- 2019年05月22日 09:15
大学生が"ペイペイ払い"に尻込みする理由
3/3■LINEという会社をいまいち信用してない
【原田】ただ、あまりに登録が簡単だと、逆にセキュリティ面で不安にならない?
【牧之段】最近出てきたばかりのベンチャー企業とかじゃなければ、登録上の不安はありません。
【原田】アメリカの若者にインタビューをしていると、個人情報の流出とかセキュリティへの不安がたくさん声として出てくるけど、日本の若者たちはそこにあまり不安は感じてないのかしらね。
【里村】あ、でも「LINE Pay」をやらない理由として、「LINEという会社をいまいち信用してないから」という人がいました。
【赤峰】プライバシー管理の設定をOFFにしないと、LINE本社にトーク内容を送られるって噂が流れてやだなあって思いました。だから私の周りはみんなOFFにしてますよ。不信感とまではいかないけど、絶対的な信頼は置いてません。
【原田】LINEが出始めた頃、韓国のNAVER社の100%子会社ということも影響したのか、情報流出に関していろいろな噂が流れたよね。それからLINEが完全に日本に普及してそうした話はあまり聞かなくなったように思うけど、やっぱりまだ高校生の間でもそんな噂が流れるんだね。
ちなみに、一応ネットで調べてみると、トークルーム情報がオンになっていても、トーク内容が閲覧されるわけじゃなく、スタンプや無料通話時のうさぎとか猫とか耳がついたりするフィルターなどが情報として本社に提供されるだけみたいではあるけどね。
キャッシュレス決済業者は、お金という大切なものを扱うだけに、前提として大きな社会的信頼が大切だから、そういう意味ではLINE PayはLINE自体の不信感がもしまだあるのなら、それを払拭するということも大切になってくるのかもしれないね。
【牧之段】あと僕らは確かにLINEになじんでいるけど、「LINE Pay」は「PayPay」に比べて利用可能店舗が少なくて不便な印象があります。あくまで僕や僕の周りの人の生活圏内での話ですが。
【浅見】というか、QRコード決済はまだ全体的に使える店舗が少ないです。たとえばセブンイレブンは「nanaco」推しだから、「PayPay」も「LINE Pay」も使えませんし(※)、服を買うお店でも使えないところが多い。だから私は結構クレジットカードを使います。丸井やルミネはカード払いで10%OFFの期間があるので。友人でもクレカ決済で服を買う人が多いですよ。
※編集部注:座談会収録の2月時点。LINE Payは5月21日に、「7月からセブン-イレブンでの決済対応を開始する」と発表している。バーコードをレジで読み取ってもらうことで、「コード支払い」が可能になるという。
■キャッシュレス決済は「恥ずかしい」
【赤峰】私、あるファストフード店でバイトしてるんですけど、「PayPay」にしろクレカにしろ、店員の立場からするとキャッシュレス決済って超めんどくさいんですよ。レジは基本的に現金支払いの設定になっているので、いちいち設定を変えなきゃいけない。正直、100円くらい現金で払えよって思っちゃいます。
【原田】さっき自分はコンビニではキャッシュレスって言ってたのに、お客には現金を求めるんだ(笑)。でも、その理不尽さがレジ側の店員の本音を表しているように思えるね。
確かにキャッシュレス決済普及の鍵の一つに、お店側にとってどんなメリットがあるかということもあるよね。もちろん、キャッシュレス化が理想的に進めば、省人化・無店舗化にもつながることにはなるんだけど、それはお店の運営側にとってのメリットであって、手間のかかるレジのバイト店員にとっては何もメリットがないもんね。
特に今のさまざまなキャッシュレス決済サービスが乱立している状況は、この超人手不足の日本で、単なる手間になってしまっているもんね。
【牧之段】店員さんがどう思ってるかなというのは、買う側も気にしてしまうかも。前にコンビニで、「PayPay」で決済しようとしたら店員さんがよくわかってなくて、店長さんを呼んできちゃったんです。結構待たされてすごく恥ずかしかったですね。深夜だったからよかったですけど、昼間で後ろに客がいたら、絶対スマホを引っ込めて現金決済してますよ。こっちが慣れてなくてあたふたするのも恥ずかしいけど、お店側のあたふたも今は多いと思います。あと、どの店舗がどのキャッシュレス決済に対応しているのかもお客にとっては非常にわかりづらいです。
【原田】レジ前まで行かないと、どのキャッシュレス決済サービスが使えるか、わからないお店が本当に多いよね。しかも、店員が慣れていなくてあたふたするなら、「だったら現金でいいや」となってしまうかもなあ。
【牧之段】レジまで行ってから、「それはうちでは使えません」って言われるのも嫌ですし。
【千葉】昨日、ちょうどそれを経験しました(笑)。
【小川】レジで「PayPayで」って言うのが、そもそもすっごく恥ずかしいです。まだ言葉自体が浸透していないから。
【原田】「ペイペイ」って言葉を発すること自体が女子は恥ずかしいんだね。
【千葉】「WAON」を使ったときに「ワオーン」の音が鳴るのも恥ずかしいです。
■キャッシュレスはすごいやつしか使えないイメージ
【原田】よく「五感マーケティング」が大事、なんて言われるけど、「音」のマーケティングは非常に重要になってきているね。若者たちにとってクールな音とは何か、ということをキャッシュレス決済サイドの企業はきちんと研究しないと、音を理由にしてキャッシュレス化が進まない、なんてことが起こるかもしれない。
ちなみに、「意識高い系」という、意識高い行動をしている若者を他の若者が揶揄する言葉があるけど、「電子マネーとか使ってる私、意識高い」と思っている人がダサい、みたいなことはあったりするのかな?
【牧之段】それはないですね。僕は逆にアーリーアダプターの人たちがSNS上で「PayPayのキャンペーンで○○をお得に買えた!」という風な、キャッシュレスサービスを使いこなしているような投稿をしているのを見ると、「自分はスマートに使いこなせないのにすごいな」と気後れしてしまいます。
むしろ、キャッシュレスはすごいやつしか使えないイメージです。そういう意味でも、周りのみんなが使ってるかどうかって大事ですよ。誰もQRコード決済を使ってないのに、自分だけ使うのははばかられます。
【小川】あとはお店の雰囲気としても電子マネーを推してくれていると、使いやすくなると思います。ファミマは「PayPay」を店内放送や貼り紙で推しているので、そういう空間だったら使っても良い気持ちになります。そこまで店内でフィーチャーされていたら、恥ずかしさはなくなりますね。
【原田】単に便利かどうかだけじゃなく、「自分が使っても良い雰囲気があるかどうか」が今の若者にとっては重要になっているんだね。SNSの普及によって多くの友達とつながり、周りの友達の動向や目をかなり気にするようになっている今の若者たちは、キャッシュレスサービスを使うことによって、周りからどう見られるか、ってことをかなり意識するようになっているんだね。今の若者気質が表れてるなあ。
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原田曜平(はらだ・ようへい)サイバーエージェント次世代生活研究所 所長
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年12月よりサイバーエージェント次世代生活研究所・所長。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『さとり世代』『ヤンキー経済』『これからの中国の話をしよう』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」、日本テレビ「バンキシャ」レギュラーとして出演中。
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(サイバーエージェント次世代生活研究所 所長 原田 曜平 構成=稲田豊史、撮影=プレジデントオンライン編集部)
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