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メイ首相の辞任―イギリスを凋落させる有権者の「有力感」とは

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  • メイ首相が昨年11月にEUと交わした離脱条件は、イギリスが今の立場で望める最大限の利益を確保するという意味で、現実的だったといえる
  • しかし、それぞれの主張を全く譲ろうとしない離脱派と残留派の挟撃は、メイ首相を辞任に追いやった
  • 党派的イデオロギーが合理的な妥協をはねつける状況は、民主主義の模範とみなされてきたイギリスの凋落を物語る

 メイ首相の辞任はEU離脱をめぐる混乱だけでなく、「民主主義の模範」とみなされてきたイギリスの凋落を象徴する。そこには「国民が主人公」という有権者の「有力感」に潜む落とし穴を見出せる。

「合意なき離脱」へのキックオフか

 イギリスのメイ首相は5月24日、6月7日をもって与党・保守党の党首を辞任すると発表した。

 メイ首相の辞任は、本来4月12日が期限だったイギリスのEU離脱が実現できなかった時点で、ほぼ避けられなかったといえる。



 昨年11月、メイ首相はEUとの間で離脱条件に合意した。

 しかし、メイ首相が「最善で唯一可能な合意」と呼んだ交渉結果に、もともと離脱に反対の野党・労働党だけでなく、離脱を推してきた保守党からもアイルランドとの国境管理などをめぐって「ソフトすぎる」と批判が噴出。議会は離脱条件を承認できなかった。

 その結果、メイ首相はこれまで否定してきた離脱の賛否を問う二度目の国民投票にまで言及したが、混乱を収束できず、辞任に至ったのである。

 誰が新首相になったとしても、この分断と対立を克服することは難しい。そのため、ジョンソン元外相など強硬な離脱派が首相に就任した場合、最も混乱が予想される「合意なき離脱」すら現実味を帯びてくる。

合理的な妥協より党派的イデオロギー

 メイ首相の辞任はイギリスでの党派的対立の深刻化を象徴する。

 メイ首相がEUとの間で取りまとめた離脱条件は、「国民投票の結果を踏まえれば離脱せざるを得ない」イギリスの現在の立場で得られる最大の利益を確保するという意味で現実的、常識的なものだったと評してよい。



 しかし、離脱に反対する立場を1ミリも動かさない野党だけでなく、「離脱はするが、負担なしにEU市場にアクセスもする」とムシのいい主張を繰り返す保守党の急進的離脱派も、これをはね付けた。そこからは、党派的イデオロギーが合理性を押し流すあり様をみてとれる。

「見習うべき模範」なき世界

 党派対立で国内が分断され、国家としての団結すら危ぶまれる状況は、イギリスだけでなく、トランプ政権発足後のアメリカも同じといえる。

 こうした状況は、歴史の大きな転換点を示す。イギリスとアメリカをはじめとする英語圏はこれまで「民主主義の模範」とみなされてきたからだ。

 1930年代、全体主義の嵐が世界を吹き抜けていた時代も、イギリスとアメリカは議会制民主主義を保った。その結果、第二次世界大戦後の世界では、主要戦勝国となったイギリスやアメリカは「見習うべき国」と位置付けられてきた。



 例えば、日本でもいまだにイギリスやアメリカのような二大政党制を民主主義の理想と考える人は少なくない。

 実際には二大政党制は英語圏に特有のもので、欧米全体でみれば少数派にすぎない。それでも暗黙のうちにイギリスやアメリカを「到達点」、それ以外の国を「その途中」と捉える見方は政治学者にも珍しくない。

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