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地銀の経営難は誰の責任か

大手地銀の社外取締役をしている知人と話していたところ、6月末の株主総会に向けた準備が大変だとか。社外取締役の役割に注目が集まっているのに加え、地銀の経営がジリ貧だからである。

日本の銀行には、預金が集まる。その集めた資金の貸出先がない。仕方ないので国債に資金を振り向けようにも、リスクの小さな短期国債はマイナス金利である。ということは、特別な状況にでもないかぎり、短期の国債で運用すれば損をする。「どうすりゃいいのさ、この私」である。

長期国債はもちろん、株式や外債で運用する地銀も多出している。カムフラージュかどうかはともかく、外債や株式などで運用するため、投資信託を設定するのが流行りの1つである。問題は、長期国債には価格変動がつきまとう。外債や株式はさらに価格変動が大きい。貸出による利ざやが縮小している現在、長期国債、外債、株式での運用により評価損が発生すれば、たちまち利益が吹き飛んでしまう。

結果として、地銀の収益がジリ貧にあり、赤字のところもある。当然、株価が冴えない。

かつて、地銀は地方の殿様であった。その地方の名士が大株主になっていた。余程のことがないかぎり、大量の株式が売りに出ない。株価は安定し(地銀が売りに出た株式を、新たな株主に持ってもらうように仕向けることが多く)、安定した配当と、数年に一度の株主割当増資があり、これらによって地銀の株主になれば確実に儲かった。

当時と今では様変わりである。このように地銀が苦境に陥った原因は何なのか。

日銀が大量に資金を供給し、政策金利をマイナスからゼロ%に誘導している。これが直接的な原因である。もう少し考えれば、こんなバーゲンセール的な金利水準でも、借り手が多くないことに思い至る。日本経済に活力がない。老齢化と人口減少によって経済の成長に期待できない。だから、借金して設備投資をしても、借金と廃屋だけが残るに等しい。経営者がそう思ったとしても、責めることはできない。

とくに地方は、先端的に老齢化と人口減少が進み、商店街がシャッター街になってしまっている。そんな地方を地盤とする地銀に「頑張れ」、「何をしてる」と叱咤するのは、疲労困憊したマラソン選手に「もっとしっかり走れ」と指示するに等しい。これが今の金融庁の姿勢かもしれない。

とはいえ、日銀や金融庁に責任を追わせるのは酷だろう。政府として、日本国内に銀行が多すぎることを早く認識したうえで、その異常な状態をどうするのか、徹底的に考えるのが本筋である。

多くの地方には、そもそもの地銀、相互銀行だった第二地銀、信用金庫があり、ゆうちょ銀行がある。さらに、信用組合、農協などもある。そんな多くの銀行が(日銀の定義では銀行から外れるかも知れないが、個人からすれば何の変わりもない機関が)ごろごろ転がっている。この状態を放置しておいて、今の日本でどうしようというのか。

地銀をはじめとする地域金融機関の経営を多少なりともまともにするには、嫌というほど数のある金融機関の整理が急務である。地域の隅々まで展開しているゆうちょ銀行の役割を再定義して地域に貢献させるのか。ゆうちょ銀行以外の金融機関を一気に統合するのか。いずれにしても、抜本的措置を逃れることは不可能である。

僕自身、地銀に勤めようと思ったことがある。45年前のことである。世の中、何がどう変わるのかの予測が難しい。多少、先のことを考えていたとしても、地銀がここまで大変なことになるとは誰が予想しただろうか。

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