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焦点:中国内陸部に「不動産バブル」の長い影、脅かされる繁栄の夢


[鄭州(中国河南省) 21日 ロイター] - 中国内陸の河南省で貧しい家庭に生まれ、現在はパラリーガルとして働くSong Jingyiさんが長年抱いている夢は、鄭州市に自分自身の家を持つことだった。

人口1000万人の鄭州市は河南省の省都として拡大しており、彼女は同市内の大学に通っていた。だが、住宅価格は高く、高額の頭金が要求されるため、彼女の夢は手が届きそうで届かないままだった。

鄭州市の不動産市場は2016年に急騰した。引き金となったのは、河南省のような内陸部における住宅所有と個人消費を加速させようという中国政府の取り組みだった。

結果として生じた価格高騰によって新たな富を築いた住民も多かったが、同時にSongさんのような人々を排除することにもなった。Songさんは現在25歳で、長年付き合ったボーイフレンドとの結婚を予定している。

ところが昨年11月、Songさんは魅力的な機会を提示された。国内のあるデベロッパーから、マンション購入の際に通常要求される30%の頭金そのものについても融資を受けることで一時的な負担を回避してはどうか、という提案があったのだ。

こうした仕組みはデベロッパー側から見ればリスクが大きい。そして、中国の経済成長率が過去30年で最低の水準に落ち込む中で、鄭州市の不動産市場が頭打ちになっているという警戒すべき兆候でもある。

鄭州市など地方都市の不動産市場は、2年にわたる急激な成長の後、2018年後半にとうとう転換点に達した。これによって、沿海部の富裕地域から内陸部に繁栄を広げていこういう中国政府の試みは、政策上の難問を突きつけられている。

こうした状況からは、この世界最大規模の不動産市場の扱いを巡り中国の政策担当者がどれだけ苦労してきたかも見えてくる。不動産市場は経済成長にとって重要だが、河南省の諸都市のような予想もしない場所でバブルが発生しやすくなる傾向がある。

警戒すべき兆候だとはいえ、Songさんの目には、こうした形での住宅ローンは、ようやく鄭州の不動産市場にお金を投じる絶好の機会のように映った。

彼女は2寝室のマンションを購入するため、通常の頭金の3分の1を預託金として払った。場所は、近年増えてきた集合住宅がどこまでも立ち並ぶかのように見える鄭州市の郊外だ。

だが、Songさんはまもなく、いくつかの開発物件の価格が下がりつつあることに気づいた。友人が購入した物件もその1つだ。

Songさんは長年、モノの溢れたマンションを所有する友人たちが自慢する中流階級的なライフスタイルに憧れていた。だがその一方で、まもなく弾けそうなバブルのさなかに住宅を購入するのも嫌だった。

彼女は購入中止を決意し、最終的に、預託金を取り戻すための訴訟に踏み切った。

「周囲の皆が家を持っているような気がして、強いプレッシャーを感じていた」とSongさんは言う。「多くの点で、それは偽りの豊かさという幻想だった」

<もはや「田舎」ではない>

長年にわたって静かな省都だった鄭州市は、近年、交通や物流の拠点というステータスを得て繁栄してきた。市内では台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業<2317.TW>のフォックスコンが工場を操業しており、23万人の従業員が米アップル<AAPL.O>のiPhone(アイフォーン)を製造している。

そして、この2年間、不動産市場も好況に沸いた。

新たに建設されたビジネス街では、増え続ける高層オフィスビルが視界に建ち並ぶ。高級品を売る華やかなショッピングモールが、人通りの多い市中心部のスペースを競い合うように埋めている。真新しい集合住宅は、はるか郊外にまで広がっている。

鄭州の不動産市場が上昇し始めたのは、2015─16年に中国政府が借入・融資規制を緩和し、全国的に住宅購入ブームが始まったときだ。

河南省をはじめ、内陸の各省には、住宅価格の安さに惹かれた国内各地の購入希望者が集まった。数分で完売してしまうことも多いマンションを確保するために、即金で全額払う人も多かった。

2016年、恒大集団<3333.HK>が発売した新築マンションで、40代の夫婦が涙に暮れていた。近隣の都市から車で駆けつけたのに全戸完売していた、と2人はロイターに語った。

そして、価格は上昇を続けた。

鄭州市内の高級住宅街では、伝統的な王宮のような弧を描く屋根をあしらった豪勢な別荘群が、同市北端の人造湖を見下ろしている。価格は数千万元で、1平方フィート当たりの金額ではシドニーに匹敵する。

だが不動産仲介業者らによれば、昨年9月、鄭州市の不動産市場は急速に悪化した。鄭州市では、ブームの頂点だった2016年には売れ残り物件の在庫が26.9%減少したのに対し、昨年は26.5%増加している。

全国的には、床面積ベースで見た2018年の不動産販売は、前年比で1.3%増にとどまり、前年の7.7%増から減速した。河南省では減速がさらに急激で、2017年の17.8%増の伸び率に比べて、昨年は5.1%増にまで落ちた。河南省における不動産投資額も、2018年には史上初めて減少に転じた。

不振の大きな要因は中国経済の減速だが、中国政府が、河南省などで個人消費・住宅保有の促進に取り組む一方で、不動産投機のまん延に歯止めをかけようと試み、リスクが高く混乱した金融システムの正常化を図っている結果でもある。

住宅都市農村建設省にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

<波及効果>

鄭州市における不動産市場減速の影響は、同市で7年前からインテリアデザイン事業を営んでいるZhang Chenxuanさんのような人も感じている。昨年以降、新規住宅購入者からの注文が減ったことで収入が20─30%減少した、とZhangさんは言う。

Zhangさんは、クライアントの新しいマンションに現代的な家具を設置し、グレーのセラミックタイルで装飾を施しつつ、「最近のクライアントはぜいたく志向ではなく、節約のために、実用的でシンプルなものを求めている」と語った。

「最近では顧客の8割方が、自分はとても貧しく、きちんとした内装を調えるだけのお金がない、と愚痴をこぼしている」と彼は言う。

地元の仲介業者らによれば、鄭州市当局はデベロッパーによる在庫放出を促すため、住宅購入規制を一部緩和し、新規開発物件の価格上限を廃止したという。だが今のところ、この措置や、他の都市で実施された類似の施策は、市場の再活性化という点でほとんど効果をあげていない。

鄭州市の南方、世界のカツラ生産の中心地である人口400万人の都市、許昌にも、不動産市場の減速は強い影響を及ぼしている。

鄭州と同様に、許昌でも近年は熱狂的な不動産開発・購入ブームが見られた。開発業者・購入者を惹きつけるため、市当局はカツラ製造事業を市周辺部に移転させ、スラム化した地区の住宅を取り壊すために数百億元を費やし、マンハッタンを真似た広大な「セントラルパーク」を含め、一連の人造湖や公園を造成した。

こうした取り組みによって、恒大集団や碧桂園といったデベロッパーが集まり、公園を見下ろす巨大なマンション群を建設した。

だが、熱は冷めていった。不動産コンサルタント会社の同立同成は2月、許昌の住宅在庫は「恐ろしいペースで」増大しているため、売れ残り物件の在庫は同社推定で合計970万平方メートルに達しており、解消まで約55カ月かかると発表した。

27歳のXu Boyunさん一家は、許昌に3カ所の不動産を保有している。しかし、新規開発物件で、両親が働いている国営企業の職員向けに20%の割引が提供されたにもかかわらず、今回は購入を見送ったという。

「価格は非常に有利だったが、市場はかなり冷え込んでいる。また価格急騰が起きる余地はあまりない、と両親に忠告した」

一部の開発物件では価格が引き下げられており、高値で買ってしまった購入者を激怒させている。

仲介業者らがロイターに語ったところでは、11月には陽光城集団<000671.SZ>がある開発物件の価格を15%引き下げたところ、立腹した既存オーナーらが同社の販売事務所に押しかけ、プロジェクトの縮尺模型を破壊したという。

陽光城集団はそれ以上の値下げを行っていないが、現在では自社マンション物件の「費用対効果の高さ」をアピールし、市場の低迷は「またとない購入のチャンス」であるとうたっている。

だが、許昌のような地方都市の開発物件に買い手を集めるために、それで十分かどうかは分らない。

パラリーガルとして働くSongさんにとっては、今のところ、北京のような大都市に近い安定した物件の方が魅力的な選択肢だ。

3月、Songさんとボーイフレンドは、張家口のマンションの頭金を(今度は一括で)払い込んだ。張家口は北京に近いスキーリゾートで、2022年の冬季オリンピックでは、いくつかの競技の開催地となる予定だ。

Songさんによれば、すでに投機筋がこの街を狙っているものの、それでも北京の平均住宅価格の6分の1にすぎないという。

「仮に価格が落ちるとしても、その下落幅は知れたものでしょう」と彼女は言う。

(Yawen Chen記者、Stella Qiu記者、Philip Wen記者、翻訳:エァクレーレン)

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