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安倍政権が進める電子決済 日本ではキャッシュレス化が進むどころか現金化に逆戻り

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110兆円超のお札が越年

[ロンドン発]平成最後(2018年)の大晦日、日本では110兆4000億円、枚数にして169.8億枚のお札が年を越しました。

積み重ねると1698キロメートル、富士山の450倍の高さに達し、横に並べると264万キロメートル、地球の66周分、月までの距離の7倍に相当するそうです。

ものすごい量ですね。

共同通信社

現金が大好きな日本に対し、世界では生産性を向上させるためキャッシュレス化が加速しています。日本も来年の東京五輪・パラリンピックをバネにキャッシュレス社会を実現できるのでしょうか。

経済産業省が昨年4月にまとめた報告書「キャッシュレス・ビジョン」によると、クレジットカードやデビッドカード、電子マネーによるキャッシュレス決済の比率はわが国では18.4%です。


韓国89.1%、中国60%、カナダ55.4%、筆者の暮らす英国54.9%に比べると、随分低くなっています。安倍晋三首相は2027年6月までに、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度にすることを目標にしています。

日本ではキャッスレス化が進むどころか現金化に逆戻り

キャッシュレス化で決済のスピードが早まれば、人手が省力化できる上、個人消費が伸びます。英国では決済のコンタクトレス(タッチ式)化が進み、非常に便利になりました。

突発事案の発生に備えてタクシー代を現金で持ち歩いていた筆者も配車アプリ、ウーバーの普及で現金を持ち歩かなくなりました。海外では旅行客を狙った犯罪が多発し、現金の持ち歩きは危険だからです。

Getty Images

一方、日本は「現金を落としても返ってくる」と言われるほど治安が良く、偽札も少ないため、キャッシュレス化が進みません。店のレジの処理スピードが速く、地方でも現金自動預け払い機(ATM)が普及していて、日本中どこでも簡単に現金決済ができます。

新しいテクノロジーへの対応が難儀になる高齢化もキャッシュレス化の大きな障害になっています。日本人が現金を使い続ける理由は他にもあります。

日本の現金流通高を見ると、80兆円台に乗った2003年以降、ほぼ横ばいでした。しかし安倍首相の金融緩和を柱とした経済政策アベノミクスで再び増え始めました。


名目国内総生産(GDP)比で見た現金の割合は1994年の9.3%から上昇し続け、昨年は21%に達しました。日本ではキャッスレス化が進むどころか現金化に逆戻りしているのです。

失われた20年で「タンス預金」増える

国際決済銀行(BIS)のデータをもとに現金流通残高を対名目GDP比で見ると、2015年データで英国は3.7%、キャッシュレス化が進む北欧スウェーデンは1.7%です。いかに日本の現金流通割合が高いかが分かります。

金融バブル崩壊で深刻なデフレに陥った日本ではゼロ金利が続き、今ではマイナス金利です。銀行に預けても利子がつかなくなったため、現金で「タンス預金」をする人が増えました。

現金流通高に占める1万円札の割合は93%に達しています。現金なら国税局も資金の流れを捕捉するのが難しく、脱税するのも容易です。

日本は1973年に全銀ネット(全国銀行資金決済ネットワーク)を導入、世界で初めてリアルタイム決済の環境を作りました。コンタクトレスのモバイル決済「おサイフケータイ」も2004年以降、普及するなど世界の最先端を走っていました。

しかし「失われた20年」と言われるように金融インフラへの投資が滞りました。クレジットカードは手数料が高いため加盟店から敬遠され、デビッドカードは夜間や休日に使えず、あまり普及しませんでした。

何より所得が低い非正規の労働者にとって銀行に預けて引き落としの度に手数料を取られるより、現金で持っておいた方が得です。

英国では現金を見直す声も

キャッシュレス化が加速する英国では、現金を見直す声も強まっています。

今年3月、報告書『現金へのアクセスを見直そう』で「現金を単に商業上の事柄と見るのは十分ではない。重要なインフラとして扱う必要がある」と提言したナタリー・シーニーさん(47)が筆者の取材に応じてくれました。

筆者の取材に応じたナタリー・シーニーさん(筆者撮影)

――現金の未来はどうなりますか。私たちの社会はいつかキャッシュレスになるのでしょうか

シーニーさん:英国では急速に現金離れが進んでいます。10年前は6割以上が現金決済でした。しかし昨年には3割まで減ってきました。このペースでキャッシュレス化が進んで行けば、この10年で完全に現金のない社会になってしまいます。しかし英国が次の10年でキャッシュレスになるとは考えていません。

問題は多くの人がデジタル決済の便利さを好む一方で、デジタル決済は必ずしもすべての人にとって便利なものではありません。デジタル決済が機能するにはスマホがつながっていたり、ブロードバンドへのアクセスが確保されていたりする必要があります。

しかし英国全域で信頼できるアクセスが確保されているわけではありません。しかしインフラの問題が解決されたとしても、まだ現金を必要とする人たちや状況が存在します。

私たちは2000人以上の消費者と120以上の組織を対象に調査しました。その結果、現金を必要とする人が多くいました。メンタルヘルスの患者をサポートする慈善団体は、長期に問題を抱える人は病状が重い時に、いっぱいおカネを使ってしまうんじゃないかと心配していました。

家庭内暴力に取り組むチャリティーは、被害者は銀行口座を支配するパートナーから自由な現金を持とうとしていると指摘しました。彼らは自分のために買い物に行ってくれる人を頼りにしており、現金は一番安全で簡単な手段なのです。

貧困問題を抱えている人なら現金を使用する理由があります。1週間しか暮らすおカネがないなら、借金を防ぐ最大の方法は現金を使うことです。なくなったら、それ以上使えないからです。

英国の金融データによると、年1万ポンド(約140万円)未満しか稼げない人は3万ポンド(約422万円)以上稼ぐ人に比べて14倍も現金に依存しています。

いつの日か英国にキャッシュレス社会が訪れるかどうか私には分かりません。現時点で人口の約17%がキャッシュレス社会に深刻に苦しんでいます。私たちはキャッシュレス社会ではなく、現金依存度が今より少ない社会に向かっていると考えています。

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