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「大義なき同日選」なら自民党は敗北する

公明党は真っ向から「同日選」に反対

今夏の参院選日程にあわせて衆院を解散し衆参同日選を行うという流れが、日々強くなっている。

マスコミの報道ぶりでは、過去2回の衆参同日選で自民党が圧勝したこともあり、今回も自民党が勝ち野党が惨敗するとの見立てが多いようだ。本当にそうだろうか。冷静にデータを分析すると、同日選は、今の自民党には有利にならない。思わぬ苦杯をなめる可能性も十分あるのだ。

政府・与党協議会に臨む自民党の二階俊博幹事長(奥中央)と公明党の斉藤鉄夫幹事長(同右)。左列手前から3人目は菅義偉官房長官=2018年10月22日、国会内(写真=時事通信フォト)

「公明党が同日選を容認するような報道もあるが、われわれは妥協する気は毛頭ありません」

22日朝、自民、公明両党の幹事長、国対委員長会談(通称・2幹2国)で公明党の斉藤鉄夫幹事長は、カウンターパートの二階俊博自民党幹事長に向かってはっきりした口調で語った。温厚な性格の斉藤氏が、自民党に正面から苦言を呈するのは珍しい。

二階氏が「参院選で勝つために衆院を解散するということはありえない」と取りなして2幹2国は終わったが、連立のパートナー公明党が同日選に強い違和感を持っているのを示す象徴的なシーンだった。

同日選での過去2回の勝利は「昭和」の話

衆参同日選は過去2度行われている。1回目は1980年、野党提出の内閣不信任決議案が予想外の展開で可決してしまい、時の大平正芳首相が衆院解散して参院選との同日選を選んだ。いわゆる「ハプニング解散」だ。2回目は86年、当時の中曽根康弘首相が抜き打ち的に断行した「死んだふり解散」だ。

2回とも、自民党は衆参ともに勝利。特に86年では自民党は衆院で300議席を獲得する歴史的大勝を達成した。この成功体験から、自民党内では参院選で苦戦が予想される時に、同日選を求めることが少なくない。

しかし、この成功体験は33年前と39年前の昭和時代の話。平成を通り越えて令和に通用するかどうかは別の話だ。

投票率が上がると自公には不利となる

昭和の頃、自民党は国民政党を標榜していた。「支持政党なし」層は自民党に投票する人が多い時代だった。同日選にすると投票率が高くなり、この層多くが自民党に流れ、勝利につながった。

今はどうか。自民党は地方に根をはやした組織や業界団体を束ねているが、組織政党の色彩が強くなっている。連立のパートナー・公明党にいたっては、創価学会が全面支援する完全なる組織政党。今の両党の体質は、投票率が下がった方がいい。同日選になって投票率が上がる場合、むしろ自民、公明両党には不利になるのだ。もはや「昭和の法則」は通用しない。

選挙制度変更で、衆院、参院とも2枚ずつ投票に

あまり注目されていないが、過去2回の同日選と今は、選挙制度が違う。80年の同日選の時は、参院選は選挙区と全国区で2枚の投票用紙に2人の個人名を書く選挙。86年の時は全国区に代わりに比例区が導入されており、2枚の投票用紙に個人名と政党名を書いた。

衆院選は80年、86年の2回とも中選挙区制度で、投票用紙1枚に個人名を書いていた。

つまり80年の時、有権者は投票所で衆院は1枚、参院は2枚の計3枚投票していた。

その後、衆院では96年の選挙から小選挙区比例代表並立制が導入された。この結果、有権者は2枚の投票用紙に個人名と政党名をそれぞれ書く制度になった。参院は選挙区と比例区で行われるのは変化ないが、2001年から比例区は、「非拘束式」という仕組みに変わり、有権者は個人名を書いても政党名を書いても有効になった。

今の制度で同日選になったらどうなるか。有権者は衆院、参院とも2枚ずつ投票することになる。参院選では1枚には選挙区に立候補した候補1人の名前を書き、もう1枚の投票用紙には比例区に立候補した候補の名前か政党名を書く。衆院選では1枚に小選挙区候補の名を書き、もう1枚には政党名を書く。極めて複雑で、混乱は避けられない。

衆参ともに比例区があることは知っている人が多いだろうが、衆院は政党名しか書くことが許されず、参院では個人名でも政党名でもいい、ということまで理解している日本国民がどれだけいるだろうか。

創価学会の高齢化で「1人4票」の徹底は難しい

この複雑な制度で同日選を行うことに猛反対しているのが公明党だ。公明党の支持層は創価学会。巨大な集票マシンではあるが、組織が大きいからこそ、指示を末端まで降ろすのは時間がかかる。しかも創価学会員は高齢化が進んでおり、4枚の投票用紙に書く候補者名や政党名を徹底させることは至難の業なのだ。

この危機感が、先に紹介した斉藤氏の発言につながっている。選挙の陣頭指揮を執る幹事長ゆえの焦りもあるのだろう。

ある公明党幹部は「もしも同日選になったら、公明党としては比例区中心の選挙にならざるをえない」とつぶやく。自公両党は連立を組んでから選挙協力を続けている。選挙区は公明党候補が出馬していない所では公明党が自民党候補を支援し、比例区では自民党が公明党を支援する。「選挙区は自民、比例は公明」というバーター協力だ。

「選挙区で自民党の応援はしない」宣言

公明党幹部の「比例区中心の選挙」という話は「選挙区で自民党の応援はしない」宣言とも受け取れる。同日選を翻意させようというブラフの意味合いもあるのだろうが、実際に「4票」の指示を徹底させるのが難しいと判断すれば、自分たちの党を優先して、自民党の応援は後回しにするのは当然。ズバリ言えば、同日選になれば自公選挙協力は崩壊する。

公明党や約700万票の集票力がある。289の衆院の小選挙区単位で2万から3万にあたる。この票が上乗せされないと、選挙区で自民党は大苦戦することになるだろう。

同日選で野党はどうなるか。プレジデントオンライン編集部では「『何でも反対』で支持を失う野党の体たらく」などで、野党の選挙協力が遅々として進まないことを繰り返し指摘してきた。しかし、ここに来て、調整が急ピッチになってきた。共同通信社によると32ある参院1人区のうち27で主要野党の候補者一本化が達成されつつあるという(5月18日現在)。

野党共闘が進み始めた原動力は、明らかに同日選への危機感だ。参院選での調整をほぼ終えた野党は今後、衆院小選挙区の調整を進める。今夏に同日選が行われる場合、完璧な共闘関係が組めるとは思わないが、それなりに形はつくることになりそうだ。安倍氏周辺が意図的に吹かした解散風が、「寝た子を起こした」ような皮肉な展開になりつつある。

「恣意的な解散」批判が広がる恐れもある

こう1つ、注目しておきたいのが世論の動向だ。自民党内で同日選論が高まっている理由の1つに「世論の理解」がある。確かに共同通信社が18、19日に行った世論調査によると、同日選を「行った方がよい」が47.8%で、「行わない方がよい」の37.2%を上回った。しかし、この傾向は実際に衆院解散された後も維持される保証はない。

今、大手新聞、テレビ各社は「首相の解散権」についての報道の準備を着々と進めている。報道内容は濃淡があるだろうが、さほど重大な争点があるわけでもないのに党利党略で衆院解散を繰り返す安倍晋三首相の姿勢を「恣意的な政治判断」として批判する内容になるだろう。そういう報道が続けば安倍自民党に世論は背を向けるようになるのではないか。

それでも、もはや流れは止められないか

同日選になれば投票率が高くなる。自公の選挙協力が難しくなる。野党の結束を促進することになりかねない。世論の批判も想定しなければならない。

冷静に考えれば同日選は、自民党にとってマイナス要因ばかりだ。それにもかかわらず昭和時代の2度の成功体験を信じて衆院解散に走る姿は滑稽にすらみえる。

実際、そのことに気づき、同日選にブレーキをかけようというベテラン議員も少なくない。公明党との関係を重視する二階氏も、その中の1人だ。ただし永田町全体が解散風に流され、同日選に向けて走り始めているのも事実。二階氏らの力を持ってしても、押し戻すのは難しい雲行きなのだ。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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