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丸山穂高議員の問題に見る、質問の仕方と表現の自由

日本維新の会所属(当時)の衆議院議員である丸山穂高氏が、北方四島の住民と元島民の交流を目的として行われているビザなし交流の宿泊地である、国後島の「友好の家」で、元島民であり、訪問団の団長である大塚小弥太氏に対して「団長は戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか、反対ですか」「戦争しないとどうしようもなくないですか」などと、戦争か否かを「質問」した問題。(*1)

僕が気になったのは、この問題が発覚した後の記者会見で、丸山議員が「戦争で取られたわけですから、それに対して取り返すということに対して、賛成か反対かというふうに聞いた」(*2)という言い方をしている点である。

この認識は、丸山議員の無責任さを明確に示している。つまり「聞いただけなのだから、自分には責任はない」と主張しているのである。

そもそも「質問」というのは相手の主張を引き出し、より対話を深めるために行うものであるはずだ。

だが、丸山議員が行った「質問」は相手に戦争か否かの即決を迫り、相手のこれまでの言動という蓄積をすべて無下にする行為である。これは「質問」と言うよりは「詰問」や「査問」とでも呼ぶべき行為である。

もし、丸山議員の詰問に対して、「戦って取り戻したいと思う。しかしそのようなことはあってはならない」などとでも口にすれば、丸山議員は「戦争をしてでも北方領土を取り戻すことが島民たちの本心である」と、自分の主張を補強するために利用したはずだ。

しかし大塚団長は「戦争は必要ない」「戦争という言葉は使いたくない」と、毅然と対応した。

そしてさらに丸山議員は「何をどうしたいですか?」と聞いた。

この質問で丸山議員は戦争をするのかしないのかという安易な二択を相手に迫りながら、さらに最終的な決断を大塚団長に押し付けたのである。

大塚団長は「戦争はしたくない」と言いながらちゃんと「個人的な意見です」と付け加えることで、この意見を訪問団の総意として取られることを避けている。

この一連のやり取りを聞いて、これを「聞いただけ」などと主張する丸山議員に人間としての不誠実さを感じるとともに、北方領土問題というデリケートな問題を扱う資格が無いということはよく分かる。

あまりに単純化された質問に、相手に対する敬意を持たない不遜さ。これを「聞いただけ」と主張することの倫理観のなさ。このような人間に国会議員という権力が付与されているのである。

そもそも、丸山議員は衆院沖縄北方問題特別委員会の委員という立場として参加している。

北方四島へのビザなし渡航は本来ビザを取得しなければ立ち入ることのできない地域への渡航である。

ロシア側からすれば当然「ロシアの領土なのだから、ビザをとるのが当然」であり、日本側からすれば「日本の領土なのだから、ビザが必要などとんでもない」のである。

だからこそ、日露双方の北方四島での交流を実現するためには「ロシア側は特例としてビザなし渡航を認める」かつ「日本側は特別にビザを取らずに渡航していることを認識する」という特別扱いを双方の理解の上で行う必要がある。(*3)

そうしたデリケートな場であるからこそ、参加できるのは元島民や、報道関係者、そして政治家などの北方領土問題に対する理解を持つ必要があり、問題に深く関わるべき人たちに限られている。当然、参加者には日本の代表として、適切な行動が求められている。そうした要請を丸山議員は裏切ったのである。

今回、丸山議員がやったことは、オブラートに包んだ微妙な政治的なやり取りを「戦争で島を取り戻すか否か」と安易な二元論にし、これまでの積み重ねをすべて無に帰す可能性のあった愚行としか言いようがない。

ただでさえ、日本の首相が国会で「北方領土は日本固有の領土」という言葉を言えなくなる(*4)ような、極めて日本が不利に置かれている状況で、丸山議員の言動はさらなる不利益を日本にもたらすことになる。

丸山議員はゴチャゴチャ言わず、潔く議員の職を辞するべきである。それが議員としての「最低限の素質」であると言えるだろう。

もう1つ、気になったことがある。

日本維新の会は、後に丸山議員の除名を決定したが、その前に日本維新の会代表の松井一郎氏が「日本維新の会としては、武力で領土を取り戻す考え方は持っていない」という考えを示す中で、丸山議員の言動に対して「言論の自由」であると主張していた。(*5)

憲法21条に記載される表現の自由とは「国の検閲からの自由」であり、国によって表現を妨げられたり強制されないことである。

国会議員という国の権限を持つ丸山議員が、議員として参加したビザなし渡航の場で、元島民に対して質問と称した詰問を行い、戦争か否かを迫ったことは、けっして言論の自由として認められる行為ではない。

それどころか国の権力を恣意的に行使し、元島民という個人を問い詰めるという、言論強制と言われても仕方のない行為である。松井氏はこれを「言論の自由」であると論じたのである。この松井氏の言動は、しっかり記憶されるべきである。

国会議員が元島民に「戦争をして取り戻すか否か」などという選択を一方的に迫ることを指して、言論の自由と主張するのは、憲法21条に記されている内容を理解していないとしか言えない。

そして実際、丸山議員自身も、自身へ向けられた辞職勧告決議案に対して「この国の言論の自由が危ぶまれる話」などと、国の権力を恣意的に利用したことを言論の自由であると主張しているのである。(*6)

今後、日本維新の会に所属する議員や関係者が、表現の自由にまつわる何らかの表明を行った際には、今回の松井氏や丸山氏の発言を参照し、その表現の自由が本当は何を指しているのかを、しっかりと見極める必要があるだろう。

*1:丸山議員の戦争発言 波紋広がる(NHK)https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20190514/0010225.html
*2:丸山議員陳謝 “戦争発言”釈明(NHK)https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20190513/0010190.html
*3:ビザなし交流について(北方四島ポータルサイト)http://4islands.jp/exchange/post-38.php
*4:北方四島は日本の固有の領土か「お答えすることは差し控えたい」政府答弁書(NHK政治マガジン)https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/14035.html
*5:維新・丸山穂高議員「戦争でこの島を取り返す」発言に、松井一郎・代表「言論の自由」(Togetter)https://togetter.com/li/1354926
*6:丸山議員「言論の自由危ぶまれる」 ツイッターで「辞職勧告決議案」に反論(毎日新聞)https://mainichi.jp/articles/20190515/k00/00m/010/258000c

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