記事

GDPプラス成長、どうなる?消費増税 - 塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

(3283197d_273/gettyimages)

1−3月期の経済成長率はプラスでしたが、それでも消費税は上げるべきではない、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。

筆者は、積極財政論者ですが、MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)ほど能天気ではありません。財政赤字は小さい方が良いに決まっていますから。ただ、性急な緊縮財政で景気を腰折れさせてしまうリスクもあるので、それと財政赤字を続けるリスクとを比較しながら政策を決定すべきだ、と考えています。

本稿ではそうした立場から、今秋に予定されている消費税率の引き上げについて延期論を主張したいと思います。

10年待てば「気楽に」増税できるから、それまで待とう

少子高齢化による労働力不足は、今後も深刻化していく事が確実です。あと10年も経てば、「景気が良いと超労働力不足、景気が悪くても少し労働力不足」という時代になるでしょう。

そうなれば、気楽に増税できるようになるはずです。今の増税に反対論が強いのは、「政治家の人気取り」もありますが、「増税で景気が悪化すると失業が増えてしまうから」でもあります。そのうちの後者が10年経つと消えるのです。

もしかすると、恒常的な労働力不足により賃金が上がり、それが価格に転嫁されてインフレになるかもしれません。そうなると、増税が「景気を冷やしてインフレを抑え込む」と同時に財政も再建する、という一石二鳥の政策になるかもしれないのです。

それならば、何も今の時点で失業が増えてしまうリスクを冒す必要はありません。10年待ってから、ゆっくり増税すべきです。

10年待てなくても、せめて1年待って景気の先行きを見極めよう

10年も待てない、という人は多いでしょうが、その場合でも、せめて1年は待って様子を見るべき局面だ、と筆者は考えています。増税を強行する場合のリスクは以下の三つですが、1年待った場合のリスクは現在既に1103兆円ある国(日本国という意味ではなく、地方公共団体との対比で中央政府を国と呼んでいるもの)の借金残高が数兆円拡大するだけですから。

第一に、中国経済の先行き不透明感が増しています。痛みを覚悟して過剰債務問題への取り組みを始めたタイミングで米中冷戦が始まってしまったため、ダブルパンチによる大きな打撃が懸念されます。

「米国が中国から買っていたものは他の途上国から買うはずだから、他の途上国の景気が良くなり、世界経済は減速しない」というのが理屈ではありますが、タイミングのズレや投資マインドの冷え込みなどは懸念されますから、1年程度は様子を見た方が良いでしょう。

第二に、米国等で相対的にリスクが高い企業などに対する与信が増加しています。米国の景気は底堅いと思いますが、金融市場という所では「皆が不安に思うと一気に資金の引き揚げが始まりかねない」ので、高リスクな与信の急激な引き揚げには要注意なのです。

長短金利が接近していることは、金融市場参加者の景気先行き懸念を示唆しているわけですから、いつかの時点で投資家たちが景気悪化を本気で心配しはじめたら、高リスクな与信が一気に引き揚げられるかもしれません。 

そうならないことを見極めるために、最低1年は今後の推移をじっくり観察し、それから増税を断行すべきか否かを判断しても遅くはないと思います。

第三に、日本国内の景気の先行き不透明感です。現在すでに景気が後退を始めているという見方も徐々に広がりつつありますし、東京オリンピックに向けて進められてきたインフラ投資等々がピークを過ぎて来ることも予想されます。

景気が後退しつつある時に消費税率を引き上げると、駆け込み需要の反動減と景気後退が相乗効果で事態を悪化させかねません。消費税率の引き上げは、景気の足腰が強くて多少のショックがあっても景気が腰折れしないと思われるタイミングで行うべきなのです。

1−3月期のプラス成長は、景気の好調を意味せず

景気への懸念が高まりつつある中で発表された1−3月期のGDP統計は、実質成長率が前期比プラス0.5%となりました。マイナスを予想していた人も多かったので、意外感を持って受け止められましたが、内容を見ると決して良い数字とは言えません。

輸入が大幅に落ち込んでいるのです。これは、「需要が弱いから輸入が減っている」ということを示唆するものです。そうした懸念を補強する数字もあります。在庫がわずかながら増えているのです。

輸入が大幅に落ち込んだ分だけ在庫が減っていれば、「景気が悪くて輸入が減ったのではなく、輸入貨物の取り扱いが滞ったのかもしれない」と思うのですが、そうではないのです。

輸入が落ち込んでいなければ、今頃在庫が大幅に積み上がっていたかと思うと、むしろゾッとする数字かもしれません。

余談ですが、GDPの統計は、在庫が積み上がってもプラス成長として発表されます。よくあるのは、「景気が後退しはじめて在庫が積み上がったため、GDPはプラスだった」というケースです。

今回の数字も、そうなっていた可能性があるわけで、プラス成長だから景気は好調だ、とは言えないわけですね。

筆者は、景気の見通しについては強気論を唱えて来ましたし、いまでも一応強気論を唱えてはいますが、景気が後退するリスクが高まっていることは認めざるを得ません。そうであれば、わざわざそんな時に消費税率を引き上げなくても良いだろう、と考える次第です。

消費税増税分だけ景気対策をする、という選択肢もあるが

「消費税の増税は今更やめられないが、増税額と同額の景気対策を採ることで景気への悪影響を防ごう」という考え方もあるでしょう。一般論としては、それでも問題ないはずです。

しかし、今次消費税は軽減税率が導入されますし、景気対策としてポイント付与等々の面倒な事が多いと言われています。それならば一層のこと、消費税率の引き上げ自体を延期するほうが、はるかにスッキリすると思っています。

あわせて読みたい

「消費増税」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    よしのり氏「安保破棄してくれ」

    小林よしのり

  2. 2

    奨学金延滞の若者が次々と裁判に

    BLOGOS編集部

  3. 3

    日本の本気を選挙対策とみる韓国

    tenten99

  4. 4

    田原氏「麻生大臣とんでもない」

    田原総一朗

  5. 5

    彼女の生理日を知りたい男性9割

    工藤まおり

  6. 6

    海外まできて日本叩く迷惑な人々

    文春オンライン

  7. 7

    堀江氏の保育士めぐる発言に反論

    田中俊英

  8. 8

    点滴を巡る朝日記事に医師が憤り

    高山義浩

  9. 9

    LIXIL総会で株主側が異例の勝利

    川北英隆

  10. 10

    すぐバレる嘘で窮地に陥る文政権

    高英起

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。