- 2019年05月22日 21:44
現在の福祉制度が限界であるという日本の現実を直視し、自助保険制度への移行へ。
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最近、87才になる義父が眼科で処方してもらってメガネを2組作りました。
政府の補助がついたらしく、2組で払った費用が2ドル(約160円)だったと夫大喜び。その前にも要介護者の義父の杖を数百円で購入した他、昨年から住み込みで義父母の世話をしてもらっているミャンマー人のメイドさんにかかる費用も、彼女が政府主催の介護研修を受けてから1/3程度が補助金でまかなわれるようになりました。
ちょっと前まではこういう仕組みがなかったため、高齢者が処方薬を買うのに物価が安いマレーシアのジョホール・バル―まで毎月出かけるのは当たり前(なぜかマレーシアの薬局では処方箋がなくても処方薬が買える)。
我が家でも毎年恒例のマラッカ旅行の度に、1錠千円近くする義母の関節痛の薬を買ってきていました。現在ではこちらも政府補助がついてマレーシアで買うより全然安くなったため、もう買っていません。
基本的にシンガポールの日常の医療はすべて自費診療です。
風邪をひいてもお腹をこわしても、町医者や私立の病院にかかると100%自費。私立の病院は高額ですが、町医者になると庶民の懐事情がよくわかっていますので、よほどのことがなければレントゲンを撮ったりしませんし(そもそも高価な医療機器をほとんど置いていない)、薬も最低限必要なものしか出さず、患者も「これは要らない」と拒否することも多いので、実際に支払う金額は3割負担の日本で町医者にかかったときとほとんど同じか、むしろ安いくらいです。
医療器械が必要な検査は外注が基本。
私はHRT治療を受けているので、乳がん検査と子宮ガン検査に定期的に行っていますが、近所の婦人科クリニックでするのは内診のみで、超音波やマンモグラフィーは検査専門のセンター(検査技師がいるだけで診断はクリニックの医師)へ。分業が進んでいて、競争も激しいので「今回はここがプロモーションやってて安いから行ってね」と毎回別のセンターを紹介されたりします。
しかし、歯医者だけはどうにもなりません。1本でも差し歯にしようものなら10万円単位で費用がかかります。つい最近も、10年以上前に神経取ったところが炎症を起こしてしまい、その治療だけでやはり10万円ほど支払いました。
なので、できるだけそうならないように、半年に1回の歯科定期検診は欠かしませんし、娘の学校にも歯科医が定期的にやってきて子供たちの歯のチェックをしたり歯磨き指導をしたりしています。
と、ここまでシンガポールの庶民の医療事情を少しだけご紹介しましたが(お金持ちはまた全然違い、ガンの最新治療を受けるためにアメリカの高名な病院に長期入院したりします)、その理由は、日本の医療負担がすでにサステナブルでないレッドゾーンに入っているという話をここのところ立て続けに読んだからです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45016470Q9A520C1SHA000/
現在の日本では、国民健康保険で医療費がまかなえず、ほとんどの自治体で税金を投入せざるをえないという現実が厳然としてあります。そしてこの現実は、今年昭和24年生まれが75才を迎えるのに伴い、後期高齢者の数が激増してさらに過酷になっていくことが確実です。
夏の参院選に向けて消費増税取りやめかどうかの議論が高まっていますが、下記の記事で指摘されているように、福祉と税の関係にあまり触れられていないのが気になるところ。もしも消費税が上がらなければ福祉にかかる保険料を上げざるをえず、勤労者世帯ばかりにしわ寄せがくるのは避けられません。
年金や医療保険などについて、日本とシンガポールの一番の違いは他助なのか自助なのかです。
冒頭に書いたように、現在のシンガポールでは義父母のような高齢者世代(1950年以前生まれ)を「パイオニア・ジェネレーション」と呼び、最近特に医療や介護に関する福祉を手厚く提供するようになりました。
というのも、彼らが働き盛りだった頃にシンガポールは建国したばかりで、現在のようなCPF(セントラル・プロビデント・ファンド/中央将来安心基金)という財形貯蓄と個人年金と個人保険が合体したような制度がまだ確立していなかったため、平均的な世帯が高齢者になってから十分な医療を受けられないという問題が噴出したのです。
さすがにそれはまずいと考えたのか、ここ数年で驚くばかりにこの世代への政府補助が拡大しましたが、その下のMerdeka世代以降(現在60代)はまた違ってきます。というのも、この頃になるとCPF制度が機能するようになり、庶民でもある程度の老後の蓄えができるようになってきたからです。
シンガポールのCPF制度についてはあちこちで書かれていますので詳細は省きますが、政府による強制的な個人預金と覚えておくといいと思います。被雇用者が17%、雇用者が20%を出して、毎月給料の40%近くを積み立てていきます。給料が20万円の人であれば7万円4千円ですから、夫婦2人だったら年間180万円近く積み立てていることになりますから、いかにその額が大きいかわかるでしょう。
このお金がCPFの自分の口座に入金されると、住宅購入資金及び子供の教育資金用口座(普通口座)、年金や老後資金のための口座(特別口座)、医療保険や入院費の口座(医療口座)に自動的に振り分けられ、政府が年利2.5%〜5%程度と民間の金融機関よりかなり高い金利で運用してくれます。



