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【読書感想】誰の味方でもありません

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 伊藤洋介という男がいる。色黒で黒縁眼鏡の50代。いかにも業界人らしい見た目である。新卒で入った山一證券時代に秋元康プロデュースのシャインズとして歌手デビュー、その後もサラリーマン生活を続けるかたわら東京プリンとしてヒットを飛ばしてきた。平成が終わろうとも「バブル」を生きるリアル平野ノラである。

 この伊藤さん、大変な人気者。毎晩のように会食が入り、権力者たちとの社交を繰り広げている。実は彼、参議院選挙に2回立候補して、2回とも落選している。正直、彼のワガママに付き合って、迷惑を被っている人も多いと思う。

 しかしなぜ、彼の周りには人が絶えないのか。その理由を最近、伊藤さんとの共通の友人(もちろん偉い人)が言い当ててくれた。

 人生で努力をしてないから、他人のことを嫉妬しない。だから付き合いやすいというのだ。

 成功者たちは日々、嫉妬の中を生きている。同じ業界の人から陰口を叩かれたり、根も葉もない噂を立てられたりというのは日常茶飯事だろう。だから嫉妬をしない伊藤さんがモテるというのはよくわかる。

 ある売れっ子の女性学者は、雑誌の撮影でスタイリストが用意したディオールのジャケットを着ただけで、売れない研究者たちから叩かれていた。

 奨学金で大学に通う苦学生の気持ちを考えろとか、ブランドに頼るのは自信のない人がやることとか、とんでもない反応の数々に笑ってしまった。

 別に清貧を気取る学者がいてもいいが、それは他人に強要することではない。もし苦学生うんぬんの話をするなら、学費が下がるような社会活動をしたり、せめて自分の著書を無料で公開したり、できることはたくさんあるはずだ。そもそも研究者なんだから、ファッションではなく、研究成果で勝負しなさいよ、と思ってしまう。

 嫉妬する人は、それが嫉妬であることを認めない。「うらやましい」と口に出してくれる人はマシだ。嫉妬は、仲間外れや嘘の拡散など、もっと陰湿な形を取ることが多い。

 古市さんも、そういう「他人のことを嫉妬しない人枠」で、権力者たちから愛されているのだろう、と僕には思われるのですが、その古市さん自身は、多くの人から「嫉妬されている」と感じているのでしょうね。

 個人的な好みを言えば、「そういう太鼓持ちでいられるのも『才能』なんだろうけど、僕は嫌い」なんですが、この本は、今の時代をうまく渡っていける人の考え方を知るためには、けっこう有用なテキストではないか、と思うのです。

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