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太陽光の買取価格42円、袋叩きでかわいそうなのでちょっと擁護してみる

再生可能エネルギーの固定価格買取制度というのが、去年の国会で法案が成立して、今年の7月1日からスタートします。

 その買取価格が「調達価格等算定委員会 」というところで議論されており、4月25日にその案が発表されたようです。

 大きなニュースにはなっていませんが、ネットの中の私がよく徘徊する界隈では、「価格が高すぎる」という形で割と話題になっています。
 いくつか挙げておきましょう。興味のある方はどうぞ。

太陽光発電の強制買い取り価格42円/kWh、20年間保証の異常(藤沢数希)
太陽光の買い取り価格42円は不正な利益誘導だ(池田信夫)

 いずれもごもっともな意見だとは思いますが、「高すぎるから悪だ」というのはちょっと単純すぎる感じもします。
 詳しくないので詳細な反論は書けないのですが、高い価格にもそれなりの妥当性があるという立場からの基礎的な考え方を書いておきます。


 本当は、太陽光、風力、地熱といった発電の種類ごと、また、家庭用か事業用かといった規模ごとに様々な論点があるのでしょうが、単純化するため、家庭用太陽光発電を念頭に書き進めます。



Q1火力発電の単価に比べて数倍というのは異常な高値ではないか。


A1.再生可能エネルギーのコストは、技術の進歩により下がっていく。しかし、コストが高い時点でもある程度の量が売れないと、技術開発への投資がされず、技術の進歩は起こらない。

 高い価格での買取りは、永久に続けるものではなく、技術が進歩してコストが下がるまでのつなぎとして行うもの。


Q2.本当にコストが下がる見込みはあるのか。


A2.ここは議論が分かれる最大のポイント。それなりに下がるのは間違いないが、数十年経てば火力発電と競争できる程度まで下がるという意見もあれば、高止まりするという意見もある

 なお、火力発電のコストは、長期的には燃料価格の上昇である程度上がるのは間違いないし、地球温暖化の原因となるCO2排出のコストを正当に上乗せすれば、さらに上がることとなる。



Q3価格を固定すると、コストを下げる努力をしなくなるのではないか。


A3.再生可能エネルギーのコストの大部分は、太陽光パネルの購入・設置工事といったイニシャルコスト(初期投資)。いったん設置したもののコストは確定し、もはや下げようがない。下げることができるのは、将来の太陽光パネルの価格。

 固定価格買取制度は、そのようなコスト構造に対応して、2012年に設置したものの価格は42円/kWhで20年間固定するが、2013年に設置したものは○円、2014年に設置したものは○円と徐々に下げていき、コスト低減を促す仕組み。



Q4ヨーロッパと比べて高すぎるのではないか。


A4.確かに、ドイツの2012年の家庭用の太陽光発電の価格は、24.43ユーロセント/kWh(26.1円)で、今回の日本の案の42円より安い。しかし、これで単純に比較はできない。理由は3つ。


 1つめは、太陽光発電の普及段階の違い。ドイツは2004年に57.4ユーロセントという高い価格で開始し、急速に普及が進み、大幅に価格を下げて今の価格になっている。普及が遅れ、制度を新たに導入しようとしている日本と同一視はできない


 2つめは、買取りの仕組みの違い。ドイツでは発電した全量をいったん24.43ユーロセントで売電し、家庭で消費する電力は別途購入する。日本では発電した電力は家庭で消費し、余った分を売電するため、全量を42円/kWhで売れるのではなく、家庭で消費する分は電気料金(24円/kWh)が浮くだけ

 3つめは、為替相場の問題。24.43ユーロセント=26.1円は、1ユーロ=106.8円で換算しているが、2009年は130円台、2007年は160円台であったように、為替相場は大きく変動する。国際比較はその時点の為替レート換算で単純にはできない



Q5.価格を公定するのではなく、導入の義務量だけを決定して、価格は入札でできるだけ安く購入すべきではないか。


A5.「導入の義務量だけを決定して、価格は自由」というのは、従来のPRS法という法律による仕組み。その結果は、購入価格を安く抑えることはできたが、再生可能エネルギーの導入拡大という目的は達成できなかった

 導入の義務量は、電力会社が確実に購入できる量に限定されるため、どうしても少なめに設定されることとなる。そして、どの種類の電力をどの程度の量買うかが、買いたくない電力会社の裁量にゆだねられるため、再生可能エネルギーの導入拡大があまり進まない方法での買い方が行われる。

 価格を固定することで、再生可能エネルギーの事業者が安定的な事業計画を立てられることになり、導入の大幅な拡大が進むことになる。もちろん、電力の消費者が費用を払うことになるので、高くなり過ぎないようバランスを取ることは重要。


 あ~あ、ウルトラ基礎的だなぁ。しかも、間違いがあるかもしれない。まったく知識が足りません。
 それでも一応、「高すぎるから悪だ」というほど単純な問題でないのは、伝えられたかと思います。


 ポイントは、ヨーロッパとの価格の比較はほとんど意味はなくて、将来的にコストが十分に下がると期待できるのか、ということ。
 現時点で高すぎると批判するよりも、「○年たっても○円以下に下がらないなら問題だ」という批判をした方が、よりまっとうで、影響力がある気がします。


 こういう、反対者がいることを想定した反論のQ&A、経済産業省もちゃんと公表してるかと思いましたが、見つけられたのはこのページ
 う~ん、制度の説明だけで、反対者がいることはまったく意識されていませんね。


 「韓流ゴリ押し騒動に見る、大組織の批判への対応のあり方 」でも書きましたが、行政はネット上の批判にはほとんど無関心で、反論の必要があるとは考えません。
 意思決定に影響力のある関係者の意見ではないので、放置しても問題ないと考えるのも、わからないではないですけどねぇ。

 個人的には、行政も、ネット上の批判にもう少し大真面目に反論する方がいいと思っています
 価値観により見解が分かれる議論はともかく、明らかな誤解とか荒唐無稽な批判が、公式の反論がないので拡散している例も散見されますし。
そういうものが拡散して信じられ、行政や政治に対する信頼が掘り崩されていくことに対し、もう少し危機感を持つべきではないか、と思っているところ。



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