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焦点:消えた豪輸出、実質成長率が実態より弱く見える訳


Wayne Cole

[シドニー 13日 ロイター] - オーストラリアの輸出額は資源価格の急騰によって膨らみ続けている。ただし統計上のからくりのため、最も注目される実質国内総生産(GDP)に大部分が反映されず、同国経済が実態より弱く見えてしまう状況にある。

実際には輸出増で得られたお金はオーストラリア国内にきちんと出回り、企業利益を押し上げて配当支払いや株価上昇、税収増といった形で価値を創造している。ただGDP算出上は、これらは「インフレ」として実質ベースの数字から除外されるのだ。

もちろんこうした処理は世界的に普及しており、通常の場合は何の問題もない。つまりもしGDPが10%増えても、物価が10%上がれば大半の国民は全く豊かにならない。

しかしオーストラリアのケースを見ると、価格が上がった分の支払いは国民ではなく外国の買い手が負担し、国内の物価上昇率は2年ぶりの低い伸びにとどまっている。オーストラリア統計局のチーフエコノミスト、ブルース・ホックマン氏は「異例ではあるものの、オーストラリアは輸出するコモディティの範囲の広さは他に類がなく、そのほとんどの価格が上がっている」と指摘した。

例えば今年1─3月期の鉄鉱石価格だけでも、前期比で約13%、前年比で25%上昇。3月までの1年間では輸出品全体の価格は15%上がって、オーストラリアに過去最大の貿易黒字をもたらした。それでもなお、輸出額の増加分は実質GDPに含まれていない。

昨年のオーストラリアの名目輸出額は過去最高の4380億豪ドルなのに、実質輸出額にすると3970億豪ドルにすぎなくなる。

この差額の410億豪ドルは、名目GDPの2.1%にも相当する。昨年10─12月の名目輸出額は成長率を0.8%ポイント押し上げたのに、実質輸出額は0.1%ポイントの成長押し下げ要因となった。

10─12月の成長率が予想外の低調さに終わったのは主にこうした仕組みが原因だった。

<好循環>

オーストラリアの1─3月輸出額は、鉄鉱石の高騰を背景に過去最高に達したため、名目と実質の金額差は大きくなる一方だ。

もっとも実質GDPから消えたからといって、輸出額の増加が幻であるはずがない。昨年の税引き前利益が27%増え、株価が上がって増配が実施された鉱業セクターに聞いてみればそれはすぐ分かる。フォーテスキュー・メタルズ・グループ<FMG.AX>、BHP<BHP.AX>、リオ・ティント<RIO.AX>の株価は第1・四半期にそれぞれ約70%、12%、25%の上昇を記録した。

オーストラリアの主要株価指数が年初来で新たに生み出した価値は2000億豪ドルに上り、各企業は2月から6月までに290億ドルを超える配当を支払うと見込まれる。

手元資金が潤沢になったことで一部企業は何年も減らしてきた新規投資に乗り出そうとしている。準備銀行(中央銀行)はこうした動きを強調し、今月利下げを見送った。

企業の増益は税収も押し上げていることから、18日の総選挙を前に与野党双方が減税を公約している。ウェストパックのシニアエコノミスト、アンドルー・ハンラン氏は「オーストラリアの輸出品に対して他の国々が多額の支払いをしている。政府は減税と支出拡大を通じて家計を支援する余地がある」と述べた。

<名目GDPに軍配>

名目ベースのGDPや所得統計にはこれらの差分が明示されているのだが、市場はずっと見過ごしてきた。10─12月の名目GDPの伸びが5.5%と、実質の2.3%をはるかに上回っても気づかないとは何とも残念ではないか。名目ベースでは昨年全体で国民1人当たり2320豪ドルの所得増につながった。

これが単に物価上昇加速のせいだとすれば消し去ることができるが、昨年末時点のオーストラリアの物価上昇率は1.8%、1─3月では1.3%と2年ぶりの低さだ。

過去の例からすると、名目GDPの伸びが先行する局面では時間差はあるものの実質GDPが追随する傾向があり、足元の景気の足踏みは一時的だとの希望が持てる。

コモンウェルス・バンク・オブ・オーストラリアのチーフエコノミスト、マイケル・ブライス氏は「オーストラリアは名目と実質のGDPが大きくかい離する可能性がある数少ない先進国の1つで、その理由はとにもかくにもコモディティだ」と語り、コモディティ輸出が実質GDPに含まれない国民所得の大幅な増加をもたらすと説明するとともに、現段階ではオーストラリア経済を読み解く上では名目GDPの方が適切との見方を示した。

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