記事

「法務」はどこに居るべきなのか?

1/2

今日はゆったりとした休日、ということで、ちょっとかしこまったエントリーを。

どこの会社で、というわけではないのだけれど、最近、「法務部」をたたんでしまう会社が結構目立つようになってきた気がする。

歴史を紐解くと、半世紀くらい前までは、一部の大手メーカーや商社等を除いて、「法務」の機能が「部」のレベルで独立しているような会社はほとんどなく、総務部や経営企画部、あるいは管理本部といった類の大きな枠の中で細々と契約審査や訴訟といった「法務」っぽい仕事をする人たちが生きていた、というところが多かったと聞いている。

それが、やがて「法務係」くらいの存在になり、「法務室」とか「法務課」といったユニット単位に格上げされ、ここ10年~20年の「コンプライアンスブーム」の下で体制が増強されたのをきっかけに、遂に部門として独立を果たす、というプロセスを経て今に至っている、というのが自分の理解(もちろん、”最終形態”までたどり着いていない会社もまだまだたくさんあるが、つい最近までは次のステップ「進化」することはあっても、逆方向に戻ることは稀だった)。

会社によって「独立」までの歴史は様々で、大きな不祥事や訴訟に直面したことをきっかけに舵を切った会社もあれば、同業他社を横目で見ながらライバル心に駆られて設置した会社もあるだろうが、どんな会社でもそこに至るまでの過程では、ボードレベルのメンバーと法務の現場を担っていた人々との間で、少なからぬ駆け引きはなされただろうし、時には″魂のぶつかり合い”もあったことだろう。

どんな組織でも″創業”にかかわった人の思いは強い。
特にどちらかと言えば会社の中では”日陰”の存在だった法務部門の場合はなおさらで、そういう人たちの思いの上に「法務部」は作られてきた。

だが、時代は変わる。

元々、歴史的にも、仕事の内容的にも、一見すると単なるコストセンターと思われがちな「法務」には、コスト削減圧力が付いて回るのが常だった。
そして、ここ数年、それに加えて、どんな有名企業、大手企業でも、組織を維持するための「人」をこれまでのようにコンスタントには採用できない、という問題(そして、採用、雇用することによるコストが跳ね上がる、という問題)も生じるようになってきた。

そうなると、コスト以前の物理的な問題として、自ずから間接部門全体を縮小させる方向に向かわざるを得ない会社は増えてくるわけで、そうなったときに真っ先に狙われるのは、歴史が浅く、社内的なポジションも決して高くない「法務部」。

会社によっては、世代的に「部長」に相応しい人が現れたら「部」に格上げして、いなくなったら「課」に戻す、ということをしているところもあったりするようだから、その辺はフレキシブルに考えればよいではないか、と言われてしまいそうだが、「部門としての独立性」とそれがもたらす有形無形の効果を考えると、やはり「法務部」が独立した部、本部として存在していることの意義は非常に大きい、と自分は思うわけで、そこで「法務」の何たるかをよく分かっていない者たちが安易な整理・統合に走ってしまうと、会社の将来を歪めることすら懸念される。

そこで、以下、その辺の話を少し敷衍して書いてみることにしたい。

「法務部」を「管理部門」の中に吸収してしまうことのデメリット

近頃、「事業部門」との対比で、「法務」を「管理部門」の中に位置づけようとする整理がされているのをよく見かける(例えばCGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)第2期で議論されている「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(仮)」案*1の74~75頁の記載などはその典型といえる)。
その前提にあるのは、単純に言えば「企業の中で″悪さ”をするのはもっぱら『事業部門』であって、『管理部門』はそれを防ぐために管理・監督する立場にある」という見方なのだろう。

だが、企業の経営に重大なインパクトをもたらす不祥事を引き起こすのは「事業部門」だけではない。
「総会屋への利益供与」みたいな古い話を引いてきたら怒られてしまうかもしれないが、最近の話題を見ても、オリンパスの事件しかり、東芝の事件しかり、日産の事件しかり、「トップ」主導で引き起こされるもっとも深刻なタイプの問題の根源は、実のところ総務や財務、人事といった「管理部門」の中にあることも決して稀ではないのである*2

それを踏まえた時、それまでまがりなりにも独立して機能していた法務部門を、総務や人事、場合によっては財務までごった煮で入っているような「管理部門」の中に組み込んでしまうことが果たして良いことなのかどうか、自分は大いに疑問を感じている*3

先に引用したCGS研究会の実務指針案の記載も、「独立性を保つ必要がある」という点に関しては首肯できるものの、その独立性の単位が「管理部門」でひとくくりにされている、という点に関しては、企業の実態への踏み込みが足りないように感じられてならない。

もっとも、「法務」を「管理部門」の一カテゴリ―として位置付ける限り、有識者がどんなに声高に「独立性」を強調しても、「法務部門」が多くのスタッフを抱えたまま単独で生き残っていくには、今の企業を取り巻く状況が厳しすぎる、というのが実態だということは先に述べた通り。

そこで、発想の転換が必要ではないか? という問題意識から出てきたのが、次の章の試論である。

あわせて読みたい

「コンプライアンス」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    よしのり氏「安保破棄してくれ」

    小林よしのり

  2. 2

    奨学金延滞の若者が次々と裁判に

    BLOGOS編集部

  3. 3

    日本の本気を選挙対策とみる韓国

    tenten99

  4. 4

    田原氏「麻生大臣とんでもない」

    田原総一朗

  5. 5

    彼女の生理日を知りたい男性9割

    工藤まおり

  6. 6

    海外まできて日本叩く迷惑な人々

    文春オンライン

  7. 7

    堀江氏の保育士めぐる発言に反論

    田中俊英

  8. 8

    点滴を巡る朝日記事に医師が憤り

    高山義浩

  9. 9

    LIXIL総会で株主側が異例の勝利

    川北英隆

  10. 10

    すぐバレる嘘で窮地に陥る文政権

    高英起

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。