方、北朝鮮側が期待していた対北朝鮮経済制裁の大幅緩和については何ら回答しなかったため、結局双方の主張の大きな隔たりを露呈したまま、何らの合意文書も発表することなく、会談は物別れに終わった。

トランプ大統領がそもそも、第1回首脳会談終了後、「北朝鮮の完全な非核化」を成果として誇示した背景には、北朝鮮側の真の意図を読み違えたことが多分にある。北側の主張する「完全な非核化」は最終目標であり、そのためには朝鮮戦争「終結宣言」、在韓米軍の撤退、北朝鮮の体制保証が大前提であることはいうまでもない。これらの条件が満たされるまでは、当面の措置として、これまで核開発の重要拠点のひとつだった寧辺核施設の廃棄を提示することで、米側から経済制裁面での譲歩を引き出すねらいだった。

しかし、トランプ大統領は第2回会談で成果を急ぐあまり、寧辺以外のすべての核施設の申告と査察、さらに現存する核弾頭引き渡しまで要求、この時点で、北朝鮮側が態度を硬化させ、会談は行き詰ったまま、予定より早く終了した。

その後、トランプ大統領は第3回会談開催についてもいぜん意欲を見せているものの、開催時期、場所などをめぐる双方の協議は何の進展も見られない。

最大のネックは、トランプ大統領が当初から、金正恩氏とのトップ会談で、早期に国交正常化し北朝鮮に対する将来の大規模経済援助、開発支援の用意といった明るい未来展望を示すことで「完全非核化」の約束をとりつけるという「ビッグ・ディール」をもくろんでいた点にある。

ところが、金正恩体制は実際は、金日成時代からあらゆる困難を乗り越え開発にまでこぎつけた国家存亡のカギを握る核兵器を放棄する用意がまだできていないことが、しだいに明らかになって来た。

それでも、一方のトランプ氏が性急な「完全廃棄」にこだわる以上、今後、双方が歩み寄る余地はあまりなく、このまま当分こう着状態が続く可能性は大きい。

ベネズエラ

南米ベネズエラのマドゥロ独裁政権と反体制リーダー、グアイド国会議長勢力との対立が激化して以来、半年余り経過したが、混迷は深まる一方だ。

去る4月30日、トランプ政権が支持するグアイド側の一部市民グループが、政権転覆図り“武装蜂起”したが、失敗に終わった。マドゥロ大統領は騒動鎮圧後、「クーデターは粉砕された。加担した政府・軍内部の容疑者は逮捕し、厳罰にかける」とテレビ放送を通じて宣言、前秘密情報部長ら事件、関係者を指名手配したことを明らかにした。

同事件以来、反体制政治家、軍人たちの逮捕・緊急避難があいついでいる。これまでに、マドゥロ氏につぐナンバー・ツーのアメリコ・デ・グラシア氏が在カラカスのイタリア大使館に、ナンバー・スリーのリチャード・ブランコ氏がアルゼンチン大使館に、一握りの軍人たちがブラジル大使館にそれぞれ逃げ込み保護を求めた。エドガー・ザンバロ国会副議長ら一部の有力政治家は今月に入り、逮捕されたという。

これに対し、グアイド氏を事実上の「大統領」と公認したトランプ政権は、対ベネズエラ経済制裁強化に乗り出しており、さらに今月15日、アメリカ―ベネズエラ間の旅客・貨物飛行便のすべてに運航停止命令を出した。

一方、アメリカと対立するロシアは現政権に対する軍事テコ入れのほか、経済・医療物資援助などを活発化させているほか、ロシアの“衛星国”キューバは1万5000人規模の軍人を駐留させ、ベネズエラ軍の兵站支援を続けている。

ポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官らトランプ政権強硬派は「軍事行動も選択肢のひとつ」として介入の可能性も示唆しているが、実際に大量部隊を投入した場合、ベネズエラ国内が大混乱になりかねず、トランプ大統領自身も、強気の姿勢をツイートなどでちらつかせる一方、軍事介入には慎重な構えを崩していない。

アメリカの“庭先”で起きている国際的事件でも、トランプ外交は次の有効な一歩を踏み出せず、足踏み状態が続いている。

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