- 2019年05月15日 17:43
「マスゴミ」の汚名そそぐ日
1/2安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・保育園児死亡事故発生後の記者会見における記者質問に批判。
・「マスゴミ」批判に対し、新聞・テレビは反応が鈍い。
・社会の批判には真摯に向き合い、説明責任を。
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昨今記者も大変だ。滋賀県大津市の保育園児死亡事故で、保育園が開いた記者会見の時の話だ。記者の質問が酷い、とネット上で炎上している。質問の内容毎に社名と記者の名前も既にネット上に上がっている。誰かがSNSやまとめサイトに載せている。
こうしたマスコミ批判は2011年の東日本大震災以降、加速したと見ている。ネットのおかげで誰でも情報発信ができる時代になった。今まで新聞・テレビに直接意見を届けることは出来にくかったが、今は簡単だ。
そのこと自体は世の趨勢であり、今後も加速していくだろう。誰も止めることはできない。問題はマスコミ側がそうした社会の動きに対応できていないことだ。マスコミは社会の批判に鈍感すぎる。取材手法が批判されたなら、何故そのような取材手法を取っているのか、説明する責任がある。
くだんの記者会見は、ネット上で、「園は被害者なのに記者たちが保育園側を責め立てているのは許せない」と批判されている。しかし、園が記者会見を開いた以上、記者として質問するのは当然のことだ。例えば:
・園庭はあるのかないのか。ないならその理由は
・何故交通量の多い道を横断して散歩に出るのか
・普段の散歩コースはどのようなものだったのか
・散歩は1日何回、何時頃行われているのか
・散歩1回あたり何人を引率するのか
・保育士は一人当たり何人の園児を引率するのか
・保育士の園児に対する付き添い方はどのようなものだったのか
・琵琶湖畔に行く以外に散歩コースはあったのか
・交差点では過去事故が起きたことはあったのか
など、聞くべきことは山ほどあり、それを質問しないのはありえない。確かに「園児たちは普段と同じ様子だったか?」などという的外れな質問は論外だが、事件の全体像を明らかにするために会見で質問するのは当然の取材プロセスなのだ。
話はそれるが、今回、保育園側がすぐ記者会見を開いたのには少し驚いた。通常、園は被害者の立場であり、あれほど精神的ショックの大きい園長が会見に出てきたことに少し違和感を感じた。事故発生直後ではまだわかっていないことも多く、話せることも限られるからだ。
園を運営している法人は、会見を開けば記者からあのような質問が出ることは十分想定できだろうし、園長があのような状態になることもわかっていたはずだ。マスコミが園に会見を開くよう強く要請したかどうかは知らないが、園側が会見を開くことを決定しなければ行われなかったわけで、その動機に筆者は興味がある。
話を戻して、炎上している「マスゴミ」批判に対してだが、マスコミはきちんと批判に対し自らの立場を説明すべきだと私は思う。マスコミは、ネット上で批判されていても気づいていないことが多い。そもそもネット上の情報をチェックする専任スタッフもほとんどいない。
そんな馬鹿なと思う向きもあろうが、それが実態だ。ネット上のパトロールに人を割こうという発想がないと思われる。それが対応の遅れにつながり、批判が批判を呼んでいるのが実情だ。マスコミがマスゴミと呼ばれるようになって久しいが、それを甘受していていいわけがない。普通の企業ではありえないことだ。自分達に記者としての矜持があるのなら、それを堂々と表明すればよい。自分達の取材手法に対する批判に真摯に向き合い、愚直に説明責任を果たすことが求められているのだ。自分たちは正しいのだから読者や視聴者に説明する必要はない、などと思っているのだとしたら、それは単なるおごりでしかない。




