- 2019年05月24日 09:15
なぜ「テレビはつまらない」と言われるか
2/2■テレビそのものが「昭和のヒットコンテンツ」
――一方で、みんなで一緒にテレビを見るという、いわゆる「お茶の間」がなくなりつつあると言われています。
「テレビって何だったのか」ということですね。特に草創期になぜテレビがこんなに流行って、必需品になったのかと考えると、一つのものを大勢で共有して見ることができたからなのだと思います。昭和のヒットコンテンツは、テレビそのものなのです。上皇陛下のご成婚パレード、読売ジャイアンツ、力道山など、それまでは、バラバラの場所で生で見るしかできなかったものを、テレビによって共有体験できるようになりました。
結局、映像エンターテインメントの楽しみ方は、見たものを人が共有できることに尽きるのではないかと思います。今は、みんながバラバラな映像を、個別に選んで見る方向に進んでいて細分化しています。それは、テクノロジーが進んで、できることが増えている渦中だからです。
だけど、結局マスに集約されていくと思うんです。これだけ細分化すると、見るものを探すのが面倒くさくなって、「手軽に高品質なものを見たい」という方向に収斂していくのではないでしょうか。ネット側の立場になって考えるとそう思います。
ネット系の映像メディアがマスを目指していくと、今度は数が絞られます。5つに絞られたら、それはもう地上波と同じですよね。今も、BSやCSを入れれば無数のチャンネルがあるけれど、何となく地上波が一番身近に感じられて、圧倒的にシェアがある。同じことだと思います。
■世代に対する包容力を失った地上波
――今後、地上波のテレビ局はどうなるのでしょうか。
僕も編成にいたから分かるのですが、地上波の放送では、人口ボリュームの大きい年齢層の高い人向けの番組を増やしたために、若い人がテレビを見ない理由を作ってしまいました。マスを取るために少数派を排除していった結果、ジリ貧になっている。世代に対する包容力を失っていることを考え直したほうがいい気がします。その上で、世代をまたぐコンテンツを真剣に考えるべきです。
今回の『ダーレモシラナイ』で言えば、インターネットがこれだけ大きな存在になった中で、誰も知らなかった情報をテレビが発信していくのは、どの世代の誰にとっても基本的には新鮮なことです。発信される情報は「見たことのないこと」「知らなかったこと」ですから、マーケティング的な意味でこれほど全世代に響くものはありません。そういう地点をめざして、この番組を作りました。
■視聴者の「体験」をデザインしたい
――今、視聴者はどんな番組を求めているのでしょうか。
全世代に一番響くマーケティングは、「見たことのないものを見せること」なんですよね。それを提案していきたいです。そのためには、「何を映すか」よりも、新しい視聴体験を提案するところまで考えないとダメだと思うのです。
それは、視聴体験の仕方をうまくデザインするということです。たとえば『チコちゃんに叱られる!』は、“ハッとする”番組です。「さよならの時に手を振るのはなんで?」と言われて、見ている側も含めて“ハッとする”体験をして、「わかっていなかったな」と感じる。それに対して、テレビの中の生意気な子供が「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と言う。そういう一つの体験をする番組ですよね。
視聴体験をデザインすることに成功している番組は強いんです。たとえば、日本テレビの五味一男さんは、テレビを変えたと思っています。『マジカル頭脳パワー!!』という番組では、テレビをゲーム機に変えたし、『速報!歌の大辞テン』では、歌番組をお茶の間の団欒ツールに変えました。これも新しい視聴体験です。
『ダーレモシラナイ』には、投稿された情報が本当にネット上に出ていないかを調べる「検索マスター」が出てきます。本当にすごい方々です。インターネットではあっという間にいろいろな情報が手に入ることがわかります。それと同じくらいに、テレビにも素敵なところがあると感じていただきたいというのが、この番組の一番のポイントです。
ネットに情報は出ているけれど、ただネットの情報を読むよりも、取材チームが現場に行ってきた映像を見るほうが面白い。それを検索結果と並べてお見せしたいと思っています。

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小松 純也(こまつ・じゅんや)テレビプロデューサー兵庫県西宮市出身。京都大学在学中に劇団そとばこまちに参加。放送作家として活動。1990年フジテレビ入社。以後バラエティ番組を多数企画演出。2019年株式会社スチールヘッド代表取締役。地上波、配信双方に軸足を置きながら番組を制作。新配信プラットフォーム「Laugh & Peace_Mother powerd by NTT Group」ではコンテンツ制作を統括。
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(テレビプロデューサー 小松 純也 構成=プレジデントオンライン編集部 撮影=小野さやか 画像提供=毎日放送)
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