
Japan In-depth編集部(高橋十詠)
【まとめ】
・バングラデシュの子供達「自分の国をどうにかしたい」との思い。
・私達の幸せを押し付けることは彼らの幸せを奪うことにつながる。
・これからもこの子たちの存在を伝えていきたい。
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(前編の続き)
バングラデシュを旅した目的として、サヘルさんは、子どもたちの現状をみて、可哀想に思い資金を渡して応援するのではなく、「あなたたちには可能性がある、”生まれてきてよかったんだよ”ということを伝えたい」と話した。
社会に立ち向かう為には、しっかりとした教育を受け、学び、知識で這い上がることができることを見せることだというのがサヘルさんの考えだ。
「ここで終わらずに、親のためにもアカデミーを卒業して、自信と誇りをもって社会に出てほしい。」とサヘルさんは子どもたちへの願いを語った。
人の記憶、心に何かを残すというのは、触れ合いが大事だと言うサヘルさんは、今回の旅で「自分の経験を誰かにに伝えることで、苦しみを苦しみだけで終わらせず、永遠に変えることができる。今までの辛い経験も、この子たちに伝えるためのものだったと思えた。」と述べた。

■ 幸せを感じる“時”
人は様々な感情を抱く。彼らの感情は、日常のどのような場面で動くのだろうか。
サヘルさん曰く、彼らが夕日を見ているとき、「その日をきちんと終えることができた」という安堵に近い感情に満ちた表情をするそうだ。その日その日を無事に生きていることが、とても幸せそうなのだという。
「彼らは、地べたで寝る環境でも、お風呂がなくても、その中で”側に居る家族のために生きている”という幸せを噛み締めている。一方で私たちは、家に帰ると仕事などに追われていたりして、自分のことで精一杯。周りをみる余裕がないことが多い。でも、彼らは常に家族第一。」と、サヘルさんは日本人と現地の人との日常感覚の差を話した。
■ 感情が動く“時”
家族の話をすると悲しい目をする子が多いという。「今、自分の親はどうしているのだろう。いつかこの状況から救いたい。」そういう思いが、子どもたちの心を少し感傷的にさせる。そんな子どもたちが笑顔になる瞬間がある。それは、無邪気に全力で遊んでいる時間だ。また、夢の話をすると、誰もが強い思いをみせるという。
「誰に聞いても、何になりたいのか、その理由まで明確。特に政治家や、警察、医者が多く、”現状を変えたい”、”この国に生まれて良かったから、自分の国を救いたい”という思いがあり、非常に愛国心が強い。」とサヘルさんは話した。
子供たちが詩で表現するのは、「自分の国をどうにかしたい」という内容が多いそうだ。

サヘルさんは、「日本は、自国に希望を抱いている若者が比較的少ないように感じる。先進国に出て行く人たちも多く、それは他国と自国を比較し、憧れをもったりするからかもしれない。それに対しバングラデシュの子ども達は、良い意味で世界を知らない。だから、あの子たちにとっての居場所はここ。自分たちが生まれ育った場所を、生活環境を、家族のためにも変えたい。それができるのは、自分たちだという意識があるのではないか。」と述べた。
つまり、「他国と比べ、自国が劣ってると感じるから変えたい」のではなく、「どことも比較していないからこそ、自国をよりよくしたい」と自然に思うということなのだ。