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受け身の戦略

今日の横浜北部はよく晴れましたが、思っていたより涼しい風が吹いておりました。

さて、一昨日のエントリーに関してさらに一言。

丸山穂高議員を辞めさてはならない」と書いて、実に多くの方に読んでいただいたようでありがたいのですが、いくつか反論もいただきまして、

「平和主義の建前をもっているのだから、それに反する発言をする丸山は国益にならない」

ということを何人かに指摘されました。

これはこれで、私は非常に正しい意見ではあると思います。

ただし気になるのが、そのロジックがやはり「内向き」である点です。

突然話が飛びますが、本日、というか先ほど、私が所属している日本クラウゼヴィッツ学会において、昨日のエントリーで紹介したショーン・マクフェイトの『戦争の新しいルール』の内容について語って参りました。

そのためのスライドをまとめる過程で感じたことが、戦略のベクトルの方向性の話です。

「ベクトルの方向性」と言うとわかりづらいかもしれませんが、具体的には本ブログなどで何度か触れている、ジョン・ボイドが「発見」した、クラウゼヴィッツと孫子という二人の偉大な戦略家の考え方の違いです。

「OODAループ」という概念を編み出した元戦闘機乗りのボイドですが、クラウゼヴィッツと孫子を読み込んで考えているときに、稲妻のようにひらめいたことがあるといいます。

それは、クラウゼヴィッツが味方や友軍の「摩擦」(フリクション)を解消しようと努力するのを奨励しているのに対して、孫子は敵やライバルに対して「摩擦」を押し付けよと勧めている、と気づいたことです。

つまりこの二人の戦略思想家の間には、「摩擦」の扱いについて、自分のものを解消させようとするのか、それとも相手のものを増加させようとするのか、という劇的な違いがあったというのです。

そして当然ながら、今回私が紹介した本は、「傭兵をうまく活用しろ」と進言する、どう考えても「相手の摩擦を増加させてしまえ」とする、典型的な「孫子タイプ」だったわけです。

ここで話を戻します。

私が一昨日書いた「丸山議員は国益にならない」という議論に対するいくつかの反論意見を見てみると、ある程度共通するのが、

「相手に迷惑をかけるな」

という、まさにクラウゼヴィッツ的ともいえる、ベクトルの方向性が自分の方に向いているもの。

つまり「自分たちのミス(摩擦)を解消することが国益につながる」という受け身・消極的なものなのです。

日本の社会の中だけの話でしたら、私はこのような議論にも賛成します。

ところが今回の話は、「ロシア」、もしくは「国際社会」(?)という、いわば相手がいるケースの話です。

そうなると「自分の身を正す」という手段以外にも、「相手に何かを仕掛ける」ことも国益になる、という考え方も必要になってくるわけです。

私が「丸山議員を辞めさせてはならない、彼を資産として活用しなければならない」と論じたのは、まさにそのような意味合いも含めた上でのことでした。

いいかえれば、ロシア側に仕掛けるための材料、ということなのです。

「いやいや、そんな芸当は日本にはできないよ」

という意見も当然あるでしょう。

ただし日本はそのような「自分から相手に積極的に仕掛ける」という戦略をとってこなかったばかりに、色々と損をしてきたという面もあるのではないでしょうか?

アメリカの首都ワシントンに長期滞在したことのある人たちから噂話としてよく聞く話ですが、わが国の官僚たちは、国際的に何か動きが起こると、

日本に何かできないか

と聞きまわるといいます。クラウゼヴィッツ型ですね。

ところが日本の隣国である某国の官僚たちは、そのベクトルの方向性が日本と真逆であり、

これとこれをしてくれ

と常日頃から他国に要求しまくって、ロビー活動を積極的に仕掛けていると聞きます。孫子型なのです。

本日紹介した『戦争の新しいルール』では、これからますます宣伝戦が重要になってくるということが書かれておりましたが、こういう日本の受け身の戦略文化を感じるたびに、私は日本が現代戦を戦うレベルにないと痛感させられます。

もちろん「相手に迷惑をかけない」「品行方正で寝た子を起こさない」というのは一つのアプローチであり、日本の美徳かもしれません。

しかしそれだけで、本当に国益を守ることができるのでしょうか?

そろそろ我々もマインドセットを変えて、戦略のアプローチの「仕掛ける」という方向性にシフトすべきでしょう。

(南側からウランバートル中心部を望む)

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