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幻の自民・民主大連立構想 仲介者は渡辺恒雄氏だった

福田氏との連立協議(AFP=時事)

激動の平成政界史の中に、「幻の自民・民主大連立構想」がある。小泉純一郎氏が総裁任期満了で首相の座から退陣すると、第1次安倍晋三内閣が発足したが、閣僚の不祥事と失言が相次ぎ、2007年参院選で記録的大敗を喫して総辞職に追い込まれた。代わった福田康夫内閣は参院での与野党逆転で政権運営に苦しむ。

そこに政界を揺るがす“事件”が起きる。小沢一郎氏と福田氏による自民―民主大連立交渉の発覚だった。最後は民主党内の猛反対を浴びて頓挫したが、なぜ、小沢氏は大連立に踏み込もうとしたのか。当時の舞台裏を小沢氏がインタビューで明かした。

──あなたは連立を組むことで政権運営の経験を積むのが大事だと主張していた。

小沢:与党としての経験を積むというのと同時に、もう一つは、福田さんは、(連立を組むなら)ポストも何でもやると、ほぼ言いなりだったから、それによって権力の半分を握れるわけです。そうすると、選挙にも絶対有利だと。だから、庇を借りて母屋を取ってしまおうと。

──連立はどちらから持ちかけたのか。

小沢:最初はナベツネさん(渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長)が僕の知人に言ってきたようだ。それで、僕は「いいよ」と福田さんと会った。そうしたら、福田さんが「あなたのほうから申し込んできたから(会うことにした)」と言う。ナベツネさんが両方に適当なことを言ってたわけです(笑い)。

 だから、「いやあ、僕は別に頼んだわけじゃない。あなたのほうから(申し込んできた)と聞いたんだよ」と言って、一回話を蹴飛ばした。そうしたら、福田さんが「すみません、それはないことにして」と(もう一度申し入れてきた)。

──渡辺恒雄が大連立の考案者だった?

小沢:違うでしょう、それは。自民党にすれば(参院の過半数割れで)片肺だから、何とかしなきゃならないと誰もが思っていました。連立しかないというのが普通の帰結です。それで、仲介者を通じて僕に話がきた。

──福田総理はあまり乗り気ではなかった?

小沢:彼は本気だった。福田さんはほんとに真面目な人です。僕は(連立を組むには)政策的な合意がいるよと、それから、ポストも要求するよというような話をした。そうしたら「わかりました、それはもう、政策もポストもできる限り、最大に応じます」と言いましたからね。

──だが、民主党内からは猛反対された。

小沢:後から考えると、反対派のクビを切ってでもやったほうがよかったかもしれません。(民主党は)政権運営を知らない議員ばかりでしたから。「嫌なやつは出ていけ、連立でいいと思うやつは来い」と言えば、ほとんど来たでしょう。だってポストにありつけるんだもん(笑い)。

──だが、そうしなかった。

小沢:あの時、(民主党内は)全員が反対だったから、僕としても、お前らみんなクビだと言うわけにもいかない雰囲気でした。

──民主党議員は連立より権力を全部自分たちで奪い取ったほうがいいと考えた。

小沢:どうかな。社会党のトラウマがあったのかもしれません。自分たちが自社さ政権の後の社会党のようになって(消滅して)しまうと。社会党出身者も多かったから。実際は、母屋を取れたのはこっちなのに。

〈大連立構想が潰えた福田は2008年9月1日の会見で突然退陣を発表する。後継の麻生太郎内閣が発足し、天下分け目の総選挙が近づく〉

(文中一部敬称略)

●聞き手/武冨薫(ジャーナリスト)

※週刊ポスト2019年5月17・24日号

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