- 2019年05月25日 08:48
トランプとバノンの対中政策は正しい
1/2今日の横浜北部は快晴で暑くなりました。昼間はもう真夏並みですね。
さて、久しぶりにグローバル化論者として有名なトーマス・フリードマンの意見記事の要約です。
もちろんいつものニューヨーク・タイムズ紙のコラムですが、これはその内容がトランプ(とバノン!)に賛成しているという点で、大きな注目を集めております。
要約の下にこの内容をCNBCで語った動画を貼り付けておきますが、あの『レクサスとオリーブの木』や『フラット化する世界』などでグローバル化を賞賛していた識者が、ついに中国に対して「けしからん」と言い始めたのは、時代が変わったなぁと感じます。
そしてそれと同時に、アメリカのリベラル系の識者たちの間でも「中国許すまじ」という雰囲気になっていることが知れて参考になります。
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私の友人に、中国で働くアメリカ人のビジネスマンがいる。
この彼が最近教えてくれたのは、
「トランプはアメリカにふさわしい大統領ではないが、中国が得るのにふさわしいアメリカの大統領だ」
ということであった。
アメリカが北京との貿易関係を--中国が妥協できないほど大きくなる前に--修正する必要があると感じたトランプの直感は、たしかに正しい。
そして中国に本気であると気づかせるためには、やはりトランプ大統領のような「人間壊し屋」が必要になってくるのだ。
ところが本当にそのような人物が登場したため、米中両国はこの状況がいかに決定的な瞬間となっているのかを認識する必要があるだろう。
米中関係が始まった1970年代に現在の両国の貿易関係が決まったわけだが、それは限定的なものであった。
ところがわれわれが2001年に世界貿易機関(WTO)に中国を参加させた時のルールは、発展途上国に対して与えるような(今でも)有利な条件であったのであり、中国はそこから貿易大国となっていった。
今回の新たな貿易交渉は、両国のマーケットが完全に結びついている時に、米中が経済的な競争相手として21世紀の産業界でどのように競合していくのかを決定することになるはずだ。
よって、これは単なる貿易紛争ではない。本当に決定的なものとなるのだ。
この紛争をうまく終わらせるために、トランプはツイッターで「中二的」な中国バッシング(そして貿易戦争での勝利がいかに簡単かと語ること)をやめなければならないし、得られるだけの最適な貿易関係の修正に関する取引を静かに達成しなければならない--といっても一度にすべて修正できるわけはないはずだが--し、知らずに永遠に続く関税戦争に突入してしまうことなくやりすごすべきなのだ。
その一方で、中国の主席である習近平も、中国は過去40年間得てきた貿易面での特別な扱いをもう得ることはできないことを悟り、民族主義的な「誰も中国に指図できない」という空威張りを引っ込めて、得られるだけのウィンウィン的な条件を求めるほうが賢明なのだ。
なぜなら、北京はアメリカをはじめとする国々が自分たちの工場をABC、つまり「中国以外のどこか」(Anywhere-But-China)のサプライチェーンにシフトしてしまうことに耐えられないからだ。
これまでの状況を振り返ってみよう。
1970年代から米中貿易関係というのもの常に安定していた。つまりアメリカが中国製の玩具、Tシャツ、テニスシューズ、工具、そしてソーラーパネルを買い、中国は大豆、牛肉、そしてボーイングの飛行機を買うというものだ。
貿易赤字などが問題--中国が発展したのは、その勤勉さや、適切なインフラの建設、そして教育によってだけではなく、アメリカの企業からテクノロジーを強制移動させたり、自国の企業に補助金を出して助けたり、高い関税障壁を維持したり、WTOの規則を無視したり、知的財産を盗むなどして--になると、北京はボーイング、牛乳、そして大豆などをさらに購入することでアメリカを懐柔したのである。
それでも中国はあいかわらず自分たちのことを、世界最大の製造大国になってからだいぶたった後でも、特別な保護を必要とする「貧しい発展途上国である」と主張しつづけている。
しかしながらこの関係は、世界最大の既存の超大国であるアメリカが、次の超大国である中国の台頭の道をつくって準備し、しかもアメリカの企業がそれを十分がまんできるまでの時間しか続かなかった。その合間に、米中両国はグローバル化をともにすすめ、世界の経済状態を改善したのである。
ところがある時期になると、問題は大きくなって無視できないものとなった。
第一に、習近平率いる中国は「中国製造2025」という近代化計画を宣言し、中国の民間企業と国営企業の両方を、スパコン、AI、新素材、3Dプリント、顔認識ソフト、ロボット、電気自動車、自動運転、5Gワイヤレス、そして先端マイクロチップなどの分野で世界トップになれるように助けて行くこと約束したのだ。
このような動きは、中所得の罠から抜け出し、ハイテク分野における西洋への依存度を減らそうと狙う中国にとって、自然なものであった。ところがこれらの分野はすべてアメリカのトップの企業たちと直接競争するものであったのだ。
結果として、中国が1970年代から続けてきた、補助金による補填、保護貿易主義、貿易ルールのごまかし、テクノロジーの強制移動、知財の盗みなどは、そのすべてが欧米にとってはるかに大きな脅威となったのである。
もし欧米諸国が中国にこれまでと同じやり方、つまり彼らを貧困状態からあらゆる未来の分野で競争できるようにまでしたこれまでのやり方を、そのまま許すような事態は、やはりありえないのである。
この点に関して、トランプの判断は正しいのだ。
ただし彼が間違っているのは、貿易が戦争とは違うことをわかっていない点だ。
戦争とは異なり、貿易はウィンウィンになることがある。アリババ、ユニオンペイ、百度、テンセント、そしてグーグル、アマゾン、フェイスブック、VISAなどは、すべて同時に勝つことができる。そして実際に、これまではそうだったのだ。
私はトランプがこの点をそもそも理解できているのかどうかを疑っている。ところが同時に、私は習近平もこれを理解できているのかを疑っている。
われわれは中国側の企業が本当に優れている分野があるのであれば、それは彼らにしっかりと勝利させる必要がある。
ところが彼らも劣っている分野があれば、負けを認めるべきなのだ。もしアマゾンやグーグルが、中国国内のアリババやテンセントなどのように自由に運営できるとしたら、彼らはどれほど儲かっていたか、ということだ。
さらに、ロッキード・マーチン社のF-35ステルス戦闘機の設計図を人民解放軍が盗みだし、それをコピーして国内の会社に渡して研究開発のコストを浮かせたことによって、中国はどれほど資金を節約できたのであろうか?