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投資で「確実な利益」を求めるのが危険な理由

資産運用や投資をする人が求めているものは、「安定した運用」「確実な利益」です。
「安定」や「確実」といった言葉には、「幸福」という言葉に負けない位の強い力があります。
私たちは「確実な利益」という言葉を聞けば、理性はそれを怪しいと思いつつも、本能からそちらに気持ちを持って行かれます。まるで、誰かが小銭を落とした音を聞くと、思わずそちらを向いてしまうみたいに。

今年最も話題になった投資顧問会社AIJも、毎年確実に利益をあげているというセールストークで、大きな熊手であさりを集めるみたいに顧客を獲得しました。

もちろん、初心として「安定した利益」「確実な運用」に近づこうとする努力はあるべき姿です。ただし、そこに「近づく」ことと「至る」こととは全く異なります。ゼノンのパラドックスの亀みたいに、届きそうで届かないものなのです。
もし仮に、至ったとしたらどうなるでしょうか? それは終焉を意味します。確実にお金が増える方法があったとしたら、その瞬間に資本主義経済が終わります。もう、毎月の引き落としにため息をつく必要はなくなります。
よくインターネットで「確実な投資法」が19,800円で販売されています。資本主義経済に疑念をお持ちの方は、ぜひそちらを購入して、忌まわしき資本主義を終わらせてやって頂ければと思います。

こういった話をすると「わかっています、確実はない、ということを知っています」と仰る方がいらっしゃいますが、これは言葉を遊んでいるだけか、もしくは言葉に遊ばれているに過ぎません。
自分は知っている、理解していると思い込むことが、真の意味での理解を遠ざけ、資産運用や投資での失敗につながります。
私は、今年の年末の日経平均どころか、明日の日経平均もわかりません。10年投資をしてきた経験の中には、好決算が発表されてもストップ安になった時もありましたし、悪材料が出ても材料出尽くしとやらでストップ高ということもありました。本当にわからない。それがマーケットです。

それでも、人は「安定、確実」という言葉に引き寄せられ発注します。少し傾いた床を転がるビー玉のように同じ方向へ向かいます。それ故、「安定、確実」なものには、少しばかり"過剰"に人とお金が集まります。身近な(酷い)例として、東京電力が挙げられます。多くの人が「安定、確実」を求め、東京電力の株を保有していました。しかし、放射能をうんざりするほどばらまいたことによって、株主の資産はバーンナップさせされました(ただし社員の給料はバーンナップしていない)。「安定、確実」の幻想はこれでもかというほど粉砕されました。

「不安定、不確実」の中にこそチャンスがあります。チャートを見て「こんな所で絶対買えない」というところで買うからこそ、女神が微笑んでくれます。絶対に打ってこないタイミングで放たれたパンチは当たるのです。

去年のある日、タクシーに乗り込もうとすると、とても急いでいそうな人がこちらを見ていました。当面タクシーを捕まえられそうにない場所だったので、「タクシーですか? どちらまで?」と声を掛け、乗り合うことにしました。その方が、たまたま投資の話をされたのですが、東京電力を底値で全力買いしたという話でした。「資産がない人間は、こうでもしないと増えない」と"教えて"下さいました。安定が崩れた時、過剰な買い手が過剰な売り手に回った所で、安値を買ったわけです。それもまた素晴らしい投資(あるいは投機ですね。そんな区分けはどうでもよいが)です。

どうすれば、こうした絶妙なタイミング、間合いをつかむことができるようになるでしょうか。いくら知識を身につけても、それがPh.Dになる程だとしても、心理的に買えない人では絶対に買えません。経験的に言うならば、むしろ知識は邪魔になることの方が多かろうと思います。

私たちは、まず、私たち自身が持つ「安定や確実を求める」という行動心理、バイアスをよく理解する必要があります。その上で、「安定」への依存をすり潰し、「確実」への執着から打ち離れ、不安定や不確実を本当に受容する時、大きな利益を得るチャンスを獲得します。

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