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ブロックチェーンはいつ通貨を超えるのか

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電子マネー、2次元コード決済、仮想通貨などがニュースで話題になることも増えた。実は今、お金の形が決定的に変わろうとしている。お金のあり方が変わると、私たちの生活や仕事はどうなるのか。金融システムに詳しい研究者の翁百合さんに伺った。

価値尺度、交換可能、貯蔵可能がお金の機能

これからのお金について考える前に、まず、お金とはどういう機能、役割を持つものだったのかを振り返ってみましょう。


日本総合研究所理事長 翁 百合さん

紀元前、自分の欲しいものを得るために人々は物物交換をしていましたが、物同士の交換では、往々にして、お互いの希望どおりにならないことがありました。そこで、①価値の尺度になるもの(みんなが欲しがるもので、価値がある程度定まっていて、ほかのものの価値を測るのに便利なもの)、②交換できるもの、③貯蔵できるもの、という3つの機能を果たすものを交換のなかだちとして使ったのがお金の始まり。

中国の殷周(いんしゅう)時代の貝はよく知られた例です。貝は当時、貴重なもので、貝殻何個で何々と交換、という統一の測り方ができ、しかも貯めることもできたからです。現在でも「費」や「貯」などお金に関係のある言葉が貝偏なのはこのためなんですね。ドイツ軍の戦争捕虜収容所では定期的に配給されるタバコが、ほかのものとの交換手段として流通していました。

紙幣やコインは先ほど挙げた3つの機能を持つ交換手段として優れているため、現在まで長らく貨幣として使われています。

ところが、テクノロジーが進展するなかで、情報技術と金融が結びつき、さまざまな革新的な動きが出てきた。これがフィンテックです。フィンテックは、インターネット、スマートフォン、AIなどを利用した金融サービスの形で世界中に広がっています。

フィンテックにより、消費者の利便性は向上し、さらに、その技術を導入するコストも大幅に低下したため、スマートフォンでの決済など、現金を使わない決済が大変なスピードで拡大しています。

電子的な決済を伴うeコマースとそのデータを使ったマーケティングなど、民間企業が競争しながら、さまざまな付加価値の高いサービスを提供するようになってきています。

海外の先進的な例では、中国のアリペイやスウェーデンのSwishなどがあります。お年玉や、ストリートライブなどでの「投げ銭」が、スマホのアプリで支払い可能に。

スウェーデンではまた、「eクローナ」というデジタル通貨を中央銀行が発行する予定で、これは世界でも先進的な試みです。

日本でもLINE、オリガミなどが、フィンテックを利用した、瞬時に簡単にお金をやりとりできる、決済サービスを次々と提供しています。

仮想通貨以外にも広く使えるブロックチェーン技術

さて、お金のデジタルデータ化が急速に進むことと並んで、もうひとつ重要な技術革新があります。それは、仮想通貨を成り立たせる仕組みでもある「ブロックチェーン」です。

これは、みんながウェブ上に共通の「台帳」を持ち、みんなが見ている中で、取引の記録を残していくというものです。中央政府のような管理者がいないのが大きな特徴です。

衆人環視の中、すべての取引履歴が残るので、透明性が高いと言えますし、中央の管理者をいちいち通さずに、利用者同士でピア・トゥ・ピアという直接取引ができるのも便利な点です。また、取引履歴は非常に解読するのが難しい「暗号」を使っているなど、改ざんされにくい利点もあります。

ブロックチェーンはビットコインなどの仮想通貨で有名になりましたが、利用範囲はそれだけにとどまりません。貿易、送金、不動産取引などの契約、合意システムなどに幅広く応用可能です。たとえば、ブロックチェーンを利用した「Everledger」というシステムは、すでにダイヤモンドの大手ブランドであるデビアスの取引に使われています。

フィンテックやブロックチェーンでカギを握るのは、一にも二にも「データ」です。

たとえば、エストニア政府は2000年代から、投票、納税、住民登録、法人登記、医療、教育、警察等ほとんどすべての行政分野にわたり、10年以上かけて電子化を推進し電子政府が成立しています。国民の電子納税率は98%で、役所に行くのは結婚、離婚、不動産登記の最大3回だけといった具合です。

1度国民からデータをもらったら、2度と同じデータは提出させないという徹底したデータ管理と連携による、データの共有、即時利用が可能なのです。ひとつの将来像として大変示唆的です。今後の私たちの生活や、消費の場面に、データの利活用を中心とした、フィンテック、IoTの技術が浸透するのは間違いありません。これらの例からもわかるように、お金の現在、そして将来像は、現金ではなく、「データ」なのです。

かつては、お金は銀行を通じてでなければ動かすことができませんでした。しかし、お金がデジタルデータとして取引されることで、資金移動がより容易になっています。とくに小売業では、銀行以外の産業によるさまざまな決済サービスが可能になりました。つまり、技術革新により、リテール(小売)でのお金の使い方に風穴があいたということです。

ただし、日本では決済機能に関して、2次元コード、アプリなど、各社がいろいろな種類のサービスを提供し、規格がバラバラに乱立していて、消費者の使い勝手が悪くなっている感は否めません。プラットフォームの統一化、標準化が急務です。

このようにお金は現金として流通することが少なくなりつつありますが、日本では諸外国に比べ、キャッシュレス化があまり進んでいません。理由としては、コンビニも含め、ATM網が全国に張り巡らされ、便利であること、紙幣の偽造のしにくさ、汚れにくさなどが挙げられます。


イラスト=ヤマグチカヨ

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