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何かを「応援」すること。それこそが広告の持つ正しい機能だと思う - 「賢人論。」第89回箭内道彦氏(中編)

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生まれ変わっても、広告の仕事をやりたい

みんなの介護 2003年4月、箭内さんは博報堂を退社し、個人事務所「風とロック」を設立します。広告というものに対する考え方は変わりましたか?

箭内 何がきっかけだったかははっきりしないですけど、独立する以前のある時期から僕は、広告が持つ機能を「応援すること」ととらえるようになっていました。  

商品のPR広告なら、商品そのものを応援したり、その商品を食べたり飲んだり使ったりする人たちを応援するのが、「広告」のあるべき姿だと思うんです。

応援する対象は、そのほかにも商品をつくっている企業そのものだったり、製造している人や営業や販売に携わっている人たちなど、さまざまです。

みんなの介護 どんな手法でそれらを応援するんですか?

箭内 シンプルに言えば、対象となる人やモノの魅力を見つけて、それを多くの人に効果的な方法で伝えるということ。応援すべき魅力は千差万別ですから、過去に成功したパターンがあっても同じ手法は二度と使えません。すべてがオーダーメイドです。  

そう考えてみると、広告ってすごく素敵な仕事だなって思うんです。博報堂の入社面接で「人を幸せにしたい」と発言した僕の夢は副社長の予言通り、挫折ではじまったのかもしれないけれど、「応援」という形で実現したわけですね。サンリオに入社してラブレターの便せんをつくりたかったのも、よくよく考えてみるとそれに通じるものがあると思います。

みんなの介護 広告の仕事は、自分の天職だと思いますか?

箭内 ええ、思いますね。「風とロック」を設立して以降は、毎回大赤字の0円のフリーペーパーを発行したり、音楽フェスやラジオ局を開局したりしていますけど、仕事と趣味の境界線があいまいになっていった感じがあります。

僕にとっては仕事が趣味だし、趣味が仕事。天職って、そういうものでしょ?もし生まれ変わってもう一度、職業を選ぶ機会があったとしても、僕は広告の仕事を選ぶでしょう。

行政と関わることに、最初の頃は葛藤した

みんなの介護 2015年4月、箭内さんは前年に福島県知事に当選した内堀雅雄さんに請われ、福島県クリエイティブディレクターに就任します。どんな経緯があったのですか?

箭内 実は内堀さんとは、震災が起こる前からの知り合いで。2008年頃、僕が作った「207万人の天才。」の広告に興味を持った内堀さんが、ままどおるズのライブの楽屋を訪ねて来られたんです。内堀さんは当時、副知事をつとめられていました。

でも、反体制が信条のロックを掲げている人間として、政治家と仲良くするなんて考えられないじゃないですか。そういうわけで、あいさつするのを渋っていると、横にいた山口隆に「箭内さん、大人になりなよ」と諭されて会うことにしたんです。

話してみると、内堀さんは僕と同い年で、長野県の出身であるにもかかわらず、福島への熱い愛を持っている人であることがわかって意気投合して。

みんなの介護 他県の出身者だからこそ、福島の良さを容易に発見できたのかもしれませんね。

箭内 そうかもしれません。

みんなの介護 そうした話を聞くと、箭内さんの福島県クリエイティブディレクター就任は自然な流れだったような気がしますね。

箭内 いや、それでも葛藤はありましたよ。

ただ、内堀さんを通じて行政の人たちの仕事ぶりに触れると、誰もが福島の危機を救いたい、今の福島を少しでも良くしたいと必死で頑張っているのがよくわかりました。

だけど、被災している人たちにとって、行政の人たちが批判の対象になってしまっていることが少なくなかった。

それってすごくもったいないことだなと思って、行政と市民が手と手を合わせることに少しでも役に立てるならと、福島県クリエイティブディレクターをお引き受けすることにしたんです。

みんなの介護 福島県クリエイティブディレクターとして、福島の農産物を紹介する「ふくしまプライド」などのプロジェクトを進めている箭内さんですが、それとは別に個人として音楽フェス「風とロック芋煮会」を毎年開催するなど、福島の支援を続けていますね。

箭内 福島の人には故郷に誇りを持ってほしいし、他県の人たちにも「福島っていいなぁ」「福島羨ましいなぁ」って思われたいんですよ。それが今の僕の、いちばんの野望です。

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