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「ますます激化する米中貿易戦争」 ―中国の不公正な貿易慣行を放置してはならない― - 屋山太郎

 米中の貿易戦争は戦線が拡大した上、長期化する様相を呈している。ワンマン同士が戦っている時は、早期に「撃ち方止め」を言い出したほうが〝弱気〟とみられる。外交の世界は互いに譲ったり、攻めたりしながら戦線を縮小していくものだが、トランプ氏はそのような性格ではない。かたや習氏は自らが持っている権力が弱腰にはさせない。終着点が見えない理由だ。

 米中貿易戦争は2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟した時から怪しかった。WTOというのは自由貿易体制をとる国が参加するのが建前だ。したがって中国は参加する資格がなかったのに、クリントン元大統領は米中融和の雰囲気に騙された。歓迎して迎え入れれば、中国はいずれ〝西側体制〟の国家になる。そうなれば国の体質が構造的にWTOにマッチし、WTOの掟も規則も守れることになるだろうと思い込んだ。

 ところが現実はまだ20年も経たないのに中国は貿易で得をするどころか、WTOを利用して国内に立地した外国のハイテク企業から知的財産を盗めるだけ盗んだのである。米国が「中国の行為」として挙げているのは ①知的財産の収奪 ②強制的技術移転 ③貿易を歪曲している産業補助金 ④国有企業によって創り出される歪曲化、及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行――のことである。

 以上の項目のうちトランプ氏が頭にきているのが「強制的技術移転」である。ある会社が持っている極秘の生産機材は、その生産機材を持っているからこそ、利益が出るという機材である。中国は国内に立地した工場に対して、「強制的技術移転」を強要してきた。その命令に逆らうと企業運営がスムーズにいかないように仕向けた。要するに強盗だ。

 トランプ氏は1次関税10%、それでも米側の言うことを聞かなければ25%、と2段攻勢を発表したが、25%の分は「技術移転」でかっぱらわれた分の弁償金のつもりだった。当初、中国側が「技術移転」を改めると通知してきたが、のちに中国側がこの約束を引っ込めた。トランプ氏は頭から火の出るほど怒って、ドーンと2次関税をかけて仕返しした。

 現状のまま、IT産業の流通に介入しないとすると、産業はあらかた中国系統のものになってしまう。中国はIT産業ですでに優位に立っている。2025年に覇権をとりつつ軍拡を進めれば、2049年にはITも5Gも、軍事面で突出することになる。

 今回、中国の野心が分かったからには、貿易慣行を今まで通りに放置するわけにはいかない。かといって中国をWTOから追い出せないから、「技術移転」命令は禁止するなど、中国が一方的に有利になるような項目は固く禁ずるべきだ。何より大切なのは、中国が軍事的に有利になるような情勢を作り出さないことである。「一帯一路」事業も軍事的拠点づくりだと認識すべきだ。

(令和元年5月15日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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