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5月末が消費増税見送り表明デッドライン

消費税増税で日々の暮らしはよくなるのか。「数学科出身の元大蔵官僚」という異色の経歴を持つ財政のプロが、未来予測を行った。

■日・英・中の爆弾で、増税は見送りか

安倍晋三首相は、2019年10月に予定されている消費税増税について、18年11月に、「リーマンショック級の出来事がない限り、10%にしたい」と述べています。その「リーマンショック級の出来事」ですが、私は起きる可能性が高いとみています。

まず国内の景気が危うい。政府はずっと景気拡大していると言っていますが、まったく理解不能。それは景気動向指数を見れば一目瞭然です。


「景気判断というのは景気動向指数を見るだけ」と話す髙橋氏。2012年12月に始まった景気拡大が、19年1月に戦後最長を更新したとされているが、髙橋氏は「17年12月ごろから景気は落ち始めている」とみる。

景気動向指数の推移を見ると、直近のピークは2017年12月ごろ。マスコミは、18年10月から下がっていると言っていますが、実際はもっと前から落ち始めていたと言えます。そして18年1年間は、上がったり下がったりしながら全体のトレンドとしては下落していて、19年3月7日に内閣府が発表した1月の景気動向指数は3カ月連続でマイナスとなり、下落がさらに顕著になっています。

データは正直です。こんなときに消費税増税なんてやったら、みんな財布の紐をがっちり結んでしまうでしょう。景気は“つるべ落とし”で一気に悪化することが簡単に予想できます。

そして海外に目を向けると、イギリスのEU離脱(ブレグジット)と中国経済の失速があります。どちらも顕在化すればリーマンショック級になります。

国内景気、ブレグジット、中国経済。この3つのうちのどれかが、近々弾けるでしょう。そうなれば、19年7月の参院選を前に、安倍首相も「消費税増税します」とは言いにくくなるはずです。

では、増税見送りを表明するタイミングはいつか? 19年3月中は20年度予算を成立させることで精いっぱいだったし、予算案の中に消費税が盛り込まれていたので動けませんでした。しかし、予算が成立した後の今は違います。ブレグジットや中国の状況が急に悪化するなど、世界情勢や景気動向の状況によっては、この記事の掲載号が発売される19年4月22日までに、すでに消費税見送りを表明している可能性はありえます。

それがまだであれば、あまり遅くなると、増税に向けた準備が進んでしまいやめられなくなります。増税見送りの表明は、改元して19年5月の連休が終わってからになるか、19年5月20日のGDP速報で悪い数字が出て、それがダメ押しのようになって表明するか、このあたりはわかりません。ただ、参院選の公約は19年6月上旬までにまとめる必要があるので、おそらく19年5月いっぱいくらいが見送り表明のデッドラインだと思います。いずれにせよ、19年6月28日から大阪で開かれるG20のころには、目鼻がついているでしょう。

PIXTA=写真

安倍首相は、16年5月の伊勢志摩サミットでも、原油などのコモディティ価格の下落を挙げて「リーマンショック級の危機」と指摘し、17年4月に予定されていた消費税増税を見送っています。しかし、コモディティ価格下落の影響を受けやすいのは、先進国ではなく発展途上国。本当はその程度では「リーマンショック級」とは言い難いのです。コモディティ価格下落を理由に増税を見送るくらいなら、今のほうがもっと「リーマンショック級」に近いはず。国内景気、ブレグジット、中国経済が絡み合えば、消費税増税どころではなくなるでしょう。

「日本は1000兆円の借金を抱えていて財政が破たんするから、消費税を上げる必要がある」と言われます。しかし、確かに借金は多いですが資産も多いので、日本の財政状況は健全です。また「少子高齢化で社会保障の財源が足りないから、消費税増税をするしかない」と言う議論もウソ。そもそも日本の財政は悪化していないし、社会保障費も大丈夫なのだから、消費税を上げる必要などありません。「消費税増税をしないと、児童手当が出せない」とか、「幼児教育・保育の無償化ができない」と言う人もいるようですが、財政が大丈夫なのですから、消費税増税をやめてもそれは可能です。

つまり消費税増税は、経済が停滞するだけで、1つもいいことがない政策。本当は、消費税増税なんてしようとする政治家は、選挙で落とすのが一番いいと思います。

■時限措置は景気の冷え込みの先延ばし

「消費税増税をすると全治3年」です。当たり前ですが、税金が増えれば可処分所得が減ります。その影響は3年ほど続くため、景気は大きく冷え込んでしまうのです。

過去の消費税増税も全治3年でした。3%から5%に上がった1997年も、5%から8%に上がった14年も、その後3年間景気が停滞したのです。唯一の例外が89年の消費税創設です。あのときは物品税をなくして消費税を導入したので、税金の名前が変わっただけで、実質的には増税ではなかったからです。

今回の増税時にはポイント還元などの時限措置を行うということになっています。こうした措置は、その期限が切れるまでは景気への消費税増税の影響が出ないで済むかもしれませんが、期限を迎えた時点で効果が切れて、景気の停滞が始まるでしょう。つまり、措置が行われる間だけ、景気の冷え込みが先延ばしになるだけの話で、増税の影響はいつか必ず出るのです。時限措置の後にやってくる景気停滞のために、多少の心の準備はできるかもしれませんが、だからといってお金の準備ができるわけではないので、ほとんど意味がありません。

■この機会に副業で稼いで収入を増やす

消費税は、とにかく全員が一方的に徴収されるので、ビジネスパーソンが消費税増税に対してできる対策なんて何もありません。ですので、この機会に副業で稼いで収入を増やすことを考えてはどうでしょうか。

私は大蔵省(現財務省)にいるころから副業として執筆活動を行っていました。ペンネームを使っていたので、まったくバレませんでした。お陰で、金銭的にも精神的にも余裕のある生活ができました。

副業は、正々堂々と言うか、徹底的に隠すか、どちらかにすべきでしょう。中途半端はよくありません。もし副業の内容が本業と少しでも関係する場合は、徹底的に隠したほうがいいと思います。

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髙橋洋一(たかはし・よういち)

政策工房代表取締役会長

嘉悦大学教授。1980年に大蔵省(現財務省)に入省。大蔵省理財局資金企画室長、内閣参事官(首相官邸)などの要職を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍。

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(政策工房代表取締役会長 高橋 洋一 構成=大井明子 撮影=岡村隆広 写真=PIXTA)

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