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在院日数を減らすには(臨床医編)

アメリカの病院では「在院日数を減らす」ことにすべてのセクションが血眼になる。良し悪しはあるが、ぼくもこの国にいる間にいかに患者の入院期間を短縮できるか、指導医に教えてもらったり、自分で工夫したりしてきた。

DPCを採用している病院では患者の在院日数は診療報酬にもろにリンクしている。もちろん、病院とは儲ければよいというものではない。しかし、赤字体質の病院はよくない。必要な投資ができず、結局医療の質も低下するからである。ボロ儲けする必要はないが、健全な経営がなされていることは質の高い医療においてとても重要である。また、在院日数がやたらに長いということは、入院を必要とする患者が新たに入院する余地が奪われることも意味している。患者にとっても大きなマイナスだ。

病院経営サイドはDPCを採用すると在院日数を減らそうと頑張る。しかし、現場には「在院日数を減らせ」というスローガン、メッセージは流れるものの、具体的にどうすればよいのかは伝わってこない。多くの場合、経営陣自身も方法論を持っていない(よって、掛け声だけになる)からだ。

診療医の方にも在院日数を減らすインセンティブが希薄である。実は入院期間が短いほうが患者の予後やQOLはよい、という事実を感得していないからだ。ま、なんでも極端なのはよくなくて、中途半端な治療で患者を追い出すようなやり方はよくないけれど(これにより、アメリカでは患者の再入院問題が起きている)。

さ、前置きはこのくらいにして、在院日数減らす方法である。

1.正確な診断、正しい治療

 結局は王道なのである。診断が間違っていれば、治療をしくじる。治療をしくじれば在院日数は伸びる。アタリマエだ。というわけで、丁寧に病歴を聴取し、診察し、正しい診察を目指し、治療効果がより明確な(いわゆるエビデンスに基づく)、オーセンティックな医療を行うのが、在院日数を減らす最良の方法だ。

2.入院日に退院サマリーを書く。

 これもよくいうことだ。本当に書く必要はない。が、入院してから退院するまでのイメージを持つことが大事なのだ。そうすれば検査も治療も先手、先手を打てる。そこには正しい「予測」がある。検査をオーダーし、結果が返ってきてから「さ、どうしよ」ではなく、検査をオーダーしたときにすでに結果を予測しておくのである。ようするにこれは1と同じ、医療の「地」の力となる。まあ、診断力とか治療の質は一朝一夕には上がらないが、「退院までのイメージ」づくりは今日からやったほうがよい。急には上手にできないけれど、やらない人とやっている人では雲泥の差が生じる。

3.合併症を予防する。

 よくある合併症は感染だが、その他血栓やせん妄など医療行為そのものが病気を作ることは多い。予防のためにはやはり「予測」が必要だ。そのためには

4.引き算の医療

 が大事だ。不要な薬。不要なライン。不要な検査。こうしたものが合併症を生じ、在院日数を伸ばす。入院しているからという理由だけで3号輸液が入っていないか。維持輸液は医療費しか維持していなかったりする。アミノ酸製剤は感染リスクを増すだけで、大した栄養にはならない。尿カテーテルを本当に必要とする患者は多くない。そのカテーテルは尿路感染の明確なリスクだ。そのプロトンポンプ阻害薬、本当に患者の役に立ってるの?薬剤熱や腸炎の原因になりますよ。NSAIDSで無駄な腎不全や胃炎を作ってない?ARDSに未だにステロイドとか使ってない?「とりあえず」の画像フォローは意味があるの?ていうか、それって退院後に外来でやってもいいんじゃね?

毎日自分たちがやっている医療の必然性を吟味すると、在院日数は減る。

5.タイムラインを意識する。

 医者の多くは時間の使い方が下手だ。だから在院日数マネジメントも下手だ。夜遅くまで居残って仕事してても問題だと思わないし、それが素晴らしいことだとすら勘違いする。短期間に仕事をこなして夕方に帰宅するのは「悪」だと思いこんでいる。患者の問題も全部入院期間中に済まさねばと思い込んでおり、来週の検査まで漫然と入院が継続される。その検査は外来でやってもよかったりする。外来でできることは外来で。外来は出来高だから、これも病院の経営を助ける。

 患者ケアで「今日できること」「できないこと」はしっかり分けてタスク作りをする。特に退院支援は早め早めにやっておくのがよい。ここでも退院のイメージが大事だ。患者は自宅に退院しそうなのか。無理そうなのか。無理だとしたら退院先はどこになりそうなのか。早めに予測し、早めにソーシャルワーカーに相談し、退院準備を入院初日から始める。患者の幼体が安定して、どっこいしょ、っと退院準備を始めてはいけない。

6.上司を上手に使え。部下を無駄遣いするな

大学病院あるあるは、「上の先生が外勤で、戻ってくるまで動けません」と研修医が日中ひましていて、夜になってから回診が始まり、治療方針が決まるというパタン。当然、動き出すのは翌日になり丸一日が無駄になる。

屋根瓦がよい。上の先生が全部決めるのは、非合理的だ(そして、年配の医者はしばしば間違っている。勉強不足だから)。

中堅どころに意思決定をさせ、大きなプラニングだけ上級医がでていく。急ぎの用事は電話で受ければ良い。夜戻ってくるまで上級医に連絡できないなんて、石器時代で狼煙上げてるんじゃあるまいし。携帯電話、ライン、なんでもよいから21世紀の令和な医療をやればよいのだ。というか、バイト日はその上級医は意思決定から外すべきだ。これがチーム医療であり、人材を有効に活用し、午前中にカンファをし、意思決定をし、午後は実働して研修医も夕刻帰宅できるのが常態化するべきだ。

そんなバカな、と思っている医者も多いと思うが、どうせ10年経てばぼくが言っていることは「常識」になる(予言しておく)。ならば、今からはじめたほうがよいですよ。

そうそう、病院の経営を圧迫するもう一つの要因は人件費であり、残業代だ。医者が時間を有効に使って残業を減らせば、これも病院の経営を助ける。医者の家庭環境もよくなり、幸せになる人が増えるだろう。え?夫が帰ってこないほうが幸せ?しらんがな。

とにかく、漫然と「減らせ」といっても減らないのが在院日数だ。あくまでも患者の予後を改善する、という文脈で、戦略的に、構造的に、システマティックに在院日数を減らそう。

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