記事

米中対立の新しい冷戦でまた右往左往する日本という素晴らしい令和時代がやってきました なんだろう、この「令和の時代」が迎えるハードモード。 - 山本 一郎

 トランプ大統領が中国通信機器大手のファーウェイ(HUAWEI、華為)に対する強烈な制裁を発表し、また、アメリカと中国の貿易交渉は事実上暗礁に乗り上げちゃったわけですよ。

 そりゃ貿易交渉が決裂したら、単純に世界経済が景気低迷してみんな嫌な思いをするのは当然のことですからね。それも、論評として「トランプ大統領は変な人ですね」では終わらないぐらい、実際には米中の対立というのは酷いことになっています。前任のオバマ大統領が対中国にせよ対どこにせよあまり強い態度でアメリカの立場を強調するということをしなかったものだから、中国も「おっ、アメリカはアジアの覇権には手を出さないのなら我々のものなのかな」みたいな雰囲気もあって、昨今では突然「第三列島線」とかいうハワイのところまで中国の影響下になるよ的な言論が出回り始めて言葉もないわけです。おい中国、どこまで出しゃばってくるねん。大国になった瞬間から大中華丸出しやないか。我が国ジャパンもどっぷり中華圏に入ってまうやんけ。


©iStock.com

アメリカをビッグブラザーとする世界体制の一員として

 日本国内においては、対米独立という勇ましい話もある一方、核軍備を持たない我が国の安全保障を考えたときに憲法第9条を掲げてアジアの覇権国家たらんとする中国に平和主義を説くだけでは日本の安全を守ることはできないし、日本の考え方、日本が培ってきた価値観、日本の経済力、日本人の財産や生命を守り抜くことはなかなかむつかしいでしょう、という議論はもう少し平易に世間でされるべきだと思うんですよね。

 もちろん、世界に誇る平和憲法の象徴でもある憲法第9条をしっかり守りたいという人たちの気持ちも分かります。私たちは太平洋戦争のような悲惨で大義の乏しい戦争を繰り返して、補給が続かなくて戦死よりも餓死のほうが多いような悲しい歴史は二度と起こしてはならない、と思う人たちの考えにも寄り添う必要があると思うのです。戦争は駄目よね。絶対に。

 だからこそ、戦争を起こさないために、日本の安全保障を日米安保条約に依存して、事実上、アメリカをビッグブラザーとする世界体制の一員として戦後ずっと頑張ってきたのが日本です。アメリカとの関係が堅牢である限り、日本を脅かす勢力が出ないことは確実視でき、また、資源国ではない日本が海外から必要で充分な資源を輸入できる世界平和の状況を維持することは至上命題であり続けたことは言うまでもありません。

ぶつぶつと文句を言いながらダラダラと現状維持

 しかしながら、戦後70年を超え、1990年代から昨今までの中国の台頭により、相対的に日本の国力が劣後してきたばかりか、少子高齢化を主要因とする低成長で世界的にも日本は魅力の乏しい国、技術革新を担えない国へと落ち込んできました。戦後復興を遂げた昭和後期の遺産を食いつぶし始め、もはや『衰退』という二文字を自覚せざるを得ないのが平成31年間の結論ではないかと思います。

 それでも、日本人がこの地に暮らし、今後も日本社会をしっかりと次の世代に引き継ぐ責務を私たちは持っています。しっかりと働き、税金を納め、子どもを養い教育し、私たちの責任を全うしなければならないのです。いま日本に生きる一人ひとりが受け継いだ戦後から、令和に向けて何をしていくのか考えていかなければなりません。

 そのためには、日本を生き残れるように作り替えていかなければなりません。いまのままの日本でこれからも安泰だ、と思う日本人はおそらくひとりもいないのに、我が国はいまだに高度成長時代につくられた財政、社会保障、地方自治などの仕組みそのままに来ています。すでに人のいなくなった地方自治体を取り潰すこともできなければ、借り手が減った地方の金融機関は耕す人のいなくなった土地に担保を設定して貸し込んだまま国債を買っています。ちょっと考えれば「そんなことではいけない」ことぐらい分かるだろうに。大丈夫なのかね。

 そして、消費税しかり社会保障料しかり、国民の負担はこれからも重くなるわりに、国民に対するサービスの質は下がっていく状況のなかで、みんな起きる事件や問題にぶつぶつと文句を言いながらダラダラと現状維持をしてしまっている、というのが実際ではないでしょうか。

かなりガチで終わろうとしている平和な時代

 そういう退廃と衰退の只中にある日本を取り巻く環境は激変しています。世界が平和であるからこそ、過去の日本経済の成長の遺産とも言える経常収支がいまなお日本の通貨を支え、必要なものを海外から買ってくる能力を維持し、またそれを可能にする世界的に平和な状況をもたらしてくれています。言うまでもなく米ソ対立の冷戦構造が終結したあとの「平和の配当」を享受している国のひとつが日本です。

 そういう平和な時代が、かなりガチで終わろうとしているのが「令和の常識」かもしれません。単にトランプさんがヤバイというより、本当に中国がアジアにおける覇権国家になり、日本が日米安保を捨ててアメリカと中国の狭間で両大国の顔色を伺いながらうろうろするような国になってしまうと、もはや日本の香港化は止められなくなるでしょう。

中国本土への身柄引き渡しで、香港の自由は風前の灯|ニューズウィーク日本版

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/05/post-12154.php

 民主主義を経験し、冷戦をイギリス統治下で長く過ごしてきた香港人は、もはや民主的な手続きが当たり前になり、透明で清潔な金融システムによる受益を果たして、アジアの金融拠点として独自の地位を確保してきました。ところが、中国へ返還され中国経済の成長とともに日本同様にその地位を低下させると、まるでソビエト連邦がフィンランドを影響下に置いたかのように取り込まれていく運命にあります。

米中冷戦で日本もまた主戦場となる恐れがある

 同様の図式は、「ひとつの中国」に抗う台湾、異民族問題の先鋒となるチベット自治区、新疆ウイグル自治区、あるいはモンゴルにまで及びます。これらは中国の中核的利益であり、問題に直接触れることは中国に対する「内政干渉」であるという建前とともに置き去りにされてきましたが、そこで起きていることは重大な人権侵害であるように、アメリカ、日本などの民主主義陣営からは見えます。

 じゃあアメリカは完璧なのかと問われると、やはり理想からは程遠いわけですけど、貧しい人たちのために戦う人がおり、貧しい人にも選挙権が与えられ、声があげられるという一点で中国よりもマシであろうと思います。それが民主主義であることは日本人がよく知っています。街角で「アベちゃんバーカ」と言って逮捕されない国であって欲しいなら、民主主義を堅持し、アメリカと共に歩む以外の選択肢はありません。

コラム:中国ウイグル族を苦しめる現代版「悪夢の監視社会」

https://jp.reuters.com/article/apps-china-idJPKCN1IN02T

 曲がりなりにもきちんとした民主主義を続けてきた日本が、これらの人権問題について見て見ぬフリをし、中国の台頭を仕方のないことだとしたうえで貿易相手として互恵的な関係を築いてきました。ただ、昨今の米中対立の局面が暗示するように、新たなる冷戦、両大国同士の対立という図式が「令和の常識」となっていくのならば、アメリカと緊密な関係を持ちアジアの民主主義陣営としての日本が取るべき責任は大きくならざるを得ません。衰退しているのに。

 米ソ冷戦のころは、もちろん極東・東アジアの日本も含まれていましたが、主たる安全保障体制の課題はヨーロッパが舞台となっていました。今回の新たな冷戦は、もろに中国と隣接している日本もまた主戦場となる恐れがあることは、誰もが知っていることでしょう。

私たちがどう令和で生き抜くか

 そして、一帯一路の対外的経済政策を元に、アジアやアフリカ、中東のあまり裕福ではない国々に貸金を出し、インフラを整えるもののカネを返せないこれらの国々からインフラごと中国が接収してしまう、といういささか古い植民地主義・重商主義のようなアプローチを中国がとるほど、低下するのは日本の影響力です。経常収支が黒字であることが命綱である日本にとって、世界経済における地位が低下することは、本来ならば死守しなければならない砦を自ら明け渡している行為にほかならないのです。

 ただ、なにぶんトランプ大統領は変わった人なので、我らが安倍晋三総理がべったりとトランプさんを歓迎し、外交の基軸をアメリカとの共同歩調に置き続けて本当に大丈夫なのか、という懸念は残ります。なんかこう、凄く心配なのです。なんですかね、この物凄い不安感は。

 日本としては、絶対的に平和を維持する勢力として頑張りつつ、衰退する国力を制度の改変でうまくコントロールしながら、米中対立という新しい冷戦構造のなかで中国の隣国なのにアメリカ側のパートナーとして民主主義陣営を堅持し、世界的な日本の威信を守り、次の世代へ信頼される日本を引き継いでいく――そういう曲芸のようなことを完遂しなければならないのです。

 なんだろう、この「令和の時代」が迎えるハードモード。

 ほんと、ガチで大変な状況であることを踏まえたうえで、私たちがどう令和を生き抜くかを考えていかなければならないわけですね。そんななかで、参院選は衆議院解散とセットでダブル選、とか言われていますけど、本当に私たちは大丈夫なんでしょうか。ねえ。ねえ。

(山本 一郎)

あわせて読みたい

「日本社会」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    彼女の生理日を知りたい男性9割

    工藤まおり

  2. 2

    よしのり氏「安保破棄してくれ」

    小林よしのり

  3. 3

    堀江氏の保育士めぐる発言に反論

    田中俊英

  4. 4

    徴用工問題避けたい文政権の本音

    文春オンライン

  5. 5

    安倍内閣の数え切れぬ不信任理由

    大串博志

  6. 6

    すぐバレる嘘で窮地に陥る文政権

    高英起

  7. 7

    銀行員のジーパン勤務OKに大賛成

    川北英隆

  8. 8

    度を超す学歴重視が生む教育虐待

    おおたとしまさ

  9. 9

    自民党に鞍替えする政治家に嘆き

    早川忠孝

  10. 10

    闇営業ギャラにブラマヨ吉田持論

    AbemaTIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。