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アングル:銃撃治療で心を病む米医師たち、反対運動が救いに


Daniel Trotta

[ニューヨーク 15日 ロイター] - 全米ライフル協会(NRA)との最近の衝突が、銃撃事件の被害者治療にあたる医師たちの一部に、自らのトラウマを癒す方法を提示した。それは銃暴力への反対活動に参加することだ。

銃創を手当てした外科医が発症する心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、イランやアフガニスタンの戦争に従事した兵士と同レベルとされる。外傷外科医らは、思ったことを発言することで、手術室に次々と運び込まれる被害者の治療にあたることが生む怒りや絶望に対処しやすくなると感じている。

「啓発活動への参加は、燃え尽き症候群に対処する1つの方法だ」。フィラデルフィアのテンプル大学病院で外傷外科医を務めるジェシカ・ベアード医師はそう語る。

医師たちとNRAの衝突は昨年11月、米国内科学会(ACP)が銃撃による死傷者防止と米国の死亡率について論文を出したことがきっかけだった。NRA側がこれに対し、「偉ぶった銃反対の医者たちは、自分たちの持ち場からはみ出るな」とツイートで警告したのだ。

これを受けて、ネット上で反発が沸き起こった。

全米の外傷外科医たちが、銃撃被害者を手術した後の血だらけの手術着や手術室の写真をソーシャルメディアに投稿し、「#ThisIsOurLane(これはわれわれの持ち場だ)」というハッシュタグを付けて抗議したのだ。

運動は広がった。ペンシルバニア州では、医師らが州議会に政策変更を働きかけるグループを作った。カナダでも、「銃からの保護を訴える医師たち」というグループが結成され、4月にデモ活動を行った。

医師たちの行動を、2018年2月に17人が犠牲となった米フロリダ州パークランドの高校で発生した銃撃事件を受けて、銃規制を訴える全米規模の抗議活動を主導した同校生徒になぞらえる専門家もいる。

「#ThisIsOurLaneの投稿は、外傷外科医が受けている銃暴力の影響を直接伝えた。銃撃被害者の治療によって受けているトラウマを訴える、われわれ流のやり方だった」と、ベアード医師は言う。

多くの医師にとってこれは、科学的または政治的に銃暴力と戦うため、行動を起こすきっかけになった。

ベアード医師は研究を選んだ。死や苦しみを軽減させるための公衆衛生上のテーマとして、銃暴力を取り上げた。

4月に公表した同医師の研究によると、フィラデルフィアで外傷治療に対応している3病院には約2カ月半で、被害者4人以上が同時に運び込まれる無差別銃撃事件に相当する数の銃撃被害者が運びこまれている。

もっと政治的なやり方を選んだ医師もいる。

ACPは、銃購入者の身元確認を義務付けたり、家庭内暴力をふるう購入者のチェックを厳しくするなどの「合法火器の購入に対する適切な規制」を含めた対策を支持している。

やはりテンプル大病院で外傷外科医を務めるゾー・メア医師は、「銃傷害防止を目指す外傷センター連合」の設立にかかわった。同連合では、ペンシルバニア州議会に対し、政策変更を訴えている。

同連合の最初の活動は、法的に「危険」とみなされる人物から当局が銃を没収できるようにする法案を支持することだった。

メア氏は、米国の年間4万人近くに上る銃撃犠牲者の多くは防ぐことができた、という考えが、活動の原動力になっていると話す。

「現実的に予防可能なこの公衆衛生上の危機と戦うために、私を奮い立たせるこの力は、確実に私を『燃え尽き症候群』から守ってくれている」と、メア氏は言う。

NRAは、こうした研究は、米憲法修正第2条で保証された銃を保持する権利を制限するために行われているとして反対している。NRAは、コメントの求めに応じなかった。

<倫理的なけが>

医療現場は長年、燃え尽き症候群の影響を受けてきた。一部の医師が「倫理的な負傷」と呼ぶこの症状は、自分自身との断絶や、感情の疲弊、達成感の低減などを感じること、と定義されている。

また、自分が代わりに外傷を受けたように感じたり、同情疲れなどの症状が出ることもあり、これらは看護師や他の手術室スタッフ、救急隊員など、外傷治療に携わる全ての医療関係者が経験し得るものだ。

外傷外科医の40%にPTSDの兆候が出ており、15%はPTSDの診断基準を満たしていると、2014年の米国外傷外科学会の学会誌による調査は指摘している。

これは、退役軍人省が報告した15.7%に上るイラクやアフガニスタンの従軍兵のPTSD該当者に匹敵する数字だ。

医学誌によると、400人の医師が毎年自殺しているが、これは1大学の医学部1学年に相当する数だ。

近年では、兵士や記者、その他の医療関係者が、悲劇的な出来事を目撃したことによる精神的な影響に対して、よりオープンに立ち向かうようになっている。だが、外科医は遅れている。

「彼らは、もう無理だ、精神的に限界だ、と口にする最後の人々になるだろう」と、ニューヨークにあるイエシバ大学のナンシー・ベッカーマン教授は指摘する。

ニュージャージー州のルトガーズ大病院の外傷外科医で活動家でもあるステファニー・ボン医師は、手術室で外傷を見ることで、ニュースで銃撃事件が報じられると同時に被害者搬入を知らせる呼び出し音が鳴るなどの日常のストレスがさらに増していると話す。

「どんなに現状に立ち向かおうと努力しても、次々と患者が運び込まれ続けることに、無力感がある」と、ボン医師は話した。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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