- 2019年05月21日 06:15
山口真帆を追い出した"AKB商法"の行く末
2/2■性的欲望がはち切れそうな連中の前に女の子をさらす商法
説明責任などといういい古された言葉は使いたくないが、社会問題化したNGT事件の大本はAKB商法にあるこというまでもない。
このAKB商法には始めから危うさが付きまとっていた。握手券を買えば、好きなアイドルと握手ができる、触れられるというのだ。週刊誌で伝えられるところによると、このやり方はキャバクラから発想したといわれる。
性的欲望がはち切れそうな連中の前に女の子をさらす商法など、普通は批判されるはずだが、テレビ局も出版社もレコード会社も、この商法に乗ってバカ騒ぎしたため、当初は省みられることがなかった。
2014年5月25日に岩手県滝沢市で開かれたAKB48の握手会イベントで、のこぎりを持った男がグループのメンバー2人とスタッフ1人を切りつけ、ケガをさせた事件が起きても、こうしたことを止めろという論調は広がらなかった。
だが、しょせん人気商売である。人気があるうちはいいが、落ち目になれば、今回のNGT48のように批判が殺到し、これまで沈黙してきたメディアも、自らを省みることなく批判を浴びせてくる。
■秋元康の「解散宣言」こそが、生み出した人間の責任
詳しくは知らないが、秋元がプロデュースした「おニャン子クラブ」も、人気に陰りが出て解散したのであろう。
AKB48も、人気を支えていたメンバーも次々に卒業していって、CDも視聴率も下降線をたどっている。このままいけばAKB48やその類似グループも雲散霧消すること間違いない。
これ以上不祥事を起こさないうちに、秋元が「解散宣言」してやるのが、生み出した人間がやるべきことだと思う。
なかにし礼という作詞家がいる。作家としても『長崎ぶらぶら節』で直木賞を受賞している。私の好きな作詞家だ。
■作家なかにし礼が一つだけ触れてほしくない過去
サンデー毎日(5/5・12号)に巻頭詩「新しい時代の人々へ 平和を愛する友たちと歌う鎮護歌と賛歌」を寄せている。
「昭和二十年八月十一日午前十時 六歳 その時、私の人生という現実が始まった
現実とはまず逃げること 家を棄て街を棄て命以外の全てを棄てて 避難列車を奪い合う群衆を尻目に 軍人退却用の列車に潜り込んだ」
満州に生まれ育ったなかにしが、ソ連の爆撃を逃れ、様々な辛苦を味わい日本へ流れついたところから始まる。終戦後の焼け跡に「リンゴの唄」が流れ、すべてを失ったが、民たちは解放された喜びをかみしめていた。新しく公布された憲法には「基本的人権・国民主権・戦争放棄というかつて見たこともない文字が輝いていた」と歌う。戦争なき時代を奇跡などとせず、当然のこととして継続させようと呼びかけ、
「新しい時代の人たちよ 約束しよう 令和の天皇が象徴としてのあるべき姿に 心の揺らぎを見せるようなことがあったら ご即位を言祝(ことほ)ぎつつも躊躇(ためら)うことなく 異議を唱える勇気を胸に秘めておくことを」
と高らかに歌い上げる。引揚者という経験をした彼でなくては書けない、格調高く、しみじみと胸にしみ込む詩である。
日本を代表する作詞家・作家であるなかにし礼だが、彼には一つだけ触れてほしくない過去がある。
■このままでは日本を代表する作詞家の唯一の汚点になる
週刊ポストの1971年8月23日号に掲載された「芸能界相愛図事件」がそれである。ポストの記者が2人、なかにしのところへ取材に行き、なかにし自らが話したという仕立ての記事になっている。
だが、なかにしは、取材に応じなければ私生活を暴くといわれたと告訴し、記者2人が神保町の路上で逮捕されたのである。
その後、2人は不起訴になる。私はこの事件について取材し、2010年9月30日号のアサヒ芸能に署名原稿を書いた。
私はなかにし礼にも話を聞いた。もちろん本人は全面否定で、そのことを取り上げることもよしとはしなかったと記憶している。
当該の記者には話を聞けなかったが、当時の担当編集者には話を聞くことができた。誌面で私がどう書いたのかをここでは詳(つまび)らかにしないが、功成り名を遂げた彼にとって、思い出したくもない人生唯一のシミのようなものなのだろう。
今やなかにし礼と並んで、日本を代表する作詞家である秋元康にとって、AKB商法が彼の光り輝く人生の唯一の汚点にならないか、心配である。
私の好きな与謝野鉄幹の「人を恋うる歌」の一節を秋元康に贈りたい。
口をひらけば嫉みあり 筆を握れば譏(そし)りあり
友を諌めに泣かせても 猶(なお)ゆくべきや絞首台
(文中敬称略)
----------
元木 昌彦(もとき・まさひこ)ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)などがある。
----------
(ジャーナリスト 元木 昌彦 写真=時事通信フォト)
- PRESIDENT Online
- プレジデント社の新メディアサイト。



