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「知る権利」に目隠しするドローン法案(阿部岳)

共謀罪は、五輪とテロ対策を名目に導入された。政府は同じ手法を使って、今度は基地を監視する小型無人機ドローンの目をふさごうとしている。規制を大幅に強化する改正法案が、すでに衆議院を通過した。

ドローンの登場は画期的だった。私たち沖縄のメディアにとっては米軍基地のフェンスを越え、活動実態を捉える手段になった。ヘリコプターよりコストが安く、頻繁に飛ばせる。低空から鮮明で迫力ある写真が撮れる。辺野古新基地建設の現場でも、工事の進展や環境破壊を報じてきた。

一方、米軍は法的規制がないことにいら立っていた。2017年、ハリス太平洋軍司令官が小野寺五典防衛相(いずれも当時)に対策を申し入れたのを受け、政府が検討に入った。

こうして出てきた改正案は、飛行禁止対象を現行法の首相官邸や原発から、全国にある米軍と自衛隊基地の上空に一挙に広げる内容になった。防衛省が指定する基地の上空を飛ばすためには、原則48時間前までに司令官の同意を文書で得て、警察などに通報することが必要になる。

規制を働き掛けた側である米軍が飛行に同意するとは考えられない。しかも、米軍に限っては提供水域と空域の上空も禁止対象に含まれる。問題は辺野古の現場だ。広大なキャンプ・シュワブ水域の中にあり、陸からも海からも一切近づけなくなる。注目度が高く、問題が続発する現場をドローンの目から隠す狙いが透ける。

米軍基地上空の飛行禁止盛り込む

基地内の撮影は、のぞき趣味でもスパイ活動でもない。軍事活動は隣り合わせの私たちの暮らしにとって脅威になり得るから、実態を知る必要がある。04年、実弾を使う米軍ゲリラ戦闘訓練施設が高速道路のすぐそばでひそかに建設されたことがあった。13年には住民の飲料水用ダムの隣に有害物質を積んだ米軍ヘリが墜落し、環境調査が7カ月間認められなかった。「知る権利」は命を守るためにも欠かせない。

改正案が成立すると、基地周辺約300メートルの範囲もドローン飛行が原則禁止になる。基地に囲まれた沖縄では、民間地なのに基地の隣というだけで産業利用もできなくなる。荷物配送や農作物管理など、日進月歩の技術革新から取り残されてしまう。

改正案はさらに、自衛官の権限を拡大する。現行法では、同意や通報がない違法ドローンは警察官や海上保安官が操縦者に移動を命じ、場合によっては破壊できる。この取り締まり権限を、自衛隊基地の周囲で自衛官に与える。

旧日本軍の憲兵は一般住民を監視し、弾圧した。その歴史を踏まえ、役割を受け継ぐ自衛隊の警務官は、隊内の事件を捜査するだけにとどまってきた。自衛隊の取り締まり対象に初めて一般市民が含まれることになる。

改正案は基地周辺の恒久的な規制と、ラグビーW杯や東京五輪会場周辺の時限的な規制がセットになっている。政府はテロ対策を前面に掲げるが、衆院内閣委員会の審議では現行法下で違反検挙の実績が1件もないことが分かった。

ドローンの脅威は迫っているのか。ドローン規制の方が脅威なのか。委員会審議は3時間足らず。議論が深まらないまま、改正案は可決された。今のところ、政府の作戦は的中しているようだ。

(あべ たかし・『沖縄タイムス』記者。2019年4月26日号)

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