- 2019年05月17日 07:30
パソコンもスマホも“カムイ”!?『ゴールデンカムイ』アイヌ語監修者が語るアイヌ文化の面白さ
2/2現代でも見習う部分の多いアイヌの生き方
——アイヌ文化の観点から『ゴールデンカムイ』を読むと、どのような魅力がありますか?
これほど詳しくアイヌの習慣や文化を、緻密な絵で描いて表現したマンガはないんじゃないかと思います。文様ひとつとっても、丁寧に調べて描くのはもちろんだけど、作者の野田さんのすごいところは、毎回全部描き込むことです。
これまで静止した写真や絵だったものが、マンガの中で生きて動いている状態で表現されているのは、アイヌ文化を今までと違う形で伝える大きなポイントなんじゃないかなと思います。博物館に飾られている状態ではなく、弓が実際に使われていたり、銛が打たれていたりする。いろんなものが道具として使われる様が、彼の緻密で正確な筆致で描かれているのはすごいと思いますね。

——最後に、改めて中川先生が考えるアイヌ文化とはどんなものでしょうか。
僕は、「自然との共存」という言葉が嫌いなんです。それだと、木を切ってはいけない、動物を殺してはいけない、といった話になりがちです。でも、それでは生きていけていけませんよね。
一方、アイヌは木を切るし、山菜は希少なものでも取って食べるし、当然動物も殺す。ただし、それが自分たちの生活に危険が及ぶような事態を招かないように、コントロールしながらやっていく、という思想を持っているわけです。外からの制御を受けなくても、自分たちが過剰採取をしない、といったことや、取ったものは全て利用する、といったことが生活の中に組み込まれている。それは一種の宗教と言ってもいいのかもしれないけど、意識せずとも一定の考え方で制御している。そういうライフスタイルなんですね。
——ライフスタイルに、自然に負荷をかけすぎないことが組み込まれているんですね。
自然との共存というだけではなく、現代の都市で生きていてもそういう考えの下で生活することは可能です。道具類も精神を持って、自分の役に立ってくれているわけだから、あらゆるものに対して感謝を持つ。そういう思想ですから。
——それでは、ご専門であるアイヌ語を多くの方に伝えていく上で、今後必要になっていくのはどのようなことですか?
アイヌの言葉は、書かれたものも録音されたものも、古い資料が他の民族と比べ物にならないくらい多く残されています。それをどう活用していくかということが重要です。たくさんの資料があるので、まず自分たちが伝えるべきものを求めて、自ら吸収していくことが必要です。そしてそれは、僕のような人間を介してではなく、直接、自分で触れたほうがいいと思います。僕がやっているのは、みんなに関心を持たせるということのお手伝いになればいいな程度のことだと思っています。

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