- 2019年05月23日 10:09
安倍政権が進める電子決済 日本ではキャッシュレス化が進むどころか現金化に逆戻り
2/2――日本やドイツのキャッシュレス化が遅れている理由は何なのでしょう
シーニーさん:現金依存度は世界中でまちまちです。英国では昨年、決済の34%に現金が使われました。スペインやイタリア、ドイツなど多くの欧州の国々での現金決済は8割を超えています。
それに対して北欧の国々では現金決済の比率は非常に低く、15%前後です。一方、日本の現金決済は多く、全体の70%を超えています。
現金とデジタル決済の比率が国によって異なるのには多くの理由があります。通貨は信頼に基づいています。北欧諸国では銀行に対する信頼度が高いため、デジタル通貨も信頼されています。
他の国々では銀行への信頼度が北欧諸国ほど高くないため、現金を手元に置きたがるのです。もしマイナス金利になったら銀行の口座に入れておくよりも現金で持っていた方が得でしょう。
日本でもマイナス金利が導入されました。おカネの価値が下がる恐れがあるため銀行やデジタル決済を信頼するより現金を使っても何の驚きもありません。
デジタル化の条件として、デジタル決済を導入している店が多く、消費者がデジタル決済を信用していなければなりません。北欧諸国では多くの人がテクノロジーに柔軟に対応しています。
ロンドンの交通機関は10年前からキャッシュレス化しています。ロンドンっ子は交通機関で移動する際、コンタクトレスのシステムを使っています。
しかし他の国々では、インフラのデジタル化が進んでいません。デジタル決済に対応した店が少なければ、社会がキャッシュレス化に向かう動機づけは少なくなります。
変化は規制当局のサポートを必要としています。英国の金融規制当局は積極的にイノベーションを支援しています。北欧諸国でもデジタル化を進めるに当たり、規制の障害はありませんでした。
いくつかの国々では犯罪の資金を排除するためにキャッシュレス化を進めようとしています。しかし日本には当てはまりません。犯罪が少ないのに現金が使われているからです。
――キャッシュレス化は高齢者や地方を排除する恐れがありますか
シーニーさん:私たちの調査では英国では全人口の約17%はさまざまな理由からキャッシュレス社会に適応できません。地方に住んでいたり、年寄りだったり。しかしそれだけが現金を必要とする理由ではありません。
都会は一般的に携帯電話やブロードバンド、交通手段にアクセスするインフラが整っています。地方に住んでいる多くの人々はインフラや交通手段に恵まれず、友人や隣人、地元の店に依存しています。現金なしに地方で生存するのは難しいでしょう。
私たちの調査結果を見ると、デジタル決済になったら現金しか使っていなかった時に比べて、私たちは今まで以上に消費するようになるのは間違いありません。

こうした理由から低所得者層は現金しか使わないか、ほとんど現金しか使わないことを積極的に選ぶのです。スマホのお支払いアプリ「Origami(オリガミ)Pay」の康井義貴・代表取締役社長(Founder&CEO)は筆者にこんな見方を示したことがあります。「圧倒的に現金比率が高い国内においては、現金が一番のライバルです」。
日本でもフィンテック(金融とテクノロジーの融合)が普及し、キャッシュレス化が進めば、サービス産業の生産性が飛躍的に向上し、個人消費が拡大する可能性があります。
しかし日本の現金依存度が高い本当の理由とは、高齢者と若者、正規と非正規、都会と地方の格差を埋める社会防衛の手段なのかもしれません。



