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「消費増税原理主義」の軍門に降った日銀総裁が捻じ曲げて伝える日本経済の現状〜「経済や物価で起きている良いモメンタム」は潰さなければならない

経済や物価で起きている良いモメンタム(勢い)を大事にしたいと表明。物価が下げ止まり、上昇に転じる兆しを今回の追加金融緩和で確実にする考えを示した」

日銀の白川総裁は、資産買入れ基金を5兆円増やし、総額70兆円とする追加の金融緩和を決めた金融政策決定会合後の記者会見で、このように述べた。

また、白川総裁は27日夕方に首相官邸で開かれたデフレ脱却に向けた政策を検討する閣僚会議の席上でも、総務省が同日発表した3月の全国消費者物価指数(CPI)を参考に、足元の物価動向が「少しずつ改善している」と評価したうえで、「この動きを確実なものにしていきたい」と脱デフレに向けた意欲を示したことが報じられている。

こうした報道を読むと、日本経済はデフレ脱却に向けて、良い方向に動き出したような印象を受けるかもしれない。しかし、「物価が下げ止まり、上昇に転じる兆し」が出て来ているというのは完全なミスリードであり、「経済や物価で起きている良いモメンタム(勢い)」に至っては完全な「嘘」である。

白川日銀総裁が根拠として挙げた3月の全国消費者物価指数(CPI)は、「総合」が前年比で+0.5%と3か月連続の前年比プラス。また、「生鮮除く総合(コア物価)」も前年比+0.2%と2か月連続のプラスとなった。「総合」「生鮮除く総合」が3か月連続で前年比プラスを記録するのは、2011年9月以来。それだけを取り上げれば、「物価が下げ止まり、上昇に転じる兆し」と言えるのかもしれない。

しかし、この程度の「物価が下げ止まり、上昇に転じる兆し」は2011年にも見られたのもの。

2011年の消費者物価指数の動きをみると、「総合」「生鮮除く総合」共に1月から6月まで前年比マイナスを記録したのち、7月から9月まで3か月連続で前年比上昇、「物価が下げ止まり、上昇に転じる兆し」を見せた。しかし、その後「総合」は10月から12月まで3か月連続の前年比マイナス、「生鮮除く総合」は10月から2012年1月まで4か月連続で前年比マイナスに転じ、「経済や物価で起きている良いモメンタム」は持続性のない一時的現象で終わってしまっている。

目を向けなくてはならないことは、「総合」や「生鮮食品を除く総合(コア)」が上昇に転じていることではなく、その中身である。

総務省は、消費者物価指数を、「総合」や「生鮮食品を除く総合(コア)」を含め、77項目で発表している。3月の消費者物価指数をこの77項目別に見てみると、消費者物価を押し上げているのは、「生鮮野菜(前年比+10.0%)」「生鮮果物(同+9.3%)「果物(同+9.2%)「生鮮食品(同+7.3%)」となっている。要するに生活に欠かせない生鮮食品関係の物価上昇が消費者物価を押し上げる要因となっている(上記の4項目は消費者物価指数全体の7.6%を占めている)。

生鮮野菜などは、天候要因など不可抗力も加わり変動が大きくなるため、「生鮮食品を除く総合」が日本では「コア指数」とされている。実際「生鮮野菜」や「果物」など上記4項目の昨年12月時点での消費者物価指数は、全て▲2.4%~▲4.5%であった。

問題なのは、生鮮食品以外の消費者物価指数を押し上げている主役達である。変動の大きい生鮮食品関係を除くと、3月の消費者物価指数の項目別上昇ランキングの上位は「電気代(前年比+6.9%)」「他の光熱費(同+6.1%)」「エネルギー(同+5.7%)」「光熱・水道(同+4.7%)」「ガス代(同+4.4%)となっており、これら5項目の消費者物価指数に占める割合は20.2%である。

こうした結果、消費者物価指数の68.3%を占める「食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合」は、前年比▲0.5%となっている。ちなみに、3月時点で最も下落した項目Worst3は「家庭用耐久財(前年比▲9.7%)」「教養娯楽用耐久財(同▲5.9%:テレビ、パソコンなどが含まれる))「家具・家事用品(同▲3.3%)」であった(消費者物価指数に占める割合は6.4%)。要するに、生鮮食品や原油価格上昇の影響を除いた日本経済の実態は、デフレ経済から全く脱却する気配を見せていないというものである。

政府、日銀が目を向けなければならにことは、デフレ経済が続く中、「電気代(消費者物価指数に占める割合3.2%)」の前年比上昇が12か月連続となっているのを筆頭に、「他の光熱(同0.5%)」は27か月連続、「エネルギー(同7.7%)」は25か月連続、「光熱・水道(同7.0%)」は22か月連続、「ガス代(同1.8%)」も21か月連続で前年比上昇していること。

要するに「物価が下げ止まり、上昇に転じる兆し」は、天候不順などの影響を受けた生鮮食品価格の上昇と、世界的原油価格上昇を受けたエネルギー価格の上昇によってもたらされた「悪い物価上昇」であり、「経済や物価で起きている良いモメンタム(勢い)」から程遠いというのが実態である。

そして、こうした消費者物価の状況から垣間見える日本経済の実態は、「生活防衛のために、不要不急の支出を抑え、上昇する生活コストを何とか確保している」という姿である。もしそうだとしたら、政策当局者が考えなくてはならないことは、「経済や物価で起きている良いモメンタム(勢い)を大事にする」ことではなく、今のモメンタムを打ち切ることになるはずである。

野田首相は28日、東京都渋谷区で開かれた連合のメーデー中央大会で挨拶し、消費増税を柱とした税と社会保障の一体改革について「政治家自らの身を切る改革と合わせて、与野党の壁を乗り越え、何としても実現させる」と述べ、「今の日本の危機を乗り越え、子どもたちの未来を確保し、国力と民力をよみがえらせるための第一歩だ」と強調、理解を求めた。

「生活防衛のために、不要不急の支出を抑え、上昇する生活コストを何とか確保している」多くのメーデー参加者にたいして、消費増税による生活コストの上昇を黙って受け入れろというのは、無神経極まりない話である。

野田政権は、政府と日銀が一体となってデフレ脱却に取り組んでいるような演出を凝らしている。そして政府が考える日銀との関係は、白川日銀総裁のエコノミストとは思えない事実を捻じ曲げたようなコメントから推察するに、日銀は「消費増税原理主義」政権に対して、日本が消費増税可能な経済状況にあるということにお墨付きを与える広報担当に成り下がるというもののようだ。

自民党安部内閣以降、各政権は少子化対策担当大臣を置き、少子化対策に力を注いで(注ぐポーズをとり続けて)来ているが、「生活防衛のために、不要不急の支出を抑え、上昇する生活コストを何とか確保している」国民を減らすような経済政策を採ることが少子化対策の根本である。親が「危機を乗り越え」られなければ「子どもたちの未来」など確保しようもない、という当たり前のことに目を向けるべきである。

「子供達の将来」などという当分結果の出ない曖昧なフレーズで、「親世代の現世」を犠牲にすることは許されない。「親世代の幸福」がなければ、「子供たちの将来」は保障されないのだから。「子供達の将来」は「親」が一番考えているもの。野田総理は「子供達の将来」の何を保障してくれるというのだろうか。

これまで「消費増税原理主義者」の「結論ありきの議論」のために、多くの事実が歪められて伝えられてきた。そして、ついに日銀までもが客観的事実を歪めて、消費増税の片棒を担ぐ役割を見せ始めている。これは日銀の国債引き受け以上に危険なものである。一日も早く「結論ありきの議論」をやめ、「客観的な議論」を取り返さなくてはならない。消費増税反対を唱える小沢元代表の無罪判決が、そのためのきっかけになることを願うばかりである。

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