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池袋事故、20年前の職場名報道は人権侵害ではないか

池袋の暴走交通事故なんだが、報道内容がどうも気になる。

というのも、事故を起こした運転者について、「旧通産省工業技術院の●●●●(実名)・元院長(87)」などと報道しているからだ。

彼はなぜ、かつての職場名を晒されているのか。通常、高齢者の交通事故加害者であれば「無職の誰々(67)」だろう。事故当時の氏名年齢職業を出すのが基本だから。

なのになぜ彼だけ、もう20年以上前に退職したはずの企業・団体まで(どころか配属先まで)報道するのか。いや、かつての所属先に関連する経済犯罪などなら、わかる。だが今回、ただの交通事故である。

また報道の基本姿勢として、高齢者は以前の職場名を出すと決めているなら別だ。たとえば「元東芝テック技術開発部の誰々さん(87)が交通事故を起こした」とか。しかしもちろん、そのような交通事故報道は見たことがない。高齢者どころか現役の企業人の事故であっても、せいぜい「会社員の誰々さん(34)」とかだろう。配送業者が業務中に事故したとかなら別だろうが、仕事と無関係のただの交通事故であれば。

特定の個人だけこのように恣意的に元職場を報道し晒し者にすることに、強い疑問を覚える。人権侵害事案だろ、これ。
同時期の幼児散歩事故でも、被害者である保育園関係者をあたかも責任があるかのごとく問い詰める記者会見が問題になったばかりだ。

普段人権保護の味方を自認するメディアがこうした姿勢では、公正な報道など期待できない。報道でなく、ただのお茶の間感情増幅マシンでしかない。テレビなどは以前から、面白おかしく「霊能力者」を使っているくせに、詐欺で逮捕されると途端に「自称霊能力者」として断罪する。あれと同じ悪臭を感じるのだ。

実際、今回の交通事故では、加害者は怪我で入院した関係から、まだ逮捕されていない。もちろん実際に加害者なのは明白だが、逮捕前という事案の外形上、「容疑者」ではない。なのに読売新聞が「容疑者」として報道してしまっている。

これなども茶の間迎合・視聴者感情迎合の、最たる例だろう。メディアとしての姿勢がぶれぶれだ。

豊田商事会長刺殺事件で、会長の自宅に殺人犯が侵入するのを(もちろん犯罪)、メディアの記者連中は止めるどころか夢中でカメラを回していた。それどころか、冷静に判断すべきデスク側もそれを問題視せず、刺殺現場を「ニュース」として流してしまった。あの事例を思い起こさせる。

今後もこのような晒し者報道を続けるつもりなら、最低でも、「本件はこれこれの理由により、20年前の職場を報道しています」などと、毎回自社の報道基準を明確に注釈として入れるべきだ。それが馬鹿らしいと言うなら、そもそも職場名の晒し自体がおかしいのだ。

「他社が暴露したから我が社が追従してもいいだろ」的な判断では、メディアスクラムの典型と言われても仕方がない。

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