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米中の覇権争いは「日本外交」のチャンスである〜田原総一朗インタビュー

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米中の貿易摩擦が激しさを増している。アメリカのトランプ政権が中国からの輸入品に対する関税の引き上げを断行し、中国もそれに応戦する構えを取っている。日本経済への影響も懸念されるが、田原総一朗さんは「日本の外交にとっては必ずしも悪いことではない」と指摘する。なぜ、そう考えるのか。話を聞いた。【田野幸伸・亀松太郎】

新冷戦の始まりなのか?

アメリカのペンス副大統領が去年の秋、「アメリカと中国は本格的な覇権争いをすることになる」という演説をして、大きな注目を浴びた。ニューヨークタイムズなどは「新冷戦の始まり」と報じた。これは単なる貿易の争いではない、覇権争いなのだ、と。

ペンス副大統領が話したのは、中国の習近平政権が進める産業政策「中国製造2025」はアメリカにとって大きな脅威であるということだ。

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これは、中国が2025年までに世界の「製造強国」の仲間入りを果たし、2035年までに製造強国の中位レベルに到達し、建国100年の2049年までに製造強国の先頭グループに入るという目標を掲げたものだ。

中国は経済力でアメリカを抜くことを目指している。これは大変な事態だという強い危機意識を、アメリカの副大統領が示した。そして、アメリカはそのようなことは絶対に許さないと宣言したのだ。

このようなペンス副大統領の強硬姿勢の表明は、米ソ冷戦の始まりだとされるイギリスのチャーチル首相の「鉄のカーテン」演説の再来だと指摘されている。

ただ、トランプ政権が発足してしばらくは、ここまで米中の関係は悪くなかった。米中のトップであるトランプ大統領と習近平国家主席はこれまでに何度か会談している。

まず、トランプが大統領に就任したあと、習近平がアメリカを訪問した。このとき、トランプは北朝鮮問題の解決を習近平に頼んでやろうと考えていた。

その後、今度はトランプがアジアの各国を歴訪し、中国で習近平の歓待を受けた。中国の企業がアメリカ企業から大量に製品を購入する契約も結び、トランプも習近平に好印象を持った。もしアメリカがアジアともめたら、最後は中国に頼むのがいいだろう、と。

このような経緯から、良好な関係にも見えたアメリカと中国だが、去年から雲行きが怪しくなってきた。その象徴が、昨年10月のペンス副大統領の演説だ。

中国に喧嘩を仕掛けたアメリカ

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それでも、トランプと習近平の会談によって、事態が改善するのではないか。世界はそう期待していた。ところが、トランプはいきなり、中国からの輸入品およそ2000億ドル分に対して「関税を10%から25%に引き上げる」と表明し、実行に移した。

言ってみれば、喧嘩を仕掛けたわけである。

それに対して、日本やヨーロッパの新聞は「こんな喧嘩はよくない」「慎重にすべきだ」と批判した。米中が本気で喧嘩したら、世界中の経済に悪い影響が出る、と。マーケットも否定的な評価で、ニューヨーク株式市場の株価は大幅に下落した。

ところが、そんな批判を無視して、トランプは第2弾のパンチを繰り出した。まだ追加関税の対象になっていない3000億ドル分を含めた中国から全輸入品に関税をかけると表明したのだ。

これには、日本を始め世界中が驚いた。いったい、どうするつもりだ、と。そんなことをしたら、アメリカの産業も困るだろうという批判が起きている。アメリカの国民も、輸入品の値段が上がって困るはずなのだ。

経済大国同士の喧嘩なので、米中だけでなく、世界中が影響を受ける。

日本のメディアも、毎日新聞が「果てしなき我慢比べ」と報じ、日経新聞が「米国の高関税政策はあまりにも危険だ」と論じた。

米中の貿易摩擦が激化する中で、世界中が期待しているのが、6月下旬に大阪で開かれるG20だ。

写真AC

アメリカのトランプ大統領や中国の習近平国家主席も来日する。大阪で米中の首脳会談が行われるだろうとみられている。そこでなんとか、米中が合意してほしいというのが、世界中の願いだ。

では、そんな状況の中で、日本にいったい何ができるのか。財界は、安倍首相が米中を仲裁する役割を果たせないかと期待している。

実をいうと、米中の覇権争いは世界にとって一大事だが、日本の外交にとっては必ずしも悪いことではない。

なぜなら、アメリカも中国も「日本を味方につけたい」と考えているからだ。そこで、日本政府がうまい戦略を立てることができれば、一定の役割を果たせる可能性が大きい。問題は、そういう戦略を日本が作れるかどうかである。

逆に、米中の覇権争いの中で、日本が良い戦略を持てないと、日米貿易協議にも悪影響が出る。今度のG20は、日本の外交や経済にとって大きな試金石になるだろう。

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